迷宮物語 Manie-Manie Neo Tokyo (Labyrinth Tales | Manie-Manie)

1987年 アニメ 3ツ星 SF ★妄想リメイク ロボット:自律型 狂気

わけがわからないが、見てソンはない

全3話からなるオムニバスアニメ。タイトルが示すように、わけのわからないエピソードばかり集めている。いちおう眉村卓の小説が原作らしいが、どの監督も好き勝手にイメージをふくらませている。監督の作家性がいかんなく発揮されているため、アニメファンなら見てソンはないだろう。

ラビリンス*ラビリントス (りんたろう監督)

『迷宮物件』を象徴/包括するエピソード。以下2つは少女さちが見た映画(劇中劇)ということになっているが、だからどうしたと言うほど関連性はない。不条理描写がすまじく、不安感を駆り立てる。さちはどこに迷い込んでしまったのか? これは罰なのか、願望なのか? 結局、さちは家に帰ってこない。しめくくりの言葉は「Welcome!」。わけがわからないが、すごい。圧倒された。

走る男 (川尻善昭監督)

押井守の代役としてアサインされたそうだが、川尻監督のために用意されたエピソードのようだ。しかし映像技術が足りないせいか、今ひとつキレがないまま終わってしまう。この方向性は、『アニマトリックス』(2003)の「ワールド・レコード World Record」において結実する。本作はプロトタイプのようだ。

工事中止命令 (大友克洋監督)

大友克洋が原作漫画も描いていそうなエピソード。出っ歯で小男でワーカホリックの杉岡が時代を感じさせる。声だけの部長(家弓家正)も雰囲気がいい。3本でもっとも興奮するが、オチが描かれる前に終わってしまう。そりゃないよ。

「工事中止命令」の中途半端さが気になったので、自分なりにオチを考えてみた。

妄想リメイク
着任

 杉岡勉は日本の建築会社の若い社員。部長の名を受け、ジャングル奥地で進められる444号工事現場にやってきた。ここにダムを築くため、莫大な費用を投じて工事が進められてきたが、政変によって契約が破棄されてしまった。これ以上の損失を出さぬよう工事を中止したいが、なぜか現場の責任者と連絡がとれなくなっていた。
 近ごろの建築工事はすべてロボットがやっている。人間は、責任者が1名派遣されるだけ。つまり現在、444号計画現場は無人で稼働しているのだった。

のらりくらり

「スベテ正常に稼働時中デス」
 川をさかのぼって現場に到着すると、管理ロボットが出迎えた。さっそく杉岡は中止を命じるが、ロボットはのらりくらりと返答を保留する。
「どの工事ですか?」「すべてだ」「発電所の冷却を止めると暴走しますが、よろしいですか?」「そういうシステム維持をのぞいて、すべて中止だ」「範囲指定があいまいです。現場を視察して、計画を把握してください」「なにを言ってるんだ」「本日はお疲れさまでした。お部屋でお休みください」「おい開けろ」「明日の朝、お迎えに上がります」

視察

 翌朝から視察がはじまった。工事現場は広大で、途方もないエネルギーと資材が消費されていた。ジャングルの生命力がすさまじく、わずかな隙間から緑があふれだし、建造物を侵食していくのだ。
 よく見ると、建築ロボットが次々に壊れている。工期を守るため、限界を越えた可動を強いられているのだ。杉岡はすぐ止めろと言うが、管理ロボットはいうことを聞かない。杉岡は強引に建築ロボットを止めるが、すると穴から水が溢れだし、その区画が水没してしまった。

狂気

 管理ロボットは杉岡を妨害要因とみなし、所長室に閉じ込めた。窓の外で工事がつづけられている。無理な工事でロボットがオーバーヒートして、そこからジャングルが押し寄せてくる。杉岡はノイローゼになった。
 所長室の壁に、前任者のものとおぼしきメッセージが残されていた。
「狂ってる。殺される。助けて。」

反撃

 杉岡は管理ロボットを破壊して脱出する。しかし工事は止まらない。杉岡は警備ロボットを蹴散らして、管理棟のドアや橋を破壊して、中央演算室に突入した。片っ端からサーバを破壊していく。
「人間の方がエライんだ。中止と言ったら中止なんだぁ!」
 コンピュータが映像記録を投影した。そこには前任者と本社のヤリトリが記録されていた。仕様の変更、工期の変更、進捗の確認、いい加減な調達情報、そして担当者の入れ替わり。本社の指示はいい加減で、前任者はおかしくなっていた。

「本社の連中は狂ってる。殺される。助けて。」

 前任者はコンピュータをハッキングして、工事の完遂を絶対命令する。妨害する要因はすべて排除すべし。強固な命令なので本人にしか解除できないが、前任者はすでに首を吊っていた。

中止命令

 狂っていたのはロボットじゃない。しかし中止は中止だ。コンピュータは工期の遅れを挽回するため、発電所を暴走させ、川の流れを変えると言い出した。川がなくなれば必要なダムのサイズも小さくなるから、工期を守れる。
「どれほどの損害が出ると思ってるんだ!」
 杉岡はいのちがけでコンピュータを止めた。そのとき、本社から連絡が入った。
「新政府が樹立されたので、工事を続行すべし。中止は中止だ」
 おかしくなった杉岡は、発電所を爆破した。444号工事現場は崩壊し、土石流に流されていった。

後日談

 445号工事現場に、またべつの若い社員が着任する。状況がわからないまま送り込まれたようだ。管理ロボットが状況報告する。
「スベテ順調デス」

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