マイ・エレメント Elemental

2023年 外国映画 2ツ星 主人公は人間外 恋愛 @ピクサー @ピクサー長編アニメ

これがピクサー?

ウェイドは自分の調査そっちのけで、ルールだからと「ファイアプレイス」を営業停止にした。そのくせ「申し訳なかった」とわんわん泣いて、上司から特別対応を引き出した。そんなウェイドの愛を、どうして信じられる? エンバーへの愛がウソってことはないが、街を歩くだけでホイホイ真実の愛を見つけるだろう。そしてそのたび彼は、家族も仕事も妻子も、自分の命さえも、ホイホイ捨ててしまうだろう。

ウェイドがエンバーに、自分の夢を優先しろ、家族は譲歩して当然、と言ったときは腹が立った。そして映画は、彼の言うとおりになった。仕方なく家業を継いだ人は多いが、それを不幸なこと、愚かなこと、古いこと、未開なことと断じるのか。先人たちが責任を果たしてくれたことで、いまの豊かさがあるのに。もちろん、子どもは親が望んだ通りの人生を歩むべきとは思わない。それは部族ごと、家族ごと、個人ごとの事情があるだろう。ウェイドは、そうした事情を想像する力がない。そして映画の制作者にもない。それがなんとも悲しい。

映画のラスト、エンバーは父に最上級のお辞儀をする。父は返礼する。
父が返礼せず、祖父が自分に対して、「いつ帰ってきてもよい」と思っていたと気づいたなら、うまくまとまったのに。
これじゃ祖父に愛がなかったことになる。

なんというか、伝統を大切にしない映画だった。

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