夏の吉川出張(2/3) 空梅雨と草刈りの話
2013年 新潟県 #吉川出張農家は毎年同じことを繰り返していると思われるが、そうではなかった。
むかしは暦どおりに作業すればよかったが、近ごろは気象の変化が大きいため、いつ、なにを、どのくらいやるかの判断は難しくなっているとか。「気候の熱帯化」も進み、植生も変化しつつある。農家は、身体を使う仕事ばかりではないのだ。
空梅雨の恐怖
「水がないと、どうにもなんね」
今年は降水量が少ないため、田んぼが危機的状況あるらしい。草刈りも、鳥や獣の駆除も、努力でどうにかできるが、水だけはどうにもならない。あちこちに池を作って、調節しながら田んぼに水を引いているが、それも限界が近い。あと数日が勝負だが、できることはないため、もどかしいそうだ。
雨が降らないとわかれば、全滅しないよう、田んぼを間引く。しかし間引いたあとに雨が降ったら大損だ。残す/残さないは水の流れによるため、上質の米がとれる田んぼを残せるとはかぎらない。難しい判断を迫られている。
※水位が減りつつある池
しかしすべての農家が一様に困っているわけではない。土地の高低、水の流れ、傾斜、土の質、先祖が残してくれた池があるかないかで、状況は一変する。いつもは潤沢だが、枯れるときは一気に枯れるところもあれば、安定している土地もある。地形が変化することはまれだが、道路を通したことで水の流れが変わることはあるそうだ。
田んぼは、田んぼだけで成立しない。農家にとって水は生命線だ。水利権の争いは抜き差しならないから、いろんなエピソードがある。シビアな世界だった。
※斜面に作られる小さな棚田。この田んぼはまだ水がある。
※裾野は田んぼが大きくなる。また、ここでは水の心配はないそうだ(2日目)
危ない草刈り
米農家の主な仕事は田植えと稲刈りで、あとは地道に草刈りするだけ。
どこも田植えが終わったので、あちこちで草刈りしている人を見かけた。草刈り機を使っているのだが、手持ち式でもバンドを肩にかけない人が多かった。腕力だけで草を刈って、なぎ払うのは疲れるはず。どうして肩にかけないんですかと訊ねてみたら、怖いからだって。
※手持ち式でも肩にかけない
転んでアウトにならないために
棚田の草刈りは、斜面ばかり。すべって転んだとき、肩掛けしてるとチップソー(円盤カッター)で自分を切ってしまう恐れがあるわけだ。バンドがなければ、転んだときに手を離せば助かる。そんな可能性は考えもしなかった。
車輪のついた歩行型草刈り機なら自分を切る心配もないが、平らな土地があれば田んぼにしちゃうので、あまり出番はないそうだ。
※草刈りの様子。反対側にいるのは奥さま。
※エンジンを背負うタイプは、投げても駄目なことがあるとか。
可能性と言えば、ごくまれに弾かれた石が自分に飛んでくるらしい。目に当たったらアウトなので、気になる人はバイザーを着けるらしい。しかし今回見かけた人は、だれもバイザーを着けていなかった。転ぶ可能性は無視できないが、石が目に当たる可能性は無視できるようだ。
※取材風景
緊張感のある道路
棚田の取材はあちこち駆け回る。Softbankは圏外なので、現在地がわからない。GPS情報は記録してあるけど、山の中なので誤差が大きい。
※撮影風景
※夕陽待ち
※このあと、太陽は雲に隠れる
夕陽を撮りに行く途中、凹んだガードレールを見かけた。このあたりの道はほとんどガードレールがなく、ハンドル操作を誤ったら一巻の終わりという緊張感がある。おまけに農家はほぼ100%軽トラックで移動する。衝突したらぺしゃんこだ。
※凹んだガードレール。ぶつかった人は肝をつぶしただろう
そんな状況で、貴重なガードレールに救われた人がいるようだ。あとちょっと勢いがあったら、そのまま落っこちて、田んぼもろとも致命傷だっただろう。恐ろしい。
(つづく)
吉川出張 | |
---|---|
2013年夏 | |
2013年冬 | |
2012年秋 | |
2012年夏 |