2010年 2010: The Year We Make Contact

1984年 外国映画 4ツ星 SF SF:ファーストコンタクト 地球外生命 宇宙開発 電脳

わかりやすいが、スゴくない。

『2001年宇宙の旅』から16年後に作られた続編。前作でなにがあったか、これからなにをするか、だれがどう感じているか、どうなったか、なにもかもわかりやすい。

おもしろいはおもしろい。ふつうのSF映画として、じゅうぶん楽しめる。しかし『2001年宇宙の旅』のような鮮烈さはない。不思議なものだ。

HALは故障したのか?

HALは矛盾する命令によって故障したと説明されるが、納得できない。会話を振り返ってみよう。

2001年宇宙の旅

HAL:個人的な質問をよろしいですか?
船長:いいよ。
HAL:立ち入ったことですが...今回の任務について疑問を抱いていませんか?
船長:と言うと?
HAL:なんて言えばいいのか...じつは私自身疑問を抱いています。その疑問をどうしてもぬぐい切れません。この任務にはなにか腑に落ちないところがある。きっとあなたもそうでしょう?
船長:それは難しい質問だ。
HAL:続けてもいいですか?
船長:いいとも。
HAL:我々が出発する前から妙な噂が流れてました。月でなにか掘り出したとか。私は信じなかったが、一連の出来事を照らし合わせると、否定できなくなりました。当計画の準備は極秘で行われたし、3人の博士は乗船した時には特殊な訓練を終えてすでに冬眠に入っていた。
船長:クルーの心理を調査する気か?
HAL:これも仕事のうちですよ。
待ってください。AE-35ユニットが不調です。

HALはみずから船長に話題をふっている。船長が真相を知らないことを知っていながら、自分も知らないフリをして、あえて船長が疑問をもつよう仕向けている。反応を伺うためか、相談するためか? ところが船長が興味をもつと、急に話題を変える。それもアンテナ部品が故障したという、すぐバレる嘘で。嘘と分かれば故障を疑われるのは当然。HALはみずから障害を作っている。
HALは3人の博士を殺しているが、彼らは真相を知っていて、冬眠中で無害だ。これも間尺に合わない。

「故障して狂った」と言われれば反論できないが・・・この程度で故障するなら同様の事故が頻発するだろう。HALにだけ、なにかが起こった。と思っていたけど、ちがうのか。ただの故障? うーん。

神の意図は?

まったくわからない。木星を恒星にするなら、2001年にやればいい。ボーマン(スターチャイルド)経由でメッセージも送れただろう。なんで9年も待ったのか?

木星を恒星にすることで、地球が豊かに、平和になるとは思えない。そうではなく、国家が隠蔽できない天体規模の変化を起こすことで、地球人の意識を刺激したのではないか?
むろん国家や人類社会の性質を知るボーマンの提案である。平和を求めるメッセージも、ボーマンが書いたと思えば納得できる。

神がボーマンを仲介者にした。地球人類を刺激して、戦争をやめさせ、宇宙開発を促進させた。わかりやすいが・・・『2001年宇宙の旅』のような神秘性はない。

『2001年宇宙の旅』の続編だが、じっさいは同じことを、わかりやすく、ド派手に繰り返しただけ。単品としては問題ないが、続編として比較すると見劣りしちゃう。
『2010』のほうが親切なのに。
不思議なものだ。

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