創作

ショートショート

第72話:彼女をコントロール

「やめて、今夜はそんな気分じゃないの」 そう言ってマリコはそっぽを向いた。毅然とした口調だが、おれは強引にベッドに押し倒す。「いや! よして!」 強い力で抵抗しても、しょせん女の細腕。組み伏せて、胸元から首筋をなぞると、熱い息が漏れる。「あ...
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第71話:変質者の均衡

「かわいすぎる娘をもった父親の苦悩が、おまえにわかるか!」 おれはなにも言わず、ただうなずいた。ここで機嫌を損ねるわけにはいかない。 お父さんも話を聞いてもらいたかったらしく、ひと息にまくし立てた。「アリサはかわいい。本当にかわいい。 父親...
ショートショート

第70話:作品と作家は同一ではない

「ジロウさん、あたし、スタジオを辞めようと思うの」 ユミちゃんが突然ヘンなことを言うので、ぼくはコーヒーを噴いてしまった。 原稿をもっていたので、あわてて2人でコーヒーを拭き取る。間一髪セーフ。 なんだか気が抜けたので、休憩を入れよう。スタ...
ショートショート

第69話:名女優の素顔

「ねぇ、まだ私の素顔を見たい?」 意識を取り戻したチヨコさんは、唐突に切り出した。 枕元の夫のゲンゾウ氏も戸惑っていたが、ハッキリした声で答えた。「あぁ、見たいとも。そのために結婚したのだから!」 チヨコさんの手を、強く握りしめる。いのちを...
ショートショート

第68話:国産の癒しツール

『きみがこの手紙を読むころ、ぼくはこの世にいないだろう。 ぼくは政府の秘密を知ってしまった。そのことを、きみに伝えておきたい。 いや、きみは知っているはずだ。きみは真理省の長官であり、ムードオルガンの開発にも携わっていたのだから。 それでも...
夢日記

第31夜:滅指

友だち4人で、「メッシ」という双六をやることになった。 知らないゲームだが、友人は「やりながら覚えられる」という。それはいいけど、こいつら、誰だっけ? 向こうは私を知ってるみたいだから、ま、いっか。 初手が透明なサイコロを盤上に投げた。出た...
夢日記

第30夜:箪笥めぐり

あわい期待が無かったと言えば、ウソになる。 仕事に疲れた私は、遠く丹波の山にやってきた。 一里塚で足を休めていると、あとから来た男がとなりに腰掛けた。登山客ではない。東京から私を追いかけてきた新聞記者である。「絵が動かなくなったワケを教えて...
ショートショート

第67話:回帰日蝕

46年ぶりの皆既日食が明けた。 みるみる周囲が明るくなっていく。まるで天空の穴から、昼間が広がっていくみたい。夜明けとはちがう変化に、私は興奮した。この震えを、感動と呼ぶのかしら? 私たちは日食観測のため、太平洋上の船に"来て"いた。 小一...
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第66話:殺人罪

「これはどうしたことだ!」  久しぶりに研究室を訪れた私は、驚きを隠せなかった。  アルジャーノンが、研究スタッフと談笑している!  もちろん、アルが言葉をしゃべっているわけではないが、そう見えてしまった。 「あ、教授。いらしたんですか」 ...
ショートショート

第65話:作品づくり

「くだらない仕事はやりたくない!」 タカユキはぷいっと顔をそむけ、ゲームを再開した。その幼稚な態度に、私はむっとした。「くだらない仕事かどうか、書類を見なさいよ!」 書類の束を突きつけるが、タカユキはゲーム画面から目を離さない。私も意地にな...
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第64話:過去を捨てた女

「お母さん、なんで今ごろ?」 カスミの声は震えているが、強い非難が込められていた。無理もない。幼少時に自分を捨てた母親が突然、現れたのだ。恨み言もあるだろう。 私はカスミの親代わりとして、この再会を見届けなければ。「ごめんね、ごめんね」 母...
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第63話:死んだ主人が日記を書いています

死んだ主人が日記を書いています。 もちろん主人でないことはわかっていますが、そう思えてなりません。 この気持ちを、どう整理すればいいでしょう? 主人の趣味は、ブログでした。 小学生のころから毎日欠かさず、どこへ行った、なにを見た、なにを食べ...
夢日記

第29夜:台風と犬小屋

風が強い。もうすぐ台風がやってくる。 家に帰る途中の坂道で、犬小屋を見かけた。 よく見ると、それは、わが家の飼い犬「ワン太郎」の小屋だった。(ま、まさか?) ワン太郎は、犬小屋の裏に隠れていた。地面を少し掘っているのは、風を避けるためだろう...
夢日記

第28夜:同情しないで

久々にダイナミックな夢を見た。 夢の中で《私》は、中世ヨーロッパのどこかの町にいた。大群衆が押し寄せた石畳の通りを、若い女が引きずられていく。忌まわしい《魔女》が処刑されるのだ。苛烈な拷問で狂ってしまったらしく、魔女はケタケタ笑いながら指を...
夢日記

第27夜:コン・バトラーV 対 ボルテスV

コン・バトラーVとボルテスVが戦う夢を見た。 夢の中で、私は「役」を与えられておらず、ただ成り行きを見守るだけだった。 ひょっとすると、テレビを見ていたのかもしれない。 ドラマは、コン・バトラーV側で展開した。 同時にボルテスV側でもドラマ...
夢日記

