第07夜:タイムスキップ

第07夜:タイムスキップ 夢日記
第07夜:タイムスキップ
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 数年ぶりに再会した友人は、驚くほど老けていた。

 「老けた」という形容では足りない。モジャモジャに伸びた髪とヒゲは浮浪者のようだし、落ちくぼんだ眼窩やシワの深さは末期の病人を彷彿させた。彼はまさに老人になっていた。人は……たった数年でこれほど変わってしまうものなのだろうか?
「おま……」
 老けたな、と言おうとして口ごもってしまった。笑って指摘できるようなレベルではない。そんな私の心情を察したのか、友人はニヤリと笑って、となりに座るように目配せした。上司に呼び出されたような気持ちで私は着席した。とりあえず生ビールを注文して、おしぼりで顔をぬぐう。
「ま、いろいろあるよな」
 と友人はつぶやいた。意味がよくわからない。友人は琥珀色の液体をくぃっと呷って、煙草のけむりを吐いた。酒のニオイ、煙草のニオイ、それになにか奇妙なニオイが混ざっている。オーデコロンと高級チョコレートを混ぜたようなニオイだ。
 もしかするとこれは……、”老い”のニオイなのかもしれない。

「なにか、あったんですか?」
 と私は尋ねた。フツーに質問するつもりが、敬語になってしまった。敬語を使う方がむしろ失礼に当たると思ったが、老人になってしまった彼にタメ口はできなかった。
 友人はちらりと私を見ると、煙草をぎゅっと灰皿に押しつけ、新しい煙草に火をつけた。ふぅーと紫煙を吐く。なにも語る気はないのだろうか……。
 そう思って視線を外した瞬間に、友人の声が飛び込んできた。
「結局、年金はもらえそうにないな」
「え?」
「70歳になったけど、年金は5年後からだしな。
 あと5年も生きていられる自信はないぜ。
 生きていたとしても、脳みそは死んでるだろうしな」
 ぐらり、と世界が揺らいだ。
 これと同じ会話を、前にもしたような気がする。
 あれは……いつだったっけ?
 この友人と会うのは数年ぶり? 数十年ぶり?
 私はいま……何歳?
「鏡、見てこいよ」
 と友人は言った。ニヤニヤしながら、おしぼりを手渡された。
 なぜ、おしぼり? これをどうしろと?
 私の顔に……なにか……ついているのか?
(か、鏡を、見てはいけない!)


 という夢を見た。
 どういう設定なんだろう? 40年後の世界に(40年分の歳をとって)放り出されてしまったのか。ちゃんと暮らしてきたのに40年分の記憶を失ってしまったのか。とにかく人生を早送り(スキップ)された感じ。怖い夢だった。

コジット 年金手帳ファイル
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