円筒分水 / 先人たちの知恵に感服

2005年 神奈川県 建物:社寺・史跡 治水・利水
[WGS84] 35.607286, 139.605664 - Google Earthで開く(kml)

ウォーキングの途中、円筒分水という施設に立ち寄った。
大きな円形の堀が二重になっていて、水があふれていた。
円筒分水
──これはいったい、なんだろう?

これは、水を正確に分けるための施設である
サイフォンの原理を応用して、新平瀬川の下をくぐり、円筒の切り口の角度で分水量を調節する仕組みになっている。
円筒分水からの流れ
──なんで、こんな施設が必要になったのか?

二ヶ領(にかりょう)用水は、多摩川から引き込んだ農業用水である。
この地域一帯の農民には生命の水であったため、水量をめぐる争いは絶えなかった
そこで、より正確な分水ができるように作られたのが、この円筒分水でる。
円筒分水:水門
──1941年(昭和16年)のことだ。

多摩川からの流水量が変わっても、4つの筋に一定の比率で分水する。
当時としては、もっとも理想的かつ正確な自然分水装置だったらしい。その技術は戦後、アメリカにも紹介されたという。
──1998年(平成10年)、国の登録有形文化財に指定されている。

私は、こういう話が大好きだ。
京都でも「琵琶湖疏水記念館」で夢中になったけど、水をめぐる話は奥が深い。
不公平を、圧倒的な権力でねじ伏せるのではなく、科学的に解決する。とりわけ円筒分水は、当時の科学技術の粋を結集した、たいへん優れたものだった。電気や人力を使わず、現在も機能している。
先人たちの知恵の素晴らしきことよ!

その二ヶ領用水も、農業用水としての役目を終えて、大部分は埋め立てられてしまった。工業廃水で汚れきった時期はあったが、近年は保存活動も活発になり、散策路も整備されてきている。
遡行を助ける段差
遡行する川魚

願わくば、この素晴らしき施設が後世にも伝わらんことを。