ショートショート

1000文字でショートショートを書いてみる試み。 ショートショート

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第100話:夜の渚にて

「ねぇ、希望はあったのかしら?」カナミが不意に訊ねてきた。どう答えるか迷ったが、質問が過去形と気づいて、ハッキリ答えることにした。「なかった。今なら断言できる。人類は滅亡する運命だったんだ」第三次世界大戦が勃発し、数千発のコバルト爆弾が炸裂...
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第99話:就職戦線、異状なし

「課長のやり方はおかしいですよ!」 喫煙所でくつろいでいると、後輩のヤスオが主張しはじめた。なにかと思えば、人事採用の話だった。「さっき課長の部屋に行ったら、履歴書をぽんぽん投げていたんです。それで、イスに載った分だけ面接するって。ぼくが呆...
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第98話:呼び出された悪魔

「悪魔よ! 去れッ!」その瞬間、神父のかざした十字架がストロボのように光った。いや、光ってない。十字架が光るわけがない。だけど私の魂は閃光を感じていた。がくっと息子が崩れ落ち、黒いもやが空中に消えた。悪魔が去ったのだ。息子を抱きかかえる。弱...
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第97話:執行猶予の三悪人

「いつか自由の身になれるのかなぁ?」 またプラトンが哲学的なことを言い始めた。飽きもせず悩めるもんだ。プラトンは文句が多いけど、仕事はきっちりこなすからいい。それより無口なゲーテが心配だ。あいつ、いつか部長に爆殺されるんじゃないか?「だった...
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第96話:アン・ノウイング

「なぜ信じない? すべて予言されていたんだ!」 ケイジの話を聞いていると、だんだん信じてしまいそうになる。除籍されたとはいえ、ケイジは大学教授だったから、その言説には説得力があった。 ケイジが見つけた《古書》には、100年にわたる大事故の発...
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第95話:ツンデレは心の中にあり

「ツンデレはさ、心の中にあるんだよ」 おれはそう呟いて、ビールを飲み干した。お代わりを注文すると、ヒデも追従する。「なにそれ? その、サキさんって女の子の話?」 ヒデは大学時代の友人。久しぶりに連絡があったので、今夜飲むことになった。四方山...
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第93話:改心薬

「いいえ、改心薬は完璧です」 タニ博士は静かに断言した。低い声が胸に響く。なんだか気圧されてしまう。これが世界を変えた碩学のカリスマか。 《改心薬》は悪い心を殺す薬──。悪人であればあるほど善良になるのだから、世界の刑法は一変した。改心した...
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第94話:世間様が見ている

「みなさんが言う"SEKEN様"って、なんなんですか?」 意を決し、私はホストのアサミさんに尋ねてみた。せっかくホームステイしているのだから、この国の文化を学びたい。「あぁ、世間様ね。うーん、ローズちゃんには難しいかしら」 小首をかしげるア...
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第92話:大いなる継承

「もうすぐ、《継承の儀》がはじまるんだね!」 となりでマナがひとり興奮してる。儀式がはじまるまで、私を落ち着かせてくれる約束だったのに。幼なじみの私がオヤシロさまを継ぐのが決まって、マナはうれしくてたまらないのだ。立場が逆なら、私もはしゃい...
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第91話:明日からの助言

「明日のデートは止めておけ」  振り返ると、背広を着た男が立っていた。  夜の神社に自分ひとりと思っていたから、びっくりした。そして男の顔を見て、奇妙な感覚に襲われる。その心象を、男はズバリ言い当てた。 「きみは私を親戚か、"いるはずのない...
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第90話:罪を憎んで人を憎まず

「主文、被告を"人格矯正刑"に処す」  裁判長の言葉に、法廷はどよめく。次の瞬間、ぼくは立ち上がっていた。 「ま、待ってください! それじゃ、被告の望み通りじゃないですか!  被告は人格矯正刑を受けるために、人を殺したんですよ!  ぼ、ぼく...
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第89話:とあるオタクの会話

「ナマの女って、そんなにいいもんかね...」  コイツは藪から棒になにを言い出すのか。  さいわい午前中のファミレスに客は少なく、ぼくら会話に注意を払うものはいなかった。そんな時間になにをしているかと言えば、大学を自主休講して、イベントの前...
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第88話:遺産相続

「カナちゃん、わしの遺産を継いでくれんか」 驚くか、喜ぶところを期待したが、カナちゃんはこっちを見もせずに断った。「あのね、私は遺産目当てで介護してるんじゃないの」 テキパキ部屋を片付けていく。「しかしな、わしの遺産はそれなりの規模だぞ。わ...
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第87話:関係の禁断

「おれ、卒業したくない。ずっと先生といっしょにいたい」 やるせない横顔を見せるミキヤ。 その瞬間は、額縁に入れて飾っておきたいほど美しかった。この瞬間を見るために、私は生まれてきたのね。「そう言ってもらえて、うれしいわ。 でも、その気持ちは...
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第86話:邪教の村

「全部、私が悪いんです」  保護された少女は、そう言って泣き崩れた。  彼女をパトカーまで連れていって、後部座席に座らせる。まだ恐怖による興奮がひどいので、ドアは開けておいた。  次々にパトカーや救急車、消防車がやってきて、わらわらと村に突...
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第85話:私はここにいる

