創作  2011年05月01日(日)に書いた ショートショート

第97話:執行猶予の三悪人

第97話:執行猶予の三悪人

「いつか自由の身になれるのかなぁ?」

 またプラトンが哲学的なことを言い始めた。飽きもせず悩めるもんだ。プラトンは文句が多いけど、仕事はきっちりこなすからいい。それより無口なゲーテが心配だ。あいつ、いつか部長に爆殺されるんじゃないか?

「だったら刑務所に帰るか? 刑期はあと332年だろ」
「くそっ! あそこで人質が顔を出さなきゃ、10年は減刑できたのに」

 今日の仕事はパーフェクトと思いきや、最後の最後に1人死なせてしまった。返り血を浴びたおれとプラトンは夜まで銃の手入れ。ゲーテは机で雑誌を読んでるが、話は聞いてるだろう。別室にいる部長も。

「考えても仕方ないさ」
「いいや、考えるべきだ。このペースじゃ寿命の方が先に尽きる」
 プラトンは食い下がる。しょうがねぇなぁ。

 おれ・ニーチェとプラトン、ゲーテの3人は凶悪犯罪者。刑期は300年以上もある。世界が終わるまで刑務所暮らしと思っていたが、「特攻刑事プログラム」が運命を変えた。
 特攻刑事はテロ専門の捜査機関。あまりに殉職者が多いので、政府は犯罪者に犯罪者を追わせることにした。犯罪者は犯罪に詳しいし、殉職しても問題にならない。適材適所ってわけだ。

 おれたちは爆弾入りの「首輪」を嵌められている。これで居場所も会話も筒抜け。おまけに部長は爆破スイッチから指を離さない。やれやれだ。まぁ、多少の不便は我慢するが、残りの刑期がデジタル表示されるのは勘弁してほしい。
 事件を解決すると、量刑に応じて減刑される。しかし器物を破損したり、死傷者が出るとペナルティがつく。下手すりゃ刑期が伸びるけど、刑期360年が370年になったところで、さしたる違いもない。

「ふむ、このまま死ぬとして、それは問題か?」
「おまえ......」
「こう言っちゃなんだが、おれたちは根っからの犯罪者だ。年老いて布団で死ぬことも期待してない。この首輪はうざいけど、見えない首輪よりマシだ」
「そう言われればそうだが......」
「ゲーテはどう思う?」
 プラトンが悩み出したので、話を振ってみた。返事は期待してなかったが、雑誌の向こうから声がした。

「特攻刑事の刑期が100年を切ると、昇進できるんだって」
「なんの話だ?」
「部長だよ、部長。襟から首輪が見えた。
 ぼくらが大ポカしたら、リアルに部長の首が飛ぶよ。たぶん局長も同じ」

 ゲーテは背伸びしながら言った。

「今の世の中、首輪をしてないのはテロリストだけかもね......」

(995文字)

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第97話:執行猶予の三悪人