機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ Mobile Suit Gundam Hathaway

2021年 アニメ 3ツ星 #ガンダム SF テロ 主人公は犯罪者

なにがはじまるの?

映像はすごい。3DCGで表現されるロボットアニメも慣れてきたが、『UC』より進化した。キャラクターも崩れない。ちょっとした動きもていねいで、コマ送りしても破綻しない。ほんとにすごい。
見せ方もよい。戦時におけるモビルスーツの巨大さ、威圧感、凶悪さをここまで描いた作品もない。「自分も操縦したい」と思わせない異質感。鮮烈だった。

代償として、モビルスーツの細部は見えない。とりわけ最終戦闘はどっちがどっちかわからなくなった。Ξガンダムとペーネロペーはシルエットも似てるから、パンター(5号戦車)とティーガー(6号戦車)が夜戦をやってるようなものだった。
わざわざ似せたデザインにしておきながら、対比を明瞭にしないのはなぜだろう? パイロットの対比もない。なにを争って、どうなったの? 物語の構図が見えない。

この映画を見た人は、あらすじを言えないだろう。なんもはじまってない。なにがはじまるかもわからない。状況の一部が描かれただけ。
主人公はテロリストの首魁であるが、どうしてテロリストになったのか、破壊によってなにを為したいのか、さっぱりわからない。首魁でありながら、状況に流されている。それでいて人望がある。わけがわからない。

ケネスも同様で、「連邦のやり方に疑問を持ちつつ職務を遂行する」なんて、ありがちな人物像だ。薄っぺらい。ハサウェイとケネスの対立に、ドラマが生じる予感がない。

ギギの甘い引力にハサウェイが踏みとどまるところは「男の子らしさ」を感じた。シャアだったらイチコロだよ。ギギは人々を振り回すだろうが、彼女にも人格はない。ただの熱源だ。独特のキャラクターなんだけど、主題として見たいわけじゃない。

原作小説のとおりに展開するなら、最後は「なんだったの?」とレビューすることになるだろう。どうなることやら。

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