華泰茶荘 / はじめての中国茶
2006年 東京都:新宿副都心 中華:中国茶今日はD氏に案内で中国茶を楽しんできた。
まず最初に断言しよう。私1人じゃ絶対に入れなかった。
よしんば店に入れたとしても、楽しむは無理。
Dさんが案内してくれたからこそ、足を踏み入れることができた。
おかげさまで貴重な経験ができました。Dさん、ありがとう!
渋谷の華泰茶荘へ
今日行ったのは渋谷にある華泰茶荘というお店。
1階は茶具を販売していて、お茶が飲めるのは3階なんだけど、そうとわかる雰囲気じゃない。「ここでお茶が飲めるよ」と教わっていても、1人なら引き返していただろう。
しかしDさんは店長らしい人物に軽く挨拶すると、自分の家のように階段を登っていった。うーん、すごい。
※華泰茶荘:知らない人は入りにくい
今回はD氏と私、そして妻の3人で行ってきた。
ちょっと少ない気もするが、結果としてはOK。中国茶を楽しむなら4人以下がいいと思う。まぁ、席が別れても店員さんが教えてくれるから、困ることはないらしいけどね。
暖かい店内
3階は、隠れ家のような独特の雰囲気だった。
湯気の立つものを扱っているせいか、ほんのり湿度が高い。寒空の下を歩いてきたから、この暖かさはありがたかった。緊張がほどけていく感じ。
いつもより混雑しているらしく、中央よりの席に座ることに。次は壁際か、窓際に行きたいなぁ。
さて、なにを注文しようか?
メニューを見てもさっぱりわからない。まずはオーソドックスなものから試したいと言ったら、凍頂烏龍茶と東方美人を薦められた。Dさんは岩茶とやらを注文していた。
中国茶の基本
お茶が来るまでに、Dさんからレクチャーを受ける。
Dさんの説明は丁寧で、わかりやすかった。私が混乱してくると、「適当に楽しんじゃってください」と、力を抜いてくれた。
とりあえず覚えておくべきことは下記2点。ここにメモしておく。
- アツアツの温度を保つこと(やけどに注意)
- しっかり抽出させること(抽出時間に注意)
以下、見てきたものを書き出してみよう。
茶盤(ちゃばん:お湯をこぼすところ)
机の上には木製の台座が置かれていた。中国茶は、お湯がこぼれる(こぼす)ことが前提なので、この台の上でお湯を注ぐそうだ。お茶の残りもここに捨てたりする。こぼすことを下品とする日本人的感覚からすると、じつに意外な文化だ。
※こぼすこと前提
聞香杯(もんこうはい:お茶の香りを嗅ぐもの)
いよいよお茶が運ばれてきた。
まず最初にやることは、お茶の香りを楽しむことらしい。細くて小さな器に入っていたお茶を移して、空っぽになった状態で鼻をよせる。ほわん、とお茶の香りがする。
「へぇぇ」
お茶をなくしてから楽しむのは意外だった。
※ほわん、とお茶の香り
茶海(ちゃかい)から茶杯(ちゃはい)へ
ガラス製の大きな器(茶海)は、お茶をためておくところ。ここから小さな杯(茶杯)に移して飲んでいくわけ。日本茶のそれより小さいのは、お茶の温度が高いためだ。なるほどね。
※茶具一式(左奥より、茶壺、茶杯、聞香杯、茶海)
茶壺(ちゃふう)
茶海のお茶がなくなってきたら、急須にお湯を注いで抽出する。日本の急須に比べてちょっと小さくて、茶壺というそうだ。
驚くのはその煎れ方。
お湯があふれても気にしないのだ。たっぷりお湯を入れて、ふたをするときもあふれる。日本茶と違って抽出に時間がかかるから、こぼれるのはお湯だけ。だからモッタイナイことはないそうだ。
さらに茶壺の上からもお湯をかける。茶壺全体から湯気が立ち上る。これは、お茶の抽出温度を高めるための配慮らしい。
※お湯をそそぐ
※ふたの上からもかける
※むわん
茶壺から茶海へ
抽出時間が過ぎたら、味が濃くなりすぎないよう、茶海に移す。このときだいすけさんは、茶壺を茶海の上に乗っけてしまった。
「いやぁ、熱いので持ってられないですし、最後の一滴まで出し切りたいですから」
「こ、こーゆー風に煎れるものなんですか?」
「いや、まぁ、適当ですよ」
なんともはや、驚きの連続だな。
※通のやり方
点心も美味しい
お茶と一緒にいくつかの点心を注文した。
どれも、思っていた以上に美味しかった。しかし量が少なく、もっと食べたいと思ってしまう。まぁ、お茶を楽しむことが目的なら、このくらいが適量なのかもしれない。でも、美味しかった。
熱中・カボチャの種
Dさんは、お茶うけにカボチャの種、サンザシ、蜜漬けの梅を注文した。うーん、通だな。このカボチャの種が、カラをむきにくくて大変だった。角度と力の配分を間違うと、すぐ崩れてしまう。食べるところは少ないが、塩味が利いていて美味しい。美味しい分、ついついカラ剥きに夢中になってしまった。
カボチャの種は、場を沈黙させてしまうな。
お茶の味わい
凍頂烏龍茶は、すっきりした味わいだった。
喉の奥にかすかな雑味も残らない。烏龍茶特有の味と思っていたものがないので、らしくないのだが、烏龍茶の味はする。なんとも表現しにくい。
東方美人は紅茶に近い。
苦み、渋みがあって、香りがいいね。2つを比べると、その違いが見えてくる。1つだけではピンとこない。これは、いっぱい試す必要がありそうだ。
中国茶もよかったが、店の雰囲気も素晴らしかった。
お茶を飲み、点心を食べ、あれこれ語らう「時間」を楽しんだとも言える。
そう思うと、これは家で楽しむ趣味ではないように思う。こうして、お店に足を運んだ方が楽しめるのではないか? いずれにせよ、茶具を揃える前に、いくつかのお店を試してみようと思う。
Dさんに扉を開けてもらったので、次は1人でも行けると思う。
うーん、楽しみ。
茶具にも詳しいD氏
帰り際、1階で茶具の説明もしてもらった。
伝統の工芸品だけあって、その種類や特性もさまざまだった。
「簡単に飲むなら、これがいいですよ。これを、こうして使うんです。茶葉を限定するなら、これがいいですね……」
D氏はやたらと詳しい。ここまで詳しい人とは思わなかった。しかも初心者を混乱させないよう、情報をセーブしていたように見受けられる。本気で語らせたら、どうなってしまうのか。奥が深そうだ。
◎
今日はいい経験をさせてもらった。
Dさん、病み上がりなのにお付き合いいただいて、本当にありがとうございました。中国茶の本も借りちゃって、恐縮しております。
また少し世界が広がりました。