宇宙船が燃えている。 起こるはずのない事故が起こってしまった。絶対不変の船体に、赤黒い腐食が広がっていく。基幹部を守るため、まだ乗員が残っているブロックも切り離した。ポロポロ崩れていく宇宙船は、骨だけになった魚のようだ。身も内蔵も捨てて、私...
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第84話:顔と名前とココロの不一致

「たとえ姿形は変わっても、あなたはシュウジさんです!」 病院のベッドで目覚めたぼくを、2人の美女が迎えてくれた。黒髪で和服の似合うスミレさん、茶髪ショートヘアのアカネちゃん。2人はぼくの姉と妹らしい。 タンクローリーとの衝突事故でぼくは焼け...
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第83話:トリフィドの涙

「ユミさん、今日は包帯を外しますよ」 医者の声に身が震えた。この2ヶ月、私の視界を覆っていた包帯が、はらり、はらりと解かれていく。ふたたび目蓋を開いたとき、世界は何色に見えるだろう?「緊張しなくても大丈夫。治療はうまくいきましたから」 やさ...
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第82話:お酒のチカラ

「嫁の浮気相手は、ぼく自身なんだけどね」 数年ぶりに再会した学友・シンジは、なにやら重い悩みを抱えていた。妻・エリコさんが浮気しているそうだが、話がよく見えない。「ちょ、ちょっと待ってくれ。最初から説明してくれ」 夫婦の問題を話すことにシン...
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第81話:魚心あれば水心あり

「ケンジくん。悪いね、草むしりなんかさせちゃって」 主任が申し訳なさそうに声をかけてきた。ぼくより年下で、ぼくより低学歴だが、この会社では先輩であり上司だ。「いえ。なんでもやりますよ」「そう? じゃ、次は倉庫の片付けもお願いできるかな?」 ...
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第80話:忌門箱

(この箱を開けると、世界が閉じると言われている) 机の上にあった小箱を見て、教授の言葉を思い出す。 教授は『忌門箱』と呼んでいた。寄木細工の秘密箱に似てるけど、もっと重くて、もっと複雑。たくさんの漢字が刻み込まれていて、オカルトに詳しい人な...
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第79話:新型メタボ対策

「カズオさん、起きてください!」 いきなり布団を剥ぎ取られ、ぼくは床に転げ落ちた。 窓が開いていて、冬の寒気に体温を奪われる。ぼくはベッドに戻ることも、布団を取り戻すこともできず、「ひぃぃ」と叫んで丸くなった。「こ、こらッ! シズ!」 朝焼...
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第78話:ブリガドーンの約束

「ま、待ってくれ! まだ地球を破壊しないでくれッ!」 たまらず、おれは祭壇の前に飛び出してしまった。 ゆらゆら詠唱していた人影が、ぴたりと立ち止まる。振り向いたローブの中には3つ、4つ、7つの目が光っていた。 ごくり、と喉が鳴る。「おまえは...
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第77話:ママの野望

「あなたは娘の幸せを考えてないの?」 夜、娘の進路について話をしていたら、嫁の「スイッチ」が入ってしまった。いわゆる説教モードだ。こうなると手に負えないが、かといって黙っていると際限なくヒートアップして、嫁自身も後悔する結果になる。 破たん...
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第76話:ストーカー被害

「最初は、配達ミスだと思いました」 語りはじめたクミコは、30代半ばのOL。仕事一筋に打ち込んできたので、独身・独り暮らし・彼氏ナシ。「女性の社会進出」の最前線で戦って、気づいたら孤立していたってタイプだ。 そこそこ整った顔立ちだが、なんと...
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第75話:恐怖の引き継ぎ

「ハードな仕事だって、言っておいたよね?」 着任早々、一ヶ月で辞めたいと言い出した若者に、私は強い口調で言った。 若者は「すみません」を繰り返すばかり。これまで辞めていった多くの若者と同じように、説明も弁解もない。これじゃ話にならない。「理...
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第74話:さまよえる生き霊

「おまえ、まだ生き霊に悩まされているのか?」 げっそり痩せた同僚のタカミチを見て、おれは心配になった。大丈夫と答えるが、ぜんぜん大丈夫じゃない。いまも会議中に倒れたので、休憩所に運んできたところだ。 タカミチはいわゆるプレイボーイで、浮いた...
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第73話:青雲の志

「先生! 今こそ起ち上がるときではありませんか!」 どえらい剣幕でヤマダ秘書が詰め寄ってきた。 いつも物静かな分だけ、激高するとおっかない。才能ある秘書なのだが、この青臭さはどうしようもない。「先生はおっしゃいました! この国を根本から変え...
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第72話:彼女をコントロール

「やめて、今夜はそんな気分じゃないの」 そう言ってマリコはそっぽを向いた。毅然とした口調だが、おれは強引にベッドに押し倒す。「いや! よして!」 強い力で抵抗しても、しょせん女の細腕。組み伏せて、胸元から首筋をなぞると、熱い息が漏れる。「あ...
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第71話:変質者の均衡

「かわいすぎる娘をもった父親の苦悩が、おまえにわかるか!」 おれはなにも言わず、ただうなずいた。ここで機嫌を損ねるわけにはいかない。 お父さんも話を聞いてもらいたかったらしく、ひと息にまくし立てた。「アリサはかわいい。本当にかわいい。 父親...