シンデレラ (実写版) Cinderella

4ツ星

わかりあえない人たちがいる。

勇気と優しさを諭す母親。再婚の許しを得る父親。前半のいじめパートは見ていてつらい。歳を取ると、ストレス映像は見たくない。これほど有名な物語なら、下積み時代はもっと省略できるんじゃないか。

舞踏会が終わり、継母がガラスの靴を見つけたところで、ぐぐっと身を乗り出した。継母のストーリーが語られる。当人は悪いことをしているつもりはなく、被害者であり、懸命に生きてるつもりか。同情できないが、人物像に奥行きができた。世の中には、こういう対話不能な人間がいる。
継母が持ちかけた取引（支配）を、シンデレラは拒否する。継母は大公と組んで安泰を図る。そっか、王子様との結婚は手段であって目的じゃなかった。

シンデレラは運命を受け入れる。歌ったのも、自己主張ではない。それでいいのか？　しかし足りない分は、王子から歩み寄った。大公の行動を予見していたのか。いいじゃない。

継母はいいひとになるチャンスがあったけど、決裂した。それでもシンデレラは許した。甘チャンと思ったが、攻撃しないだけで、継母たちは視界から消えた。これでいい。「人間の言葉を話す怪物」に関わってはいけない。しかし放置もよくない。消えてもらう。最高のエンディングだと思った。

ナレーションの語りがおもしろい。しかし物語の重要人物（フェアリー・ゴッドマザー）とわかって、ちょっと混乱した。老婆として登場し、美しく変身し、後半はまったく出てこない。最後にもうちょい辛辣な意見を聞きたかった。

12時の鐘で鳴って、城から逃げ出すシーンのカメラワークに興奮した。、少しずつ魔法が解けていくのも新しい。劇的な転換点だった。

シンデレラと国王、国王と王子の交流もよかった。「愛のために結婚しろ」　大切に思っていても、すれちがい、それでも間に合った。震えてしまった。

舞踏会で起こったことを、継母と娘たちは歪曲して話す。数時間で、あれが彼女たちの事実になるんだろうな。なんというか、救いようがない。

シンデレラの声は、前半は物足りないと感じていた。アニメ映画の強さを感じなかった。しかし後半で盛り返し、これでよいと思えた。