創作  2006年10月12日(木)に書いた 夢日記

第08夜:長電話する夢

第08夜:長電話する夢

「ご無沙汰です。最近、どうですか?」

 昔の仕事仲間から電話がかかってきた。この声を聞くのは何年ぶりだろう? 20世紀から電話がかかってきたようなもんだ。なつかしい。積もる話がいっぱいある。

「あれから、いろんなことがあったよ。○×さん、覚えてる?」
「覚えてますよ」
「彼は~~したよ。それから△□ちゃんはね……」
「えー! そうなんですかぁ?」
 この数年にあったイベントの数々を私は語りはじめた。

 1時間以上が経過したが、話はまだ終わらなかった。
「ところで電話、大丈夫なの?」と私が訊くと、
「えぇ、いいですよ。いまヒマなんです」と言うので、
「そうなの。それじゃ、☆◇の件だけどさ……」とつづけてしまう。

 かかってきた電話なので悪いなぁとは思いつつも、話はますます盛り上がる。こんなに長話するのも久しぶりだ。歩きながら話していたので、だいぶ遠くまで来てしまった。いつの間にか田んぼの中を歩いているよ。空が蒼い。

「ちょっと待ってください。トイレ、行ってきます」
 そう言うと、相手が電話口から離れた。
「かけ直そうか?」
 と声をかけたけど、もう聞こえていないようだった。

 携帯電話を耳に当てながら、私は相手が帰ってくるのを待った。大きな岩があったので、そこに腰掛けて、一息つく。木陰に入ったので、だいぶ涼しくなった。

 会話もせずに携帯電話を耳に当てているのは馬鹿らしかった。かといって、相手がいつ戻ってくるかわからない。
(……いっぺん切った方がいいかな?)
 そう思ったとき、ふと気がついた。

 あ、これ、夢だ。

 目が覚めて、枕元の携帯電話をたぐり寄せる。もちろん、着信はなかった。この2時間あまり、私は夢の中で話していたのだ。
 誰と──?
 電話の向こうで相づちを打っていたのは、自分自身だった。

 なんだか、どっと疲れてしまった。

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