『TAJOMARU』は2009年に公開された日本映画。芥川龍之介の小説『藪の中』の映像化だが、ストーリーはまったく別物。前半は引き込まれたが、後半で失速。地獄谷のシーンは、馬鹿らしくて見てられなかった。つまるところ本作は、「強くて誠実でかっこいい小栗旬」を描きたかっただけだった。
とはいえ、入れ替えトリックはおもしろい試み。スジが通るように、整理してみよう。
ストーリー
所司代「これより詮議いたす。真実のみを語るように…」
室町時代末期。畠山家に盗賊が押し入った。首領の(多襄丸)は亜子姫を奪おうとするが失敗、一味は捕縛された。ところが亜子姫が、おかしなことを言い出した。
「私は多襄丸を愛しています。夫は直光ではありません!」
たまたま所司代が居合わせたので、白州で取り調べることになった。関係者がひとりずつ証言する。最初の証言者は畠山家の家老。
忠実なる家老「20年前は世も平安で、畠山家も豊かでした…」
- 幼きころの長男(信綱)、次男(直光)、阿古姫は仲良しだった。
- 信綱は勇ましく、直光は優しく、阿古姫はミステリアス。
- 直光は亜子姫に求愛するが、亜子姫は思わせぶりな態度でからかう。
- ある日、盗人の子どもが捕らえられるが、直光の温情によって家来となる。
- 家来となった桜丸は、生涯の忠誠を誓う。
阿古姫つき侍女「3年前、先代当主がお亡くなり、将軍がお見えになったのです…」
- 将軍足利義政は、畠山家を管領職に据える条件として、信綱と阿古姫の結婚を命じる。
- お家のため、兄に亜子姫をゆずらなければならない直光。
- 一方、直光の人望を恐れていた信綱は、阿古姫を力ずくで自分のものにしようとする。
- 桜丸の知らせで、直光が現場に駆けつける。
- 直光は信綱を斬りつけ、阿古姫を奪って逃走する。

新多襄丸(直光)「おれは多襄丸。だが以前は畠山直光と呼ばれていた…」
- 直光と阿古姫は山越えをしていた。行くあてはない。
- 阿古姫がずっと黙っているので、直光は不安になる。
- (一時は兄にゆずろうとしたことを怒っているのか?)
- (家を失った自分を、愛してくれるだろうか?)
- そこへ多襄丸が出現。不意をつかれた直光はあえなく気絶する。
- 目が覚めると、阿古姫は多襄丸に寄り添っている。
- 亜子姫「亜子は盗賊の妻になります。あの男は殺してください!」
- 多襄丸「殺すのもあわれ。縄を解くから、どこへねりと立ち去れぃ!」
- 直光は逆上し、多襄丸と取っ組み合いになる。
- そのすきに阿古姫が逃げる。
- 直光は多襄丸を刺し殺す。多襄丸は、自分の名を継げと言い残す。

盗賊一味「親方の帰りを待っていたら、見知らぬ若者が現れた…」
- 山賊グループと遭遇した直光は、多襄丸を名乗る。
- 彼らは旧多襄丸の一味だが、旧多襄丸を嫌っており、直光を新多襄丸と認める。
- 山賊として暮らしはじめる。
- 「畠山家は多襄丸一味を恐れているから、手を出してこないさ」
- 盗んだ金を村人に分配することで、協力関係を築く。
- ある日、畠山家の横暴を知る。
- 人々に怨まれているのは信綱ではなく、直光だった。
- しかもその妻は、自分を捨て、死んだと思われた亜子姫。
- 新多襄丸は畠山家に向かう。

亜子姫「私は直光さまを愛しておりました…」
- 3年前、亜子姫は信綱に手籠めにされる(結果まで映す)。
- 「これでおまえは、おれのものだ。直光には嫁げまい!」
- 絶望する亜子姫。そのまま直光と逃げることになったが、直光の負担になりたくない。
- そこへ旧多襄丸が出現。直光は気絶する。
- 旧多襄丸に襲われた亜子姫は、短刀で喉を突こうとするが、旧多襄丸に止められる。
- 話し込む2人。やがて、芝居を打って直光を落ち延びさせることになる。
- 直光が目覚める。
- 拒絶、絶望、逆上、乱闘。
- ところが乱闘になったので、逃げ出した。直光は死んだだろう。
- 山中をさまよっていると、桜丸に拾われる。
- ところが桜丸は、家来に「直光さま」と呼ばれていた。

新直光(桜丸)「盗人は、いつまでも盗人のようです…」
- 20年前から桜丸は、直光を憎んでいた。そして畠山家を乗っ取るつもりだった。
- 3年前、桜丸は(直光に斬りつけられた)信綱にとどめを刺し、直光が殺したと家来に伝える。
- 動揺する家来たちに、このままだとお家断絶になるから、芝居に協力せよと持ちかける。
- 信綱は病死と発表。奪還した亜子姫を娶り、管領職を継ぐ。
- その後、桜丸は暴君となって、民衆を虐げた。
- 新多襄丸と亜子姫が通じていたので、これを捕縛する。
- そこへ所司代がやってきて、詮議されることになった。
将軍「血筋など、どうでもよい…」
- 所司代が桜丸を捕縛しようとするが、将軍によって止められる。
- 所司代は事情を説明するが、将軍は興味を示さない。
- 将軍は新直光(桜丸)の正体を知った上で、その有能さを評価していた。
- 将軍の威光を借りる新直光(桜丸)には、誰も手が出せない。
- 新多襄丸(直光)と亜子姫は牢屋へ。互いを疑っていたことを詫びる。
- 新直光(桜丸)は将軍に、亜子姫の助命を嘆願する。しかし将軍は認めない。
- 処刑を延ばして、亜子姫の気が変わるのを待つという桜丸。

所司代「思えば、奇妙な事件でございました…」
- 1年後、牢屋に所司代がやってきて、新多襄丸(直光)と亜子姫を解放する。
- 将軍が急逝したことで、勢力図が激変。新直光は謀反人として処刑された。
- 新直光(桜丸)は権力を手に入れたが、命を失ってしまった。
- 新多襄丸(直光)と亜子姫は野に逃れ、自由に生きた。

旧多襄丸「欲しいものは力尽くで手に入れろ…」
- 20年前、旧多襄丸は息子(桜丸)を畠山家に送り込む。
- 家臣に召し抱えられたのを見て、ほくそ笑む。
《おわり》
雑記
というストーリーだったらよかったのに。
しかしこのとおりに作ると、小栗旬は運命に翻弄されるだけで、あまりかっこよくない。「小栗旬の映画」にならない。