子どもは禁止したものに染まる
2012年 生活 Webサービス 教育 甥っ子甥っ子がYouTubeに夢中になっている。
私が母のために買ったiPadは、もっぱら甥っ子の遊び道具になってしまった。それはかまわないが、甥っ子はたっぷりインストールした無料アプリより、YouTubeに傾倒していった。
(子どもにYouTubeなんて使えっこない)と思っていたが、そうではない。
- 1本あたりの再生時間が短いから集中力が途切れない。
- キーボードを使わず、関連動画のタップだけで巡回できる。
- CMで途切れたり、意味不明なトークにわずらわされない。
考えてみれば、子どもが夢中になるのも無理はなかった。
しかし甥っ子の母──つまり私の妹は不機嫌だった。
- YouTubeには過激な動画、下品な動画、わいせつな動画が含まれる。
- 終わりがないから、いつまでも見つづけてしまう。
- クライマックスだけ切り貼りしてあるから、集中力が身につかない。
食事に呼んでも、歯磨きを命じてもiPadにかじりつく子どもに、母の怒りが爆発した。YouTubeの視聴制限ではなく、動画アプリはすべて削除されることになった。
3ヶ月後の解禁
ところが3ヶ月後、妹は動画アプリを解禁することになる。甥っ子がすなおになったわけじゃない。動画アプリを使わず、ブラウザでYouTubeを閲覧する方法を見つけてしまったからだ。誰も教えてないのに、「こうすれば動画が見られる」と発見したようだ。
Safariを禁じても、アプリからブラウザ機能を呼び出すこともできる。すべてのルートを禁じるなら、iPadをネットから切り離すことになる。それはナンセンスだ。
禁止されるほど夢中になる
ふと思い出した。私は子どものころ、特撮やアニメをほとんど見られなかった。チャンネル権がなかったからだ。ウルトラマンの再放送を見られないハンデは、私の小学校ライフを厳しいものにした。禁止されたことで、私の興味は高まった。まれにテレビに映れば、セリフをおぼえるほど集中して見た。友だちの家でオモチャを見つけたら、どんな活躍をするのか想像した。本屋があれば立ち読みして、足りない情報を補完した。
気がつくと、私はオタクになっていた。子どものころから潤沢にテレビを見て、こうなったわけじゃない。むしろ、たくさんテレビを見て、たくさんオモチャを買った友人は、興味をなくし、ふつうの大人になっている。
こんな話もある──。
犯罪史上に残る殺人鬼のほとんどは、親によって性的な興味を戒められていたそうだ。はしたない女への嫌悪感が、彼らを残虐な連続殺人に走らせたのだ。
禁止せずに導けるか
世の中、子どもに見せたくないものは山ほどあるが、うまく禁止しないと、かえって傾倒させてしまう。甥っ子は、刺激的な動画を見ているわけじゃないし、見ようともしない。このまま解禁する方がいいだろう。
もちろん、問題はこれからだ。遊びにかまけて宿題や家事をおろそかにさせてはならない。それに、どんどん情報を仕入れていくから、よからぬ知恵を身につけ、言うことを聞かなくなるのも時間の問題だろう。しかしまぁ......それは次の話か。