第06夜:親父が見た夢 dream06
2006年 夢日記昔、親父からこんな話を聞いた。
ある日、親父は地方に出張していた。取引先との打ち合わせが終わり、同僚と旅館に泊まることになった。そこで親父は、夢を見た。
夢の中で親父は、露天風呂につかっていた。
すると、野生のクマが湯船に入ってきた。びっくりした親父は、みかんを投げて追い払おうとしたが、クマはいっこうに出て行かない。むしろ、ずいずい近寄ってくる。
危険を感じた親父は、すっぽんぽんのまま逃げ出した。
するとクマも湯船からあがって、ついてくる。親父はみかんを投げつける。クマはそれをよけて、ずんずん追ってくる。
(せっかくの温泉だったのに……)
遠ざかっていく温泉がすごく未練だった。
◎
目が覚めると朝だった。となりで寝ていたはずの同僚が、テラスに座っている。
よく見ると、灰皿が煙草でいっぱいだ。
「寝言がうるさくて、寝てられなかったよ」と、同僚は言う。
「そりゃ、申し訳ないな」と親父は謝った。
近年まれに見る大スペクタルの夢だった。さぞや騒がしかったと思う。
「で、おれはなんて言っていた?」
「ジャンケンぽーん! ジャンケンぽーん! て言ってましたよ」
(……ぜんぜん夢と関係ないジャン……)
と、親父は思ったそうな。