窓から見える大樹が伐採された
2012年 生活アパートの敷地にある大樹が伐採されることになった。
伐採作業中は駐車場が出入りできなくなるため、必要な住人はよその駐車場を使うようにと、お知らせがまわってきた。
私はショックを受けた──。
とても立派な樹なのだ。春に芽吹き、夏に茂り、秋に枯れ、冬に雪を積もらせる。いつも見える位置にあるから、愛着がある。
伐採に反対したいが、私有地にある樹になにが言えるだろう? まぁ、言えたとしても、役所に陳情するような熱意はない。私の愛着なんて、そんなもんだ。私はただ、この窓から愛する樹が伐られていく様を見ているしかない。
クレーン車がやってきて、チェーンソーをもった職人が高く持ち上げられる。ギュイーン、ギュイイーン、ばさり、どさり……。耳障りな音がする。つらい。つらいなぁ。
3日後、作業が終わった。枝は伐採されたが、幹は残った。
伐採って、枝を落とす作業だったのか。よかった。
枝葉を失った大樹はなんとも寂しい佇まいだが、また長い時間をかけて元に戻るだろう。私はここに11年住んでいるが、こんな伐採作業を見たのは初めて。数十年サイクルで繰り返しているのか。とすれば、私は大樹の最盛期を見ていたのか。
とにかく残ってよかった。
私はなにもしていないが、ほっとした。