アガサ・クリスティー ねじれた家 Crooked House

2017年 外国映画 3ツ星 ★妄想リメイク 家族 探偵 推理 @アガサ・クリスティ

破綻はないが、ドラマがない。

2021年、Gayoで無料視聴できた。「いつか見たい」がこんな早くに実現するとは。すごい時代になったもんだ。

『ねじれた家』は、アガサ・クリスティのマイベストでありながら映像化されなかった作品。見てみると、なるほどクリスティ要素満載。富豪が不審な死を遂げる、若くて美しい後妻、ひねくれた家族、全員に動機と機会、推理が固まってくると新たな情報、新たな事件!

映像が素晴らしい。よくこんな重厚な屋敷で撮影できたもんだ。役者さんの存在感もばっちり。カネかかってる。ザ・上流階級。これぞクリスティ。

しかし、おもしろかったとは言えない。
トリックに破綻はないが、ドラマがない。事件の前と後で、だれも、なにも変わっていない。クリスティが思いついたトリックを披露しただけ。まぁ、それがクリスティ作品なんだけど・・・物足りない。

登場人物

  • 探偵:チャールズ・ヘイワード ... 主人公。
  • └タヴァナー主任警部 ... ヘイワードをけしかける。
  • 富豪:アリスティド・レオニデス ... ?
  • ├前妻 ... ?
  • │└姉:イーディス・デ・ハヴィランド ... ?
  • └後妻:ブレンダ ... アリスティドにインスリンを注射。
  •  └家庭教師:ローレンス・ブラウン ... ブレンダと不倫。
  • 長男:ロジャー ... 短気。父と口論した。
  • └ロジャーの妻:クレメンシー ... 早く家を出たい。
  • 次男:フィリップ ... 映画を撮りたい。
  • ├フィリップの妻:マグダ ... 酒飲み。
  • ├フィリップの長女:ソフィア ... 依頼人。後継者。
  • ├フィリップの長男:ユースティス ... 身体も頭も弱い。軽薄。
  • └フィリップの次女:ジョセフィーン ... 祖父を嫌悪。なにか知っている。

疑問メモ

外交官→探偵? 原作のチャールズは外交官だから、探偵「役」に不備があっても仕方ない。んが、職業「探偵」となると弱い。チャールズは事件解決に、なんら寄与していない。
外交官より探偵は警戒される。「依頼者と探偵がグル」という疑惑が提示されたが、あっさり流れてしまった。

恋人→元恋人? 原作のチャールズとソフィアは恋人同士だが、映画は別れたことになっている。ソフィアはなぜ、自分が捨てた男を招いたのか? ソフィアの容疑を晴らすためとしても、元恋人じゃ説得力が亡くなる。しかしソフィアの意図、恋人たちの復縁は描かれなかった。

アーサー存命→殺人事件 チャールズの父アーサーは別の事件で殺されたことになっている。しかも犯人は見つかっていない。当然、この事件と関係あると思ったが、なかった。だったら病死でいいじゃん。
タヴァナー主任警部の役を、父がやってもよかった。父としては息子チャールズをレオニデス家に婿入させたい。と同時に、レオニデス家のスキャンダルは最小限に食い止めたい。そうした意図があれば、チャールズの人となりを描けたかもしれない。

先妻の死も関係なし マーシア(アリスタイドの先妻)の死も、本件に関係なかった。「関係がある」と疑えば、当時幼かったジョセフィンは容疑から外れる。いい煙幕になっただろうに。

イーディスに語ってほしいこと イーディス(先妻の姉)が一家を取り仕切っているが、そのことを家人はどう思っているのか? カリスマはありそうだが、事件について、家族について、レオニデス家がねじれた原因について、まったく語ってくれない。

アリスタイドの気質 遺言書の署名がないことから、遺産全額はブレンダ(後妻)にわたる。しかし別の遺言書を作って、ソフィアを後継者に指名した。つまりアリスタイドは、子どもたちの嫉妬をなだめつつ、ブレンダを気持ちよく踊らせ、自分のやりたいようにしたわけで、悪辣だ。チャールズはもっと驚いて、憤ってくれ。

ソフィアの考えは? ソフィアは、アリスタイドの後継者になるためチャールズと別れたと言う。意味がわからない。ソフィアは自分もアリスタイドのようになると思っていたのか? それなら事件を経て、なにか思うことはないのか?

妄想リメイク(エンディングのみ)

真実に気づいたイーディスは、ジョセフィンを殺して自分も死のうと考えた。ところが追跡者があったため、車ごと崖からダイブした。
駆けつけるとイーディスは即死、ジョセフィンは重症ながら生きていた。「助け」と叫ぶジョセフィンに、ソフィアが手を差し伸べるが、チャールズが引き止めた。
車は爆発炎上し、ジョセフィンは死んだ。

