【ゆっくり文庫】ジム・ヘンソン「ウィルキンス・コーヒーCMいくつか」 Wilkins Coffee ADs (1957) by Jim Henson
2022年 ゆっくり文庫 アメリカ文学 ファンタジー 映画やテレビから
111 毒や刺激は娯楽の基本──
65年前に一世風靡した毒のあるCMを、饅頭再現しました。あわせてマペット、ジム・ヘンソンについてちょっと解説。オリジナルCMも添付。
経緯について

ジム・ヘンソン
(1936-1990)
「ゆっくり茶番劇」を作ろう! ぱっと閃いたのがウィルキンス・コーヒーCMだった。これぞ茶番。ちゃんと作れるだろうか? 仮組みしたら完成した。
しかし文庫サーバで聞いてみると、「ウィルキンス・コーヒー」どころか、ジム・ヘンソンも知られてなかった。パロディCM詰め合わせとして投稿してもチンプンカンプンだ。ジム・ヘンソンも知ってほしい人物である。
そこで解説パートと資料パートをつけることにした。
パロディCMは3日で作れたが、解説パートは3週間かかった。言葉がうまくつながらない。絞り出しても間や画像の調整で手間取る。解説パートは何度も作ってるのに、いっこうに上達しない。悔しい。
オリジナルCMは日本語字幕をつけ、パロディCMと比較してもらうつもりだったが、言い回しやタイミングのちがいがあるため、単体の英語字幕にした。このほうが原典とのちがいを確かめられるだろう。
制作について
人間なら眉をひそめるシーンも、饅頭ならポップに楽しめる。それでもウィルキンス・コーヒーCMの毒は強いため、キャスティングは難航した。で、動画で述べたとおりツイートをヒントに確定した。やってみると、これしかない、と思えた。
ゆっくり文庫作品の、チルノを殺す(役を演じている)魔理沙のギラついたかっこよさ好き。
— ハリハリ (@harimarin) April 25, 2022
饅頭劇を人形劇に置き換える上で、気をつけたことは3つ。
- 配置を揃える ... ウィルキンスとウォンキンスの位置、画面構成をなるったけ揃えた。飽きやすくなってしまうが、そのほうが【ゆっくり文庫】らしい。ウィルキンスがウィルキンスより高いのは、魔理沙とチルノの身長差のつもり。
- 表情を出さない ... 魔理沙はサングラスをかけ、より冷徹に。チルノは表情を変えず、人形らしくした。驚いたり困ったりを演出すると、一気に悲壮感が高まってしまった。
- 血を流さない ... 【ゆっくり文庫】はしょっちゅう血を流すけど、今回は控えた。やはり血はインパクトが強い。
※基本的な注意点
※チェンジマーク(Changeover mark/Cue mark)=手動で映写機を切り替える際に必要なマーク。
ハイパーコーヒー
代替物はなんでもよかったが、【ゆっくり文庫】でおなじみハイパーコーヒーにした。わざわざIllustratorでデザインを作っちゃったぜ。250ml缶1つで十分だったが、宣伝ショットが単調になっため増量した。
コメンタリー
12本は私が選び、並び替えたもの。放送順、制作順は関係しない。名称はジム・ヘンソン・カンパニー公認。
※字幕がほしいとの要望があったので掲載。
01. Cannon
まず基本形。
Cannon:
[Wil] Okay buddy, what do you think of Wilkins Coffee?
[Won] I never tasted it.
[Wil] Now what do you think of Wilkins Coffee?
02. Attention
ぺしゃんこチルノ。ここまで名前表示。
Attention
[Wil] We're here to persuade people to drink more Wilkins Coffee.
[Won] What's the club for?
[Wil] To get their attention.
03. Nowhere
仕事をしないタレントは不要、って意味なのかな?
Nowhere
[Wil] If you don't drink Wilkins Coffee, you're not all there!
[Won] Aw, that's a lot of-
[Wil] In fact, without Wilkins Coffee, you're nowhere!
04. Public Service Announcement
ここで「公共広告」というセンスはよくわからないが、そのままとした。
Public Service Announcement
[Wil] Care for a cup of Wilkins Coffee?
[Won] No, I don't like coffee. ...
[Wil] This has been a public service announcement.
05. Band Wagon
原典は楽隊車(バンドワゴン)だが、販売ワゴン車とした。魔理沙がよける動きを追加。1つずつ250ml缶を増やす演出を考えたが、CMの順序を何度も入れ替えたので、やめた。
Band Wagon
[Wil] You gettin' on the Wilkins Coffee bandwagon?
[Won] Never.
[Wil] You either go with Wilkins or you just don't go.
06. Airplane
ここからロケ地あり。『殺人処方箋』のスチュワーデス・スカーフを追加。飛行パートは落ちる距離を伸ばすため、カメラを引いた。空に影が落ちているのは背景が絵だから。
Airplane
[Wil] Have a cup of Wilkins Coffee sir?
