2001年宇宙の旅 2001: A Space Odyssey

1968年 外国映画 5ツ星 SF SF:ファーストコンタクト 地球外生命 宇宙開発 電脳

わからないを描いている。

初視聴は1981年(当時10歳)のテレビ放送だが、まるで理解できなかった。寝てたのか、気を失っていたのか。「もっぺん、ちゃんと見たほうがいいな」と思いつつ、歳月は流れた。いろいろ情報を耳にした。映画史に残る傑作、きわめて難解、ひたすら情景ばかり、わざとナレーションを省いた、驚異的なリアリティ、科学的な神を描こうとした...うんぬん。
2021年、友人に叱咤されて再視聴。やー、すごかった。私の理解を述べておく。キューブリックやクラークの見解と異なるところがあっても、それはそれ。

私が理解した『2001年宇宙の旅』
人類の夜明け(THE DAWN OF MAN)

400万年前、モノリス(TMA・0)がサルを進化させた。サルは道具を使い、肉食をおぼえ、同族に武器をふるい、万物の霊長となり、宇宙に進出するほど発達したが、ミサイル衛星によって自滅する恐れも作ってしまった。モノリスは「神」のごとき存在だが、必ずしも善ではない。なぜサルを進化させたのか?
※米ソ冷戦がつづく未来だが、そのへんの説明もない。映画だけで状況を理解するのは無理。

1999年、アメリカは月面でモノリス(TMA・1)を発見した。400万年前に埋められた人工物で、地球外生命が存在する証拠だ。太陽光を浴びたモノリスは、木星に向けて強烈な電波を発した。モノリスは月面に到達した人類に、次の道標を知らせる装置だった。
※現代人はモノリスが進化を促したことを知らない。最初のモノリスはどこへ行ったのか? 進化に関する疑問を話していれば、わかりやすいのに。

木星使節(JUPITER MISSION)

2001年、宇宙船ディスカバリー号が木星に派遣された。道中、人工知能「HAL」が反逆し、乗員を殺害した。唯一生き残ったボーマン船長はHALを停止させた。
※HALはモノリスの影響で進化したと思っていたが、そうではないようだ。HALの反逆がモノリスに関係しないのは納得しづらい。

木星 そして無限の宇宙の彼方へ(JUPITER AND BEYOND THE INFINITE)

木星の衛星に到着したボーマン船長は、巨大なモノリス(TMA・2)を発見。接近すると異次元に吸い込まれ、時間が交錯し、赤ん坊(スターチャイルド)に還元された。「神」の意図はわからない。
※意味不明な結末だが、なにかがいるってのは、希望になると思う。人類は地表で互いに銃口を突きつけている場合じゃない。次の段階に進もう。目指す地平ができたのだから。壮大な音楽のせいか、映画の外で仕入れた情報のせいか、そのように受け取った。

まーーー、わけがわからん映画だね!

「こんな映画をありがたがって、アレコレ解説するのは、映画ツウを気取った衒学趣味!」と言われても仕方ない。しかし映画好き、物語好きなら、「なぜ評価されたのか?」「どこが不満なのか?」考えてみるのも一興だろう
そして考えたら話したくなる。話すことで整理され、意見をもらうことでより深みへ行ける。

『2001年宇宙の旅』は、地球外生命との接触(ファースト・コンタクト)を描いた映画であるが、宇宙人は姿を見せない。意図もわからない。だからカタルシスに欠けるのだが、神とか宇宙人がわかりやすい姿をしているはずがない。「想像を絶した存在を描く」ことが目的なら、本作を見て「わけがわからない」と思うのは当然であり、成功なのだ。

とはいえ、ただの意味不明じゃ駄目だ。科学的に正確な宇宙飛行の描写が、見えないところを考えさせる。ナレーションがないことで、人間が知り得る範囲の狭さがきわだつ。不安感、緊張感、孤立感が刺激される。

しかしながら「その匙加減が絶妙だ! 素晴らしい!」とは思っていない。いくらなんでも冗長だ。これじゃ多くの人にテーマが伝わらないから駄目! と言いたいが、多くのクリエイターに届いたことは明白。公開から半世紀が過ぎて、『2001年宇宙の旅』の影響が伺える映画、小説、漫画、アニメはじつに多い。今あらためて映画を見直して、「ここがイメージソースだったのか」と驚いた。パズルの中央が埋まった気がする。

エポックを画する作品は、フォロワーの中に埋もれていく。なにも知らずに見たら、アリキタリの映像表現を思うかもしれない。なぜなら本作を参考にした、よりよい作品がたくさんあるから。私もリアルタイムで見たわけじゃないが、本作の以前と以後で変わったことはわかる。

はてさて問題が多い本作だが、ナレーションをつけ、テンポよく編集し、人物描写を新しく追加したら、もっと高く評価されただろうか? 私はそう思わない。続編の『2010』は格段にわかりやすいが、本作ほどインパクトはなかった。不思議なものだ。

『2001年宇宙の旅』は、わからない。
わからないことを描いているから。
でも、見ておいたほうがいい。

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