BEYOND: Two Souls (PS3) BEYOND: Two Souls
2013年 ゲーム 2ツ星 主人公は軍人 超能力未来を選択できないアドベンチャー
『HEAVY RAIN -心の軋むとき-』(2010)を制作したQuantic Dreamの最新作だから、グラフィックはすごい。感情移入させる仕掛けも洗練された。しかし終わってみれば一本道。監督の倫理観を押し付けられたようで萎えた。
ストーリー(時系列順に結末まで)
特殊能力をもって生まれたジョディ・ホームズの、8歳から21歳まで15年間の物語。
ジョディは「エイデン」という霊体とつながっていた。エイデンは眼に見えないが、不思議な能力と独立した意志をもっていた。ふたつの魂が見えない鎖でつながれているようなものだ。
エイデンはジョディに好意的だが、ジョディは特殊能力のせいで警戒されたり、恐れられることもあって、複雑な感情を抱いていた。ジョディの能力は政府の知るところとなり、研究機関に引き取られる。さらに軍事利用のためCIAで訓練を受けた。そうした中、ネイサン(科学者)やコール(助手)、ライアン(教官)と親しくなる。ジョディの能力は高く評価されるが、道具として使われることに反発し、脱走する。ホームレスとして各地をさまようが、政府に見つかり、自由と引き換えに潜入ミッションを引き受ける。
ジョディは任務に成功するが、政府高官は約束を破ってジョディを拘束。時を同じくしてネイサンがインフラワールドを暴走させる。救出されたジョディはライアン、コールの協力を得てこれを封じるが、重症を負う。近い将来、5度目のゲートが開いたとき、世界は滅びる。
- 07歳 My Imaginary Friend... ... 友達ができず、父親に疎まれる。
- 07歳 First Interview ... ネイサンがジョディの力を知る。
- 08歳 Alone ... 両親と別れ、研究所に引き取られる。
- 08歳 The Experiment ... 実験で悪ふざけ。
- 08歳 First Night ... モンスターに襲われる。
- 09歳 Night Session ... ネイサンの妻子が事故死する。
- 09歳 Hauntings ... ネイサンの妻子の霊を呼び寄せる。
- 14歳 The Party ... パーティで友人たちを恐怖させる。
- 16歳 Like Other Girls ... バーで乱闘、死者が出る。
- 17歳 The Condenser ... コンデンサーが暴走する。
- 18歳 Separation ... CIAへ所属替え。
- 18歳 Welcome to the CIA ... エージェントとして訓練を受ける。
- 19歳 The Embassy ... 大使館での情報収集ミッション。
- 21歳 The Mission ... 亡国にて暗殺ミッション。
- 21歳 Hunted ... CIAから脱走する。
- 22歳 Broken ... 逃亡中に警官に保護される。
- 21歳 Homeless ... ホームレスとして生活する。
- 22歳 Navajo ... インフラワールドの脅威を知る。
- 20歳 The Dinner ... ライアンと夕食を食べる。
- 24歳 Old Friends ... コールと再会する。
- 24歳 Norah ... 母親と再会する。
- 24歳 Briefing ... 政府と取引して潜入工作を引き受ける。
- 24歳 Dragon's Hideout ... エイデンと切断されるが、基地を破壊する。
- 24歳 Black Sun ... ネイサンがインフラワールドを暴走させる。
不満1.ジョディを操作したくない
エイデンとジョディを交互に操作すると、どっちにも感情移入できなくなる。エイデンのみ操作して、ジョディはAI制御にしてほしかった。物語の主人公はジョディだが、プレイヤーと主人公が同一でなくていい。むしろその方がジョディの人生を客観的に楽しめたはず。
不満2.選択が未来を左右しない
マルチエンディングだが、リンゴとミカンはどっちが好きくらいの差しかなかった。どうしようと破滅的未来を変えられないのはやるせない。せっかく超能力を題材にしているのだから、使い方で分岐してほしかった。
- A.能力を使いすぎる
- A1.生き残り、欲しいものを手にする。
- A2.恐怖心が芽生え、裏切られる。
- B.能力を使わなすぎる
- B1.パワーが足りず、大切な人を失う。
- B2.知り合った人たちに支えられる。
たとえば、コールに憑依すると、拭いがたい恐怖を植え付けることになる。表面上は親しく振る舞うが、最後の最後で裏切られる。このくらいの変化があっていいはず。
それからエイデンが別人格なのだから、ふたりの信頼関係で分岐させてもいい。たとえば抑制フィールドでエイデンを切り離せるとしたら? エイデンがいなければジョディは自由になるが、エージェントとしての価値はなくなる。切るかどうかはジョディの判断だから、プレイヤー(エイデン)はそれでも彼女を救う(つきまとう)か、捨てる(身を引く)か選ぶことになる。
場面によって意味が変わるから、エンディングの種類も増えそうだ。
不満3.キャラクターが安っぽい
キャラクターの思考が直線的でつまらない。
- ライアン - 甘っちょろいエージェント
ライアンは本気でジョディを愛していたようだが、CIAの訓練指揮官なんだから実利で考えるべき。互いに利用することが当然で、善悪や真実は二の次という現実を示してほしかった。
- ネイサン - 純朴な科学者
ネイサンも底意がないことに驚く。ジョディはネイサンを独占するため妻子の死を願ったとか、ネイサンはジョディを死んだ娘の代用品として見ているとか、そんな暗黒面を見たかった。
- ホームレス - 理想的な人物ばかり
ホームレスが善良なのも拍子抜けだ。わずかな金のために仲間を裏切ったり、教養が足りないことでピンチになるなど、マイナス面も描いてほしい。貧しいものが清らかな心をもち、政府高官が狡猾なのは、幼稚すぎる。 ラスト、ホームレスたちはテレビを見てたけど、あれを社会復帰と言うのだろうか?
- ナバホ族 - なんのため出した?
まったく不要。
- 政府 - 知能が低い
超能力を軍事活用するのは当然だが、同じような能力者が見つかっておらず、制御できないのに実戦投入するのは不可解だ。裏切り防止のため、リモコン爆弾を埋め込むくらいの知恵はほしかった。インフラワールドに執着する理由もわからない。核開発競争になぞらえ、「アメリカが開発しなければ他国に出し抜かれる」くらいの説明はあるべき。
まとめ
『BEYOND: Two Souls』はアクションよりストーリー重視のゲームである。わざわざチキンカレーを調理することで没入感を高めているが、なにを選択しても未来が変わらないので萎える。『Heavy Rain』と同じで、一周目はおもしろいが、二周目以降はつらい。何度も遊んで、いろんな人生を見せてほしかった。
初見のインパクトは強いが、それだけ。数年経てば忘れてしまうだろう。