[Won] If that's all you serve, I'll get off at the next town.
[Wil] Next town's five miles, straight down!
07. Jailhouse
最後のセリフは犯罪というまちがい、という意味をもたせた。
Jailhouse
[Wil] Why are you speeding?
[Won] I wanted a cup of coffee.
[Wil] Wilkins Coffee?
[Won] No, Just coffee.
[Won] Next Time I'll say Wilkins.
08. Guillotine
オリジナルのギロチンはお遊びだが、別饅頭が首チョンパされるように変更した。なかなか怖い。
Guillotine
[Wil] This machine will make you want a cup of Wilkins Coffee.
[Won] Not me. I'll-...
[Wil] Take mine with cream and sugar.
09. House is Not a Home
フレームバッファで画面拡大すると解像度が落ちたので、チルノがいる背景をショットに撮って、一枚絵として縮小した。
House is Not a Home
[Wil] Do you have any Wilkins Coffee in your house?
[Won] No.
[Wil] You know, a house is not a home without Wilkins Coffee.
10. Biplane
飛行機がかぶってしまうが、まぁ、いいか。画面回転もショットで対応している。
Biplane
[Won] I forgot my parachute.
[Wil] How about the Wilkins Coffee?
[Won] I forgot that too.
[Wil] You'll never forget this!
11. Did You Call?
せっかくだからコゲチルノ。素材の都合上、魔理沙は丘の向こうではなく、隠れ蓑から出現。原典では「好き」と言ってるが、「呼んだ?」につなぐため、「飲みたい」に変えた。
[Won] I wouldn't admit this if I wasn't alone, but... I really DO like Wilkins Coffee!
[Wil] Did you call?
[Won] (gasps in shock)
12. Just Kidding
オリジナルは銃撃されているようだが、やはり爆発オチで。ふたりとも被害を受けるのが好き。
Just Kidding
[Wil] I love these Wilkins Coffee commercials, don't you?
[Won] I'm tired of them.
[Won] Just kidding Mr.Wilkins!
解説パート
私はジム・ヘンソンや彼の作品に詳しいわけじゃないが、いろいろ調べた。事実誤認があったら連絡されたし。
解説パートはボリュームに悩む。調べたことを書き出せば際限ない。さりとて詰め込みすぎ、削り過ぎも意味がない。そもそも動画ですべてを学習できるはずがない。興味を持つキッカケになればいいわけだが、その匙加減がわからない。知らない人にヒアリングしても、「なにを知らなくていいか」わからない。
※資料を作るのは大変だが、画面に映るのは数秒。
今回の解説パートは下記の構成。「作り物で真実を描く」で人形劇と饅頭劇の通底するところを語りたかったけど、うまく言えなかった。
- 毒のあるCM ... 現代人は敏感すぎる。
- CMの成功 ... 躍進の取っ掛かり。
- ジム・ヘンソン - 夢見る人形使い ... その生涯。
- リアル≠心を感じる ... 作り物を楽しめるか。
- 作り物で真実を描く ... 人形劇と饅頭劇。
- 映画っていいものですよね ... おすすめ。
※筋之助さんに『ストーリーテラー』を紹介し、いろいろ話した。
解説パートに載せられなかった話
マペットとリップシンク
ジム・ヘンソンのマペットを見て、多くの人形使いが集まった。マペットは、「自分も操演してみたい」と思わせる魅力があるらしい。簡単そうに見えるが、リップシンクに多くのコツがあって、「心があるように見せる」のは修練が必要。
これもゆっくりに通じるところだなと思った。簡単そうに見えるが、作ってみると大変だ。
西洋人は口に、日本人は目から気持ちを読み取ろうとするらしい。アメリカで生まれたマペットは、目より口の表現がゆたか。演者の声と口パクを同期させられるところ、口まわりの表現が多彩なところが、マペットの特長らしい。
対して(日本人が好む)ゆっくりは──私が拡張したものはさらに──目の表情がゆたか。このあたりも解説したかったが、定量的な情報じゃないので見合わせた。
Jim Henson's Memorial
ジム・ヘンソンの死後、ニューヨークとロンドンで追悼式が行われた。どちらのイベントも一般公開されたが、テレビ放送されなかった。
唯一の規定は、黒(喪服)を着ないこと。ジャズバンドが演奏する中、100以上のマペットたちが歌って、騒いだ、カラフルな追悼式であった。
Overtime
2005年、フランスの学生が追悼動画「Overtime」を投稿した。ジム・ヘンソンとマペットを描いているが、非公式のため特定を避けている。
人形をオモチャにしてきた人形使いが、死後、人形たちのオモチャにされる。ブラックな内容だが、ジム・ヘンソンなら喜んでくれそうだ。
雑記
試作品が増えていく。
新素材の調整がうまくいかない。
泣きそう。