創作

ショートショート

第11話:隠し味

「本当のことを言って、シンイチさん。おねがいだから……」 うるんだ瞳で、カズネは詰め寄ってきた。腕をつかむ指に、ぎゅーっと力がこもる。カズネは疑っている。ぼくがハツネと……彼女の姉と浮気していると疑っている。 それは事実だった。 ぼくはハツ...
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第10話:永遠の約束

「ユキエ。おれはもう、おまえ以外の女は愛せない。この気持ちは永遠に変わらないよ!」「うれしい! 私もよ、ハジメ!」(とんでもない約束をしてしまった……) ハジメは深く後悔していた。もうすぐ午前2時。霊媒師の言葉を信じるなら、ユキエがやってく...
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第09話:本来業務

「もしもし……あぁ、きみか。 え? 今? 大丈夫、話せるよ。仕事もひと段落ついたところ。 だれも残ってないよ。みんな帰るの早すぎ。 えぇとね、企画書と稟議書、それに収支予測を立ててるところ。 明日、会議で使うんだよ。おれが発表するんだ。 う...
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第08話:サトコの決断

「お久しぶりね」 最初、それがサトコだとはわからなかった。着ているものや化粧のせいじゃない。雰囲気がまるでちがう。ハッキリした声、私を見つめる目、背筋の伸びた歩き方。「……き、きれいになったのね、サトコ……」「あら、ありがと」 微笑を浮かべ...
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第07話:萌えキャラ

今日はトモヨちゃんの誕生日。 なので、誕生パーティを開くことにした。職場の同僚だけでこぢんまりと開くつもりだったけど、次から次へと参加者が集まっちゃったので、フロア全部を貸し切ることになった。 これも、トモヨちゃんの魅力の為せる技か。 トモ...
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第06話:成功の秘密

「昇進、おめでとう!」「ありがとう、マサアキ♪」 かちんと、ワイングラスが涼やかな音を立てる。ここは高級ホテルのレストラン。今夜は、リエコの昇進祝いだった。 穏やかな時間が流れていく。 いつしか話は、リエコの《成功の秘密》に及んでいた。リエ...
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第05話:ぼくの名前を呼んで

どこかで列車が走る音がする──。 そんな馬鹿な……ありえない。 ぼくは首をふって、幻聴を追い払った。 疫病が大流行して、人類はあっという間に滅んでしまった。気がつくと、ぼくは最後の1人になっていた。笑ってしまうね。ぼくはヒキコモリだった。誰...
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第04話:プリインストール

(こんなはずじゃなかったのに……) ぼくにまたがって、気持ちよさそうに腰をくねらすマリコ。 喘ぎ声がホテルの中に響く。白いのどをそらせて、全身で悦びを享受していた。 ぼくたちは高校1年。マリコに告白したのは2週間前。その日のうちに、ぼくはマ...
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第03話:トキコの部屋

「トキコの部屋は、まだ残ってるんだろうか?」 坂道を登りながら、ケイスケが訊ねてきた。「さぁね、もう5年も経つからなぁ……」 おれはおざなりに答えた。西日が強くて、蒸し暑い。黙って歩くのはツライが、話すのもツライ。なので、おれたちは無言でト...
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第02話:声のある暮らし

となりに、若い夫婦が住んでいる。 旦那は見たことないけど、奥さんはとびっきりの美人だ。引っ越しの挨拶をしたら、なんとなく親しくなれた。家の前で出くわせば、ちょっと世間話もできるくらいだ。 家に閉じこもる仕事をしているおれにとって、奥さんの存...
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第01話:脳内彼女

リプライ、遅れてごめん。 もらったメールの内容が重かったので、返答に迷っていた。ちょっと整理させてほしい。 えぇと、彼女とはmixiで知り合ったんだよね。 マイミクになって、コメント交換しているうちに、好きになっちゃった。問題は……彼女と会...
夢日記

第02夜:2本目の最終電車

「最終電車が行っちまったぁ!」 ホームから走り去る電車を見ながら、私は途方に暮れた。時刻は深夜。ほかに客はいない。次の電車もない。ホームは静まりかえっていた。 この駅で乗り換えるはずだった。 そのとき、切符がないことに気づいた。あわてて探し...
夢日記

第01夜:ザ・マンション

目覚めると、マンションの一室だった。 室内には、私のほかに数名の男女。みんな知らない人だ。私が目覚めたことに気づくと、彼らは状況を説明してくれた。それは、驚愕すべき状況だった──。 ここは建設中のマンション。広い敷地にはショッピングセンター...