下高井戸旭鮨総本店 / ふぐの味わい
2006年 東京都:新宿副都心 和食 鍋もの今夜はN氏とふぐを食べてきた。
私はいま、N氏とあるプロジェクトを進めている。その打ち合わせの帰りに、交代で晩飯を「おごりっこ」することになった。出会ったころは想像もできなかったが、お互い経営者だし、それなりの年齢になったのだから、いろんな味を試してみようと、そういうことになった。
ふぐって美味しいの?
今夜はN氏がおごる番で、「下高井戸旭鮨総本店」の東京オペラシティ2階店にやってきた。よく知らないけれど、東京圏では有名なお寿司屋さんらしいね。
しかしN氏のお目当てはふぐだった。
「ヒラさん、ふぐコースでいいよね?」と訊かれて戸惑った。
「いいけどさ、ふぐの味はわからんが……」
ふぐを食べるのは初めてではないが、依然として美味しさがわかっていない。松茸やあわび、生牡蠣と同じで、「美味を実感できない高級品」の1つなのだ。
しかし歳をとって味覚が変わったかもしれない。
というわけで、私たちはのれんをくぐった。
大人の楽しみ?
最初に食べた唐揚げは、ふぐだったかもしれない。
よく考えずに食べてしまった。しまった。
次いで、ふぐ刺しとふぐサラダが出てきた。
※ふぐ刺しだよーん
くみくみ、こりこりした食感。味はほのかすぎて、ポン酢に圧倒されてしまう。N氏に教わって、薬味を巻いて食べてみる。ふぅん、といった感じ。
「ヒラメやエンガワの方が美味しくね?」と私。
「ヒラメやエンガワはこってりしてるじゃん」とN氏。
「まぁ、比較すればふぐの方が淡泊だけど……淡泊すぎない?」
「ヒラさんは"こってりろん"に毒されてるんだよ。
大人になるとね、あっさり、こりこりしたものが美味しくなるのさ」
「そんなものかなぁ?」
「そんなもんさ。歳をとると、脂を必要としなくなる。さらに歳をとると、歯が抜けてこりこりしたものも食べられなくなる。最期は微かな味を楽しむようになるんだよ」
「……」
※あっさり、こりこり、淡泊な白身魚。
いや、納得できない。
昔の人はなぜ、毒にあたる危険を冒してまでふぐを食べたのか? それだけ美味しかったからだ。一部のツウだけにわかる味ではないはずだ。
ふぐなべ、雑炊へ
その後、ふぐ鍋が出てきた。
土鍋にあらや白菜、椎茸などを入れて煮込む。だし汁を舐めてみたが、ほんのり磯の香りがするくらいで、味らしい味はない。食べてみると、これまた表現しづらい食感と味わい。
※ふぐ鍋も食べた
最後は雑炊で〆。
卵が落とされ、醤油で味付けされると、美味しくなった。むむむ、ジャンクフードに荒らされた私の舌が、ふぐの複雑玄妙な味わいを感じとれないのかもしれない。
◎
結局、ふぐの美味しさに目覚めることはなかった。
ふぐの味を堪能するためには、もう少し時間がかかるようだ。