哲学不況

2004年 政治・経済
哲学不況

『ニワトリを殺すな』という本がある。
この本の著者は、いまの日本を「哲学不況」と称している。
(仕事をしてどうなるのか、なにが楽しくて働くのか?)
そんな価値観の衰退が、不況の遠因であるというのだ。
──なるほどなぁ、と思う。

この数年で仕事はラクになった。
徹夜したり、奔走するような仕事は激減した。
その一方で、イヤ~な仕事は増えた。

無意味で、やる意義を見いだせない仕事。
そんな仕事は、たとえ簡単でも断りたくなる。仕事を片づけるより、断る努力をしたくなる。意地でもやるもんかと突っぱねる。強制されると、なんとか手を抜こう、失敗すればいいのに……とか考えてしまう。
こうなるともう、虚しいだけだ。

昔はよかった……なんて思いたくないッ!!
あれは地獄だった。心身ともにズタボロだった。
でも……確かに……充実感はあった。
無茶な仕事でも、「やってやるぜ!」という意気込みがあった。

(仕事をしてどうなるのか、なにが楽しくて働くのか?)

──世の中が変わったのか、自分が変わったのか。
考えなかったことを、考えるようになった。
アレコレ悩んで、自分なりの答えを見つけ出した。
だからもう、泣かない。うまくいかなくても悲観しない。
虚無にひたる夜も、たまにはあるけど、がんばっていける。

自分のことは、それでいい。
今の私は、関連する人たちのことも考えなければならない。
社内スタッフだけじゃない。クライアントや協力会社の人たちも、やはり「虚無症」に陥ることがある。

「この仕事をして、どうなるんですか?」
「仕事は仕事。意味も喜びも必要ありません。」

どう答えるか? どこまで踏み込むか?
どこまで放置(信頼)しておくのか?
──微妙な加減を要する。

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