第09夜:明晰夢の悪夢

第09夜:明晰夢の悪夢 夢日記
第09夜:明晰夢の悪夢
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 夢と自覚できる夢を、明晰夢(メイセキむ:Lucid Dream)と呼ぶ。または自覚夢、覚醒夢。明晰夢の内容は、みている本人がある程度コントロールできる。自分が思い描くことを体験したり、悪夢を回避できる。明晰夢は特殊な才能ではなく、訓練次第で誰でもみることができる。現在、明晰夢を活用した心的療法が研究されている。
参考)明晰夢 – Wikipedia

 高校のころ、心理学に興味をもった私は「明晰夢」を知って、さっそく訓練をはじめた。訓練とは、夢の内容を記録するというもの。枕元にノートを置いて就寝し、目が覚めたら夢を書き出していく。夢日記のストックが増えていくと、夢の内容が変質してきた。そしてある日、私はついに覚醒した。


     夕暮れ刻、私は友人と坂道を歩いていた。
    (ここはどこだろう?)
    (ここがどこかわからないと、起きたとき夢日記を書けない)
     と考えて、これが夢──明晰夢と気づいた。

     友人はいなくなっていた。夢とわかった以上、行方を気にする必要もない。私は思う存分、夢を楽しむことにした。
     多くの人がそうであるように、私は空を飛んでみた。ふわりと宙に浮く感覚は、自分自身の想像の産物とはいえ、なかなかリアルだった。逆さまに飛んでいると、頭に血がのぼってくるのでつらかった。

     遊んでいると日が暮れてきた。
    (そう言えば私は、どこで寝てたっけ? どんな格好で、何時間くらい寝てるんだろう?)
     ぞくり、と不安な気持ちになった。奇妙なことに、私は現実を自覚できなくなっていた。
    (む、む、どうすれば夢から覚めるんだ?)
     どっと汗が噴き出す。もしかすると私は、とてもヤバイ状況で寝ているかもしれない。夢の中では無敵でも、現実の私は無防備だ。早く目を覚まさなくっちゃ。でも、どうやって?
    「起きろ! 起きろ! 起きろ!」
     私は一生懸命、頭をふった。


     ぼふっと枕の中に頭が突っ込み、私は現実に帰還した!

     ……ような気がした。
     もちろん、そんなことはない。私はずっと、この布団で寝ていた。頭を振って目が覚めたわけじゃない。あれは夢の中の出来事だ。
     私は、びっしょり汗をかいていた。

     1988年。高校2年の出来事。

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