千年に一度の朝だった / 金環日食
2012年 東京都:西部 光が丘公園午前6時に目覚ましが鳴っても、身体を起こせなかった。
日曜に霞ヶ浦駐屯地に出かけた疲れが、どっと押し寄せてきた。つらい。だるい。痛い。このまま寝たい。だがしかし......千年に一度の朝である。嫁を蹴飛ばして、蹴飛ばされて、布団から這い出す。ううー。
千年に一度の朝がこれほど重いとは思わなかった。
※壁の木漏れ日が欠けはじめた
金環日食である──。
前回はなんと932年前の平安時代まで遡るという。九州から関東にかけて金環日食が、北陸から東北、北海道では部分日蝕が観測できる。おそらく史上もっとも広い範囲で、もっとも多くの日本人が目撃するだろう。
だが......2009年の皆既日食で大騒ぎした記憶も新しい。結局、テレビ局のカメラがもっとも美しい映像をお茶の間に届けてくれた。
(べつに肉眼で見ることにこだわる必要はないんじゃないか?)
布団の中でそんな考えもわいたが、頭を振って追い払った。価値があるかどうかは、見たあとに考えよう。
※光が丘公園に出てきた人たち
※きちんと準備している人もいる
外に出ると、ドアにかかる木漏れ日が三日月型になっていた。はじまっている。そして、それがわかるほど天気がいい。ぐぐっと興奮した。
光が丘公園に出ると、多くの人が空を見上げていた。みんな、日食観測用メガネをかけている。なんだか妙な感じ。私たちはメガネをもっていなかったが、ほどよく曇っていたので目を痛めずに観測できた。
それは......思っていた以上に神秘的だった。
太陽が欠けるにつれ、周囲はどんどん暗くなっていく。朝なのに、朝らしくない雰囲気。「気のせい」で片付けられなくなったころ、太陽が金色のリングになった。いや、空にぽっかり穴が空いたように見える。すごい、すごい。これが金環日食か。
※7時30分
※7時31分:木漏れ日が欠けていく
※7時38分:だいぶ欠けた
※7時40分:おおっ
太陽が欠けている時間はけっこう長い。おそらく平安時代も、「ちょっと見て!」と引っ張り出された人が多かっただろう。現代人は情報があるから安心して見ていられるが、もし、なにも知らずに遭遇したら、どれほど驚いただろうか。
※8時02分:お天道様がもどってきた
ピークを過ぎたあたりで雲が厚くなり、よく見えなくなった。周囲は明るくなってきたが、雲のせいで影の輪郭はぼやけている。うーん。残念な気持ちもあるけど、晴れていたらずっと見つづけて、目を痛めたかもしれない。これはこれでよかった。
8時前に家に帰る。テレビでは日本各地の様子をレポートしていた。ネットでもツイートが増えていく。盛り上がっているね。そして、それがリアルタイムでわかる時代なんだな。