【ゆっくり文庫】森鴎外「高瀬舟」 Takasebune (1916) by Mori Ogai
2013年 ゆっくり文庫 ドラマ 日本文学 森鴎外010 腑に落ちぬ──
江戸時代。同心・庄兵衛は弟殺しの下手人・喜助を高瀬舟に乗せて護送する。喜助の顔は晴れやかだった。庄兵衛はそのわけを訊いてみた。
原作について
森鴎外
(1862-1922)
国語の教科書にも載った森鴎外の短編小説。テーマは「知足」か「安楽死」かで論争があったようですが、私が気になったのは庄兵衛の思考停止です。
せっかく喜助の話を聞いて我が身を省みたのに、答えが出ないと判断を上司にゆだねてしまった。腑に落ちぬものを、そのように誤魔化してはならない。そんな思いで翻案しました。原作の1分後まで描いたと思ってください。
大正5年。日本は恐れと欲望から帝国主義に狂奔していました。人々は自分の判断を、上にゆだねていたのでしょう。「高瀬舟」は、そうした世相への疑問が込められているのかもしれません。
動画制作について
文章では気にならないが、映像で独白がつづくと冗長になる。初稿では庄兵衛のセリフは倍ほどあったのに、映像にする段階でカットしまくった。安楽死について考えるとき、「おれも、母がいなくなればと考えたことがないわけではない」というモノローグも削除。作業も大変だが、心情的にもつらい。精進が足りぬ。
完璧とは、これ以上加えられないときではなく、
──アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ
これ以上削りとれないときに達成されるようだ。
金曜日に「ゆっくりMovieMaker」のバージョンアップがあって、キャラクターのフェードアウトや表情レイヤーでの口パク解釈が変わった。おかげで修正することになり、公開が土曜にずれ込んだ。べつに金曜にこだわる理由はないけどさ。
表情をつけたままフェードアウトさせたいので、切り出したキャラクターの画像を配置した。このあたり、「ゆっくりMovieMaker」の利用者しかわからない話かな。細かいところにこだわっても、視聴者が気づかなければ意味がない。しかし「ていねいな作り」とは、そういうものかもしれない。自分でもバカバカしいと思って、作業を止められない。
※死んだ妖夢
オブジェクトの移動がわかったので、月を動かしてみた。少しずつ表現力が上がってきていると思う。【ゆっくり文庫】のスタイルをもっと研究してみたい。
次はオスカー・ワイルドの「幸福な王子」をお届けする予定。