【ゆっくり文庫】クリスティ「パディントン発4時50分:原作に近い版」(うっかり文庫)

2021年 ゆっくり文庫 イギリス文学 クリスティ ミステリー
【ゆっくり文庫】クリスティ「パディントン発4時50分:原作に近い版」(うっかり文庫)
074x 原作ルーシーは強キャラ──

汽車から捨てられた死体は、クラッケンソープ家の屋敷に隠されている。ミス・マープルは推理したが、これ以上の調査は無理。ひとに頼るにしても、軽率な言動は危ない。そのとき、はっと大きな声が出た。「ルーシー・アイルズバロウよ!」

経緯

 動画で述べたとおり、teruさんのツイートがキッカケ。『パディントン発4時50分』を予習されたことも、煽り支援絵が投下されたことも驚き。teruさんが絵を描くとは思ってなかったし、また意を決して投稿されたことにも震えた。こんなことされて、黙っているわけにはいかないぜ。

制作

 ルーシーの登場シーンを、原作準拠でうっかり再現しよう。図書館から本を借りてきて、第4章第1節(P50-59)を台本にまとめた(私は本を所有しない)。
 簡潔にまとめたが、説明しているあいだの映像はどうしよう?

 キャラクターをどんと中央に置いて、背景を考える。大学、研究、黒板・・・新緑まぶしい屋敷になって、使う道具、作業風景・・・それからそれから・・・。
 出力された動画を見れば、なんでもないシーンだが、漆黒から思いつくのは大変だった。
 「Murder, She Said」のテーマ曲で、イメージを連想できた。音楽の効果は大きい。著作権フリーでない楽曲は使いたくないが、差し替えられなくなった。

パディントン発4時50分:原作に近い版
※説明パートはほんと悩む。

パディントン発4時50分:原作に近い版
※地味に背景を動かしている。私にしては珍しい演出。

配役

 ルーシーが八雲藍なら、ミス・マープルは八雲紫だろう。すでにサー・ヘンリー役をもらっているが、気にせずキャスティング。声色を変えたり、メイクもしない。基本表情もそのままだ。
 ちなみにマギリカディ夫人、甥のレイモンド、クラドック警部も配役したが、気が散ってしまうので登場させなかった。

マギリカディ夫人
甥のレイモンド
クラドック警部

パディントン発4時50分:原作に近い版
※セピア処理する前の画像。らんにメイドキャップは似合わなかった。

パディントン発4時50分:原作に近い版
※スイートピーを植えるためにきちんと畝を作っているのを、寝室の窓から見て、ほっと胸をなでおろし...

パディントン発4時50分:原作に近い版
※その種の行動に出るには、ミス・マープル本人の体が言うことをきかない。...協力者がぜひとも必要だった。

演出

 原作のマープルはルーシーと親しい間柄ではなく、当初は「アイルズバロウさん」と呼んでいた。ルーシーは聡明だが、犯罪者の行動予測は不慣れ。んが、同等の存在として描きたいので、テニスのラリーのような会話に仕上げた。「知的な会話」といってもホームズとモリアーティほど飛び抜けてはいけない。視聴者が状況と人柄、関係性を理解できるように心がける。
 しかし出力した動画を見ると、ゆからんコンビは危険に見えてきた。やりすぎたか?

パディントン発4時50分:原作に近い版
※50年代、ミステリーにあこがれる女子は多かったのだろうか。

ツリ目らん

 文庫版かぐやを発展させ、ツリ目のセットを作っている。『猫岳の猫』で披露したものをブラッシュアップさせた。まだ作ってないパーツがあるため、素材として公開できない。準備できたらツイッターで周知する。

ツリ目らん
※文庫式らん(作業中)

解説パート

 できあがった動画を文庫サーバで試写したが、「なんじゃこりゃ」と戸惑う人が多かった。みんな原作既読と思っていたが、そんなことはなかった。だとすると、解説パートをクッションにしたほうがいいだろう。というわけで、にゅんひさんの発言を盛り込んだ。
 原作既読の人の意見紹介や、「いろんな映像化作品があって、いろんなルーシーがいるよ」って話をしようと思っていたが、長くなるので見合わせた。

文庫とにゅんひ
※「コレジャナイ」「らしくない」と言われたのは、けっこうショックだった。

1961年の映画「夜行特急の殺人」
※1961年の映画「夜行特急の殺人」(Murder, She Said)はマープル(探偵)がマギリカディ夫人(目撃者)とルーシー(潜入調査員)を兼ねているのだが、マープル家のメイド・ルーシーが数秒だけ登場する。
「ルーシーがマープル家のメイド」という世界線もあるのだ。

雑記

 解説パートで感想をコメントする人が多い。本編視聴中はアレコレ言いにくいのだろう。「サイボーグ009」や「少女革命ウテナ」も、セルフ比較パートにコメントがついていた。文庫系動画には、コメントを受け付ける余白があったほうがいいのかもしれない。

ミス・マープルとルーシー
※ダブルキャスト:ミス・マープルとルーシー

 本編は二日で完成したが、解説パートに三日かかってしまった。息抜きとは言えない。やばい。

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