創作

ショートショート

第94話:世間様が見ている

「みなさんが言う"SEKEN様"って、なんなんですか?」 意を決し、私はホストのアサミさんに尋ねてみた。せっかくホームステイしているのだから、この国の文化を学びたい。「あぁ、世間様ね。うーん、ローズちゃんには難しいかしら」 小首をかしげるア...
ショートショート

第92話:大いなる継承

「もうすぐ、《継承の儀》がはじまるんだね!」 となりでマナがひとり興奮してる。儀式がはじまるまで、私を落ち着かせてくれる約束だったのに。幼なじみの私がオヤシロさまを継ぐのが決まって、マナはうれしくてたまらないのだ。立場が逆なら、私もはしゃい...
夢日記

第40夜:だいこんにあやまれ

私は寝るとき、枕元にメモ帳を置くようにしている。 もちろん、見た夢をメモするためだ。夢は揮発性が高いので、トイレに行ったり、歯を磨く間に失われてしまう。「あ、夢を見た」と気づいてから3分くらいが勝負だ。だから枕元のメモ帳は欠かせない。 いま...
夢日記

第39夜:夢の中では早く走れない

夢の中では早く走れない。 ふつうに歩くことはできるが、いざ走ろうとすると、ベルトコンベアを逆送するようにスピードが出ない。あるいは、海の底のような強い抵抗がかかる。身体はどんどん前傾し、果ては四つん這いになって地面をかきむしっても、ちっとも...
夢日記

第38夜:脳を盗まれた女

「盗まれた脳を、取り返してほしいんです」 アケチ探偵事務所に、奇妙な依頼人がやってきた。美しい女性で、自分の脳が盗まれたと言う。脳を盗まれて、なぜ平気なんだろう? むらむらと興味がわいてくるが、先生は「ふむ」とあいまいな返事をするだけで、た...
夢日記

第37夜:停電の町にて

『サイレントヒル』の最新版を手に入れた。 嫁が不在だが、ちょっとだけプレイしてみよう。ディスクをセットして、電源を入れる。オープニングムービーはけっこう怖かった。 階段で主人公と戦っているのは、黒いローブをまとった男。映画『スクリーム』に出...
ショートショート

第91話:明日からの助言

「明日のデートは止めておけ」  振り返ると、背広を着た男が立っていた。  夜の神社に自分ひとりと思っていたから、びっくりした。そして男の顔を見て、奇妙な感覚に襲われる。その心象を、男はズバリ言い当てた。 「きみは私を親戚か、"いるはずのない...
ショートショート

第90話:罪を憎んで人を憎まず

「主文、被告を"人格矯正刑"に処す」  裁判長の言葉に、法廷はどよめく。次の瞬間、ぼくは立ち上がっていた。 「ま、待ってください! それじゃ、被告の望み通りじゃないですか!  被告は人格矯正刑を受けるために、人を殺したんですよ!  ぼ、ぼく...
ショートショート

第89話:とあるオタクの会話

「ナマの女って、そんなにいいもんかね...」  コイツは藪から棒になにを言い出すのか。  さいわい午前中のファミレスに客は少なく、ぼくら会話に注意を払うものはいなかった。そんな時間になにをしているかと言えば、大学を自主休講して、イベントの前...
ショートショート

第88話:遺産相続

「カナちゃん、わしの遺産を継いでくれんか」 驚くか、喜ぶところを期待したが、カナちゃんはこっちを見もせずに断った。「あのね、私は遺産目当てで介護してるんじゃないの」 テキパキ部屋を片付けていく。「しかしな、わしの遺産はそれなりの規模だぞ。わ...
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第87話:関係の禁断

「おれ、卒業したくない。ずっと先生といっしょにいたい」 やるせない横顔を見せるミキヤ。 その瞬間は、額縁に入れて飾っておきたいほど美しかった。この瞬間を見るために、私は生まれてきたのね。「そう言ってもらえて、うれしいわ。 でも、その気持ちは...
ショートショート

第86話:邪教の村

「全部、私が悪いんです」  保護された少女は、そう言って泣き崩れた。  彼女をパトカーまで連れていって、後部座席に座らせる。まだ恐怖による興奮がひどいので、ドアは開けておいた。  次々にパトカーや救急車、消防車がやってきて、わらわらと村に突...
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第85話:私はここにいる

宇宙船が燃えている。 起こるはずのない事故が起こってしまった。絶対不変の船体に、赤黒い腐食が広がっていく。基幹部を守るため、まだ乗員が残っているブロックも切り離した。ポロポロ崩れていく宇宙船は、骨だけになった魚のようだ。身も内蔵も捨てて、私...
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第84話:顔と名前とココロの不一致

「たとえ姿形は変わっても、あなたはシュウジさんです!」 病院のベッドで目覚めたぼくを、2人の美女が迎えてくれた。黒髪で和服の似合うスミレさん、茶髪ショートヘアのアカネちゃん。2人はぼくの姉と妹らしい。 タンクローリーとの衝突事故でぼくは焼け...
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第83話:トリフィドの涙

「ユミさん、今日は包帯を外しますよ」 医者の声に身が震えた。この2ヶ月、私の視界を覆っていた包帯が、はらり、はらりと解かれていく。ふたたび目蓋を開いたとき、世界は何色に見えるだろう?「緊張しなくても大丈夫。治療はうまくいきましたから」 やさ...
夢日記

