第14話:内助の功

第14話:内助の功 ショートショート
第14話:内助の功
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雨上がりの駅前で、私はコウイチさんと再会した。
 3年ぶりにみる彼は、まるで浮浪者のようにみすぼらしかった。薄汚れたコート、もさもさの髪、落ちくぼんだ目。でも、目だけはちがう。優しかったころのコウイチさんの目だった。
「メグミ。お、おれは……」
 そこから先は声にならなかった。想いが大きすぎるようだった。
「いいのよ、コウイチさん。また、いっしょに頑張りましょう」
 私は彼の手をとった。真っ黒に汚れた手を、ぎゅっと抱きしめる。コウイチさんは嗚咽を漏らし、その場に崩れ落ちた。
 「すまない……メグミ。おれを許してくれ……」


 コウイチさんは芸術家。そして、私の幼なじみ。私の憧れ。私のすべて……。
 私はずっと、コウイチさんを支えてきた。彼の作品がとても好きだったから。彼のひたむきな姿が好きだったから。
 コウイチさんは、不世出の才能を持っていると思う。
 けれど、偉大な芸術家たちの多くがそうであったように、コウイチさんもまた、性格に問題があった。純粋すぎるというか、子供っぽいというか、すぐに喧嘩をしてしまうのだ。
 そのためか、コウイチさんの作品はいつも理解されない。せっかくの作品を盗まれたり、壊されたことさえある。それでも、コウイチさんは決してあきらめなかった。
 4年前、コウイチさんの作品が脚光を浴びることになった。ちょっとした作品が海外で取り上げられ、これまでの作品が一気に売れはじめたのだ。どの作品にも信じられない値がついて、メディアは天才出現とはやし立てた。
 コウイチさんは変わった。
 元来の無邪気さが裏目に出てしまった。彼は傲慢になり、野放図になった。長年連れ添った私には見向きもしなくなり、酒に女に遊び呆けた。
 そんな豪勢な日々も、長くは続かなかった。
 麻薬所持疑惑に贋作騒動。いわれのない中傷を受けて、コウイチさんは激昂。失言に失言を重ねて、ついに画壇からも放り出されてしまった。


「さぁ、帰りましょう」
 私たちは手を取り合って、歩きはじめた。
 わかってる。コウイチさんはきっと立ち直る。そしてまた、素晴らしい作品をつくってくれる。絶え間ない逆境が、コウイチさんを鍛えてくれるのだ。頂点に君臨するのは死後でもいい。遙かな高みに挑みつづける孤高な姿こそが、コウイチさんには似合っている。
 私は、そんな彼を支えてゆく。これまでも、これからも。
 そのためなら……なんだってするわ。

(986文字)

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