魔女の宅急便 (実写映画) Kiki's Delivery Service

2014年 日本映画 1ツ星 ファンタジー 主人公は子ども 魔法少女

ぶっちゃけ、鑑賞後は気分が悪くなった

アニメ映画が好評だった作品を実写化すれば、どうしたって比較される。そして比較すると、アニメ映画の素晴らしさを再確認する出来栄えだった。キキ(小芝風花)が13歳じゃないとか、箒で飛ぶシーンに興奮がないといった不満もあるが、なにより演出が弱かった。プロットを整理しよう。

宮崎駿「魔女の宅急便」における気持ちの変化
イベント気持ち
キキは、子ども特有の全能感にあふれたまま家を出る。★★★★★
到着後は不安だったが、仕事を成功させて安心する。★★★★
仕事や人間関係でつまづく。
さらに魔力を喪失し、塞ぎこむ。
人間としてのキキを認められて、元気を取り戻す。
どうしても魔力が必要な場面に遭遇し、がむしゃらに頑張る。★★
仕事と気持ちが安定し、前向きになる。★★★

実写版は登場人物やイベントは多いが、プロットが未消化なのだ。最初の仕事でいやな思いをするから、キキの愛らしさが描けない。その後も生活の苦労、仕事の喜び、人々のつながりが皆無。さらに「呪いのうわさ」で否定され、陰鬱な気分がつづく。さして親しくないトンボが慰められて復帰。キキがカバを運搬すると、それだけで歌手は歌い出し、町の人は手のひらを返したようにキキを絶賛する。
薄っぺらいというか、気持ち悪い連中だ。

「呪いのうわさ」は魔女一族への嫌悪感だから、少女キキには荷が重すぎる。島民が差別意識を克服したとも思えない。せめて「呪いのうわさ」を広めた少女、キキを罵倒した係員、キキが運んだ品物を捨てた連中が、キキと向き合うシーンがほしかった。

魔女が13歳(16歳)で知らない町で一年間働く風習は、魔女が自分の限界を知って、人々と助け合うことの大切さを学ぶためだろう。でないと万能感、優越感を抱いたまま、傲慢な魔女(大人)になってしまうから。そうした視点で見ると、実写版キキが成長できたか疑問だ。たとえばクレジット後のナレーションはこう語る。

キキはすっかり忘れていましたが、この町に着て、もうすぐ一年が経とうとしていました。

人生、そんなに好転するものだろうか? うがった見方をすれば、島民は罪悪感からキキを厚遇してるかもしれない。
ちなみにアニメ映画のラストでは、両親への手紙でこう綴っている。

落ち込むこともあるけれど、私、この町が好きです。

楽しい日々に浮かれる実写版キキには、あまり成長が感じられない。人と人のつながりを描く映画でありながら、人と人の交流を描けてなかった。
ぶっちゃけ、アニメ映画のよさを再確認する実写化だった。

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