第36夜:電池がない

(なにか......なにか手はないか?)  荷物をあさりながら、私は必死に考えた。カメラの電池がないのだ。一眼レフだけでなく、コンパクトカメラも、iPhoneも電池切れ。電池がなければ、写真を撮れない。 (久々の海外旅行なのに、とってもいい...
夢日記

第35夜:世界の果てのビデオ鑑賞会

某所。6人のオタクがビデオ鑑賞会を開いていた。 広くて暗い部屋──いや、部屋というには広すぎる。どこかの倉庫だろうか。 暗い。窓も照明もないから真っ暗だ。照明はあるかもしれないが、スイッチの場所がわからない。いまは昼なのか夜なのか、朝なのか...
夢日記

第34夜:7手先を読め

居酒屋を出たところで、日本刀をもった甲冑男に襲撃された。 西洋のプレートメイルを着てるのに、なぜ武器が日本刀なのか? なぜ目が真っ赤に光っているのか? よくわからないけど、とにかく拳銃をぶっ放した。 パンッ、キーンッ! 火花が散って、銃弾を...
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第82話:お酒のチカラ

「嫁の浮気相手は、ぼく自身なんだけどね」 数年ぶりに再会した学友・シンジは、なにやら重い悩みを抱えていた。妻・エリコさんが浮気しているそうだが、話がよく見えない。「ちょ、ちょっと待ってくれ。最初から説明してくれ」 夫婦の問題を話すことにシン...
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第81話:魚心あれば水心あり

「ケンジくん。悪いね、草むしりなんかさせちゃって」 主任が申し訳なさそうに声をかけてきた。ぼくより年下で、ぼくより低学歴だが、この会社では先輩であり上司だ。「いえ。なんでもやりますよ」「そう? じゃ、次は倉庫の片付けもお願いできるかな?」 ...
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第80話:忌門箱

(この箱を開けると、世界が閉じると言われている) 机の上にあった小箱を見て、教授の言葉を思い出す。 教授は『忌門箱』と呼んでいた。寄木細工の秘密箱に似てるけど、もっと重くて、もっと複雑。たくさんの漢字が刻み込まれていて、オカルトに詳しい人な...
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第79話:新型メタボ対策

「カズオさん、起きてください!」 いきなり布団を剥ぎ取られ、ぼくは床に転げ落ちた。 窓が開いていて、冬の寒気に体温を奪われる。ぼくはベッドに戻ることも、布団を取り戻すこともできず、「ひぃぃ」と叫んで丸くなった。「こ、こらッ! シズ!」 朝焼...
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第78話:ブリガドーンの約束

「ま、待ってくれ! まだ地球を破壊しないでくれッ!」 たまらず、おれは祭壇の前に飛び出してしまった。 ゆらゆら詠唱していた人影が、ぴたりと立ち止まる。振り向いたローブの中には3つ、4つ、7つの目が光っていた。 ごくり、と喉が鳴る。「おまえは...
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第77話:ママの野望

「あなたは娘の幸せを考えてないの?」 夜、娘の進路について話をしていたら、嫁の「スイッチ」が入ってしまった。いわゆる説教モードだ。こうなると手に負えないが、かといって黙っていると際限なくヒートアップして、嫁自身も後悔する結果になる。 破たん...
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第76話:ストーカー被害

「最初は、配達ミスだと思いました」 語りはじめたクミコは、30代半ばのOL。仕事一筋に打ち込んできたので、独身・独り暮らし・彼氏ナシ。「女性の社会進出」の最前線で戦って、気づいたら孤立していたってタイプだ。 そこそこ整った顔立ちだが、なんと...
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第75話:恐怖の引き継ぎ

「ハードな仕事だって、言っておいたよね?」 着任早々、一ヶ月で辞めたいと言い出した若者に、私は強い口調で言った。 若者は「すみません」を繰り返すばかり。これまで辞めていった多くの若者と同じように、説明も弁解もない。これじゃ話にならない。「理...
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第74話:さまよえる生き霊

「おまえ、まだ生き霊に悩まされているのか?」 げっそり痩せた同僚のタカミチを見て、おれは心配になった。大丈夫と答えるが、ぜんぜん大丈夫じゃない。いまも会議中に倒れたので、休憩所に運んできたところだ。 タカミチはいわゆるプレイボーイで、浮いた...
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第33夜:全校同窓会

全校同窓会の招待状が届いた。 なんと高校3学年の全生徒、全教師が、校舎を借り切って、一堂に会するらしい。体育館の立食パーティのあとは、自分の教室でホームルームを受講するそうだ。誰が考えたか知らないが、すさまじいイベントだ。 しかし私は仕事の...
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第32夜:あらざらむ

気がつくと中学生に若返っていた。 自分で言うのもアレだが、肌の張りがちがう。いい意味で、ぷにぷにしてる。 ちょっとマテ。年号がぶっ飛んでいる。長生きできる年数じゃない。私は若返ったのではなく、一度死んで、生まれ変わったのだ。これが輪廻転生っ...
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第73話:青雲の志

「先生! 今こそ起ち上がるときではありませんか!」 どえらい剣幕でヤマダ秘書が詰め寄ってきた。 いつも物静かな分だけ、激高するとおっかない。才能ある秘書なのだが、この青臭さはどうしようもない。「先生はおっしゃいました! この国を根本から変え...