第10夜:宴の終わり dream10
2006年 夢日記「さて、そろそろ帰りましょうか」
彼女はそう言って、席を立つ。そうだねと返事をして、私も店を出た。
てくてく歩く。
これといった話題も思いつかないので、無言のまま歩く。もうすぐ駅だ。駅に着いたらオワカレ。宴(うたげ)が終わる。
(もう少し話をしたいけど、このへんが引き際かもしれない......)
宴はいつも、終わり方が難しい。
おしゃべりな私は、ついつい話を引き延ばすクセがある。相手はもう帰りたがっているのに、それに気づかず、えんえん話しつづける。優しい人ほど調子を合わせてくれるので、なお気づかない。
で、相手と別れたあとで我に返り、空気が読めない自分を呪うことになる。
(でも、もしかして……?)
ごくまれに、相手も同じように思っている場合があるらしい。「もう少し話をしよう」と、私から声をかけられるのを待っている。しかし、そのサインに気づくのは難しい。
「それじゃ、ここで。今日はありがとう。楽しかった♪」
そう言って、彼女は去っていった。
結局、私は切り出せなかった。
◎
これでよかったのか、声をかけるべきだったのか?
悶々と考え込みながら、私は自宅に向かう路線に向かった。そのとき背後から、大きな爆発音が轟いた。列車事故だった。
人が多すぎて、現場がよく見えない。それに周囲の様子もおかしい。悲鳴や怒号に混じって、笑い声も聞こえてくる。いったいなにを見たら、あんな風に笑えるのだろう? わけがわからない。
混乱する頭の中で、彼女のことが気になった。
(あれ? 彼女が乗った電車は……もう出発した?)
確かめようにも、人の流れが激しくて近づけない。押し戻される。こりゃ、家に帰ってニュースを見た方が早いかもしれん。
そんな馬鹿な!
ここが事故現場なのに、どうして家でニュースを見るんだ?
いや、ちがう。
事実は(もし最悪の事実だったら)、家で(ニュースとして)みる方がいい。
なんだそりゃ?
それって、どういう意味で笑ってんの?
なんか、まちがってる?
◎
という夢をみた。
事故現場にいるのに、緊張感がないのが怖かった。
彼女は無事だっただろうか?