コミックマーケット(C59) / 帰ってきた戦場
2000年 東京都:都心部 社会見学私の友人Aがコミケで本を売ることになった。
Aにとっては(売り手としての)コミケ初参加になる。そんなAをアシストするため、私とEがやってきた次第。でまぁ、当然のことながら前日からの突貫作業、Kinko'sで印刷、製本、タクシー移動……。
久しぶりだね、この感覚!
※タクシーの窓から外を眺めながら、思い出にひたる
私の思い出
私が初めてコミケ会場に足を踏み入れたのは、1991年の夏(C40)だった。ちょうど幕張メッセを追い出されて晴海に戻った時期である。当時、私は20歳。コミケ会場の熱気と毒気にあてられて、以後4年にわたって入り浸り、自分で作った同人誌を売っていた。
※ブースはいつもチラシの山
1冊の本を作るのは、大変な作業である。
複数の人間が携わる場合は、その難易度も倍増する。仕事とちがって、明確な命令系統もなければ、コスト意識もない。仲良しグループのままでは解決できない問題に直面することもある。
しかし成否にかかわらず、同人活動は楽しかった。
Aの思い出
ブースに敷物をしいて、作った同人誌を並べ、値札を書く。Aの作った同人誌は、果たして何冊売れるだろうか?
──まぁ、今日は自分の戦場じゃないから気が楽だ。
時刻になって、人がやってきた。さぁ、開戦だ!
※堰を切ったように押し寄せる人、人、人
私が参加していた頃より、コミケの規模は大きくなっていた。それだけオタク人口が増えたのか、オタクの定義がゆるくなったのか。
ぶらぶら会場を歩いてみたけど、以前とは少し雰囲気が違う。なんというかコミケは、見知らぬ人と知り合える場所でもあったのだが、声をかけにくい。私がもうヨソ者だからだろうか。
※会場を埋め尽くすオタクたち
戦い終わって
あいにくAの同人誌はさっぱり売れなかった。がっくり肩を落とすAに、かける言葉はない。「撤収」が宣言され、荷物をまとめる。Aは夏コミの申込書を買わなかった。まぁ、それも1つの判断だ。
※撤収しよう
傍観者に徹したコミケ参加だが、やはり血が騒ぐのは抑えられない。
またいつか、この戦場に帰ってきたい。
そう思いつつ、有明をあとにするのだった。