第26夜:縄文時代のバロック建築

遺跡を掘り当ててしまった。 山奥で大学校舎を建てているときのこと。巨大な講堂(天主堂?)である。荘厳な造りはヨーロッパを彷彿させるが、古代日本人の手によるものと判明した。(これは世界遺産どころじゃない。歴史をひっくり返す大発見だ!) 私たち...
夢日記

第25夜:単騎血戦

最近、昼夜が逆転している。 何日も泊まり込みで作業してるから、昼も夜もないんだけど、やっぱり作業効率が悪くなった。大量のファイルを片っ端から書き換えたのに、すべて終わったところでミスに気づいてやり直しとか、もう馬鹿すぎる。 どうせ数日は帰れ...
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第62話:蜜の流れる地

「わわっ、なにこれ? すごい!」 なんという甘さ、スーッと溶ける爽やかさ! 爺ちゃんが取り出したハチミツは、たとえるもののない天上の甘露だった。「どうだ、ケイイチ。うまかろう? 下界の連中には内緒だぞ」 "下界"という言葉に戸惑うが、秘密に...
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第61話:歴史に残る仕事

「ぼくはこの仕事に向いてないのかもしれません」 昼休み、弁当を食べ終えたタケルは深いため息をつき、遠くを見据えた。 いつもの陽気さは影もない。よくない兆候だった。「なにか悩みでもあるのか?」 私はお茶を飲みながら、話を聞くことにした。 タケ...
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第60話:部屋とセーラー服と私

「これって、セーラー服?」 つきあって4年になる彼氏の部屋で、セーラー服を見つけてしまった。 ベッド下の紙袋に入っていた。 きょろきょろ周囲を見渡す。 タクヤは買い物に行ったばかりだから、あと15分は戻ってこない。 窓を閉めて、カーテンをひ...
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第59話:本気のしるし

「先生、私、初めてじゃないよ」 放課後の教室で、ミユキはぼくの机に腰掛けた。書類が床に落ちる。「なにが、だだれと、どうして?」 感情が逆流して、うまくしゃべれない。 耳元で少女が囁く。「キスしてくれたら、教えてあげる」 少女は目をつむり、う...
夢日記

第24夜:爆弾劇場

《お配りした指輪は、1分に1個ずつ爆発します》 黒いスクリーンに白い字幕。手書きのような字幕フォント。(どういう意味だろう・・・?) 観客席で私は、次の変化を待った。《現在、全世界に指輪をはめた観客が150万人います》 指を見ると、金色の指...
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第58話:吾輩は犬である

吾輩は犬である。 名前はあるかもしれないが、とんと見当がつかぬ。 ご主人様との関係は、おおむね良好。 そう思うのは、散歩の回数が多いからだ。昨年あたりから回数が増えた。ほぼ毎晩である。夜の散歩は味気ないが、鎖につながれた日中を思えばありがた...
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第57話:保証された権利

「いつ、だれと結婚するかは、あたしが決めることでしょ!」 怒鳴られて母さんはしょんぼりした。 言いすぎたかもしれないけど、押し切るしかない。 私は絶対にヨシユキと結婚する。「だってリカ。母さんの話を聞きなさい」「聞いてどうするの? もう決め...
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第56話:賢い選択

「おまえ、ダイエット中だったのか。そりゃ、悪いなぁ」 高校時代の友人・シゲルは、がははと笑ってジョッキを飲み干した。(ちくしょう、うまそうに飲み喰いしやがって!) メタボリックな私は半年前からダイエットしているが、ぜんぜん成果が出ない。だか...
夢日記

第23夜:タバコを吸う夢

「あたしにも一本、ちょうだい」 私は胸ポケットからタバコを取り出して、差し向けた。細い指がタバコを挟み、火を点ける。ふぅーと紫煙がたなびく。(美人なのに、タバコを吸うなんて残念だな) ふと、自分もタバコを吸っていることに気がついた。 いつ、...
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第55話:スタンドアローン

「目が覚めたかい?」 ぼくは、ボクに声をかけた。 ボクは身体を起こして、機械の頭を振る。「ここは宇宙船?」「ぼくの棺桶になるところさ」 機械のボクは、生身のぼくを見て驚いた。「あれ? ぼくが生きてる。どうなってんの?」「説明するよ」 97時...
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第54話:ブラック・ウィドー

「ついにブラック・ウィドーを妻に娶ることができた」 きょう、80歳の誕生日を迎えるカツシゲ翁は、微笑みながらグラスを掲げた。「いやだわ、そんな言い方されては」 きょう、結婚したばかりの若い妻ヒトミも、グラスを手に取り乾杯する。 海辺に佇む広...
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第53話:アーバンライフ

「あれ? 母さん、どうしたの?」 アパートに帰ると、ドアの前に母さんが立っていた。「なに言ってんの、ミホ。今日、泊まりに来るって言っておいたでしょ」 ヤバ、すっかり忘れてた。 田舎の母が恩師に会うため、上京してくるんだった。 私は母さんに謝...
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第52話:呪われた会社

「ユミちゃん、この会社はヤバイよ!」 幼なじみのシロウは、青ざめた顔で訴えた。 霊感の強い人だから、なにか言うとは思っていたけど、こんなに真剣だとシャレにならない。 ここは私が勤める証券会社。ヘッドハンティングされて3年になるかしら。 最初...