創作  2014年05月09日(金)に書いた ゆっくり文庫

【ゆっくり文庫】小泉八雲「生き神様」

【ゆっくり文庫】小泉八雲「生き神様」

私たちはタダであり、五兵衛なんだ──

*** コメント待ってます ***

原作について

 最初は、稲むらに火をつける覚悟を描きたいと思った。津波が来なかったり、被害が小さければ、愚かな自滅になる。津波が見えてから判断したいが、それじゃ間に合わない。人間が災害を出し抜くには、狂気に踏み込むしかない。であればこそ、神として祀られるのも納得できる。

 しかし事実を調べてガッカリした。儀兵衛は津波の発生後、収穫済みの稲むらに火をつけていた。また神社に誘導したのであって、彼を祀る神社はなかった。迅速な避難に役立ったとはいえ、物語ほどの興奮はない。こりゃ、しょぼい動画になると思った。

小泉八雲「生き神様」
※魔理沙が演じる小泉セツもいいね

 ところが、さらに調べると印象が変わった。儀兵衛が藩に掛けあって年貢を免除してもらい、私財を投じて広村堤防を築いたことで、住民の離散が食い止められた。ただお金を配るのではなく、みんなで復興することで、郷土愛が増した。これは学ぶべきところが多い。

 儀兵衛はたしかに稲むら(=財産)に火をつけていた。そして人々に深く、長く感謝される偉業を成し遂げていた。

 しかし一連の動きは複雑で、人に伝えにくい。そこで簡潔な物語にして語り継がれたのだろう。
 小泉八雲は、存命中の人物に神格を与えることに驚いていたが、あながち間違ってはいない。これは神話の卵だった。

小泉八雲「生き神様」
※ネットで調べると震源地もわかる

小泉八雲がつないでくれた

 小泉八雲が「A Living God」を書いたとき(1896)、中井常蔵が「稲むらの火」を書いたとき(1937)、昭和南海地震(1946)は起こっておらず、広村堤防の効果は証明されていなかった。具体的な証拠がないまま語り継がれてきた物語は、具体的な証拠を得たとたん、忘れ去られてしまう。なんと皮肉なことだ。

小泉八雲「生き神様」
※地震被害を食い止めたことで物語が生まれたわけじゃない。逆だ。

 過去と現在をつないだがの西洋人・小泉八雲というのも感慨深い。いま私たちが先祖の活躍に感心できるのは、八雲が発掘して、海外に伝えてくれたからだ。
 中井常蔵が儀兵衛が建てた学校で学んでいたこと、「稲むらの火」がアメリカの学校でも読まれていたこと、教科書に復活したのが東日本大震災の翌月であることなど、調べれば調べるほど言いようのない気持ちになった。

 後の世に伝えることがいかに難しく、いかに大切であるか。

 【ゆっくり文庫】では、物語より「物語を語り継ぐ物語」をクローズアップすることにした。なので物語パートは簡潔に、解説パートをいつもより長めにしたが、どちらも物足りない。動画を2つに分けたほうがよかったか? 思いが大きくなりすぎて、うまく出力できなかった気がする。

 何度もチェックしたが、掲載情報に誤りや思い違いがあるかもしれない。指摘があれば修正したい。

  事実 「生き神様」
主人公 儀兵衛 35歳 五兵衛 老人
浜口家の住居 低地の集落 高台
村の宵祭 なし あり
村人 1,323人 400人
地震の揺れ 激震 長くゆっくりした揺れ
稲むら 脱穀後 脱穀前で全財産
火を放った理由 津波襲来後、安全な場所に誘導するため 津波襲来を知らせるため
それから 紀州藩と掛け合って年貢を免除してもらう、広村堤防を築く、耐久舎を開設するなど功績多数 神として祀られた

動画制作について

 物語パートは簡単だったが、解説パートは手こずった。脚本のまま作ると冗長になってしまうのだ。文章だけでは飽きるし、頭に入ってこない。しかし情報を盛りすぎると理解が追いつかない。使える素材もかぎられているから、けっこう苦労した。おかげで公開が1日ずれてしまった。

 受け継がれていくことを表現するため、タダ(ようむ)を大人にする演出がほしくなり、五兵衛(こーりん)のメガネをかけさせた。何度も使った演出であざといが、ほかに妙案もない。今後の作品は、どこかで見た演出が繰り返されることになるだろうな。


凝視

凝視

メガネ

 さて、次の脚本を考えよう。

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