【ゆっくり文庫】有島武郎「一房の葡萄」 A Bunch of Grape (1920) by Arishima Takeo

2014年 ゆっくり文庫 ドラマ 日本文学
【ゆっくり文庫】有島武郎「一房の葡萄」
012 先生が教えてくれたこと──

子どものころ、ぼくは内向的で、絵ばかり描いていた。手持ちの絵の具ではどうしても出せない色があって、クラスメートが持つ舶来品の絵の具がほしかった。

原作について

有島武郎

有島武郎
(1878-1923)

 あらためて読み返すと、主人公が先生を好いてる理由が気になった。
 先生がきれいだから? ぼくの罪をかばってくれたから?

 先生は主人公のいない教室で、なにかを教えたはず。だからジムの態度は変わったし、クラスのみんなも変わった。どんな授業をしたのだろう?

 生徒たちはクラスメートの盗みに興味津々だった。処罰という見世物を期待していたはず。それをなだめ、赦すことの大切さを説いたと思うと、身震いしてしまった。先生と生徒のあいだに深い絆がなければできないことだ。半端な先生がやったら、
「先生はえこひいきしてまーす!」
「先生の命令なら従いまーす!!」
 と言われるだろうな。
 主人公が泣き疲れて寝ているあいだに、奇跡の授業が行われていたのか。

 どんな授業だったか想像してみたが、ストーリーに組み込むのはヤボだった。妄想した授業風景は全カットして、主人公に与えた影響を考えてみる。主人公は赦された。またクラスメートから、赦すことの尊さも教わった。なので、だれかを赦すラストを書いてみたが、どうにもちがう。

 先生は、生徒に赦すことの尊さを教えたところがすごいんだ。
 赦すこと、赦されること。そして、赦す機会を与えること。
 そうそうできることじゃない。

 ラスト、主人公の部屋を訪ねてきたのは生徒かもしれないし、部下かもしれないし、自分の子供かもしれない。状況はわからないが、主人公は手応えを感じているようだ。笑顔がすがすがしい。内気で友だちのいなかった主人公が、先生の教えを伝えることができたとすれば、これほど嬉しいことはない。

 とまぁ、例によってイメージをふくらませた翻案になったが、いかがだろうか。

動画制作について

 配役の話。
 最初は主人公が魔理沙で、先生が霊夢だった。しかし主人公は日本人なので、黒髪の霊夢の方が似合った。霊夢は『葉桜』『黒猫』『文鳥』につづき、4本目の主演作になる。成長した霊夢は、『葉桜』では同じグラフィックだったけど、きつねさんが「リメイクれいむ」を作っていたので使ってみた。先生と同じメガネをかけると、大人っぽくなった。「成長した霊夢」という設定ではないが、ぴったりハマった。
 ちなみに2つ目の葡萄をもらうとき、霊夢は魔理沙の表情をまねている。尊敬できる先生と出会えたことは、幸福なことだ。
 魔理沙にメガネをかけると、びっくりするほど素敵になった。目パチから一番開いたコマを削除して、目を細めたような表情を作ってみた。魔理沙は名女優だなぁと感心する。


※まりさ先生


※成長したれいむ

 きめぇ丸はいつも悪役や小物を演じてもらっているが、今回はジムに抜擢した。きめぇ丸に見下され、赦されるなんてムカつくが、だからこそおもしろいと考えた。
 よくできる子は当初、西行寺幽々子だったが、イメージが合わなかったため八雲紫に差し替えた。それでもインパクトが足りなかったので「リメイクゆかり」に出演していただいた。1人だけスケールが違うけど、それがまたいい感じ。
 取り巻きが欲しかったので、レミリアを出す。役柄的にはフランだけど、声が合わない。レミリアも出演回数が多いキャラクターだ。

 今回は鮮烈さを出すため、写真を加工せずに使った。私が背景写真を加工するのは、背景を目立たせたくないからだ。物語に合わない写真もあるしね。あざやかになったが、画質が悪くなったような気がする。40MBの制限ではやむなしか。

 さて次回は、アンブローズ・ビアスの「アウル・クリーク橋での出来事」をお送りする予定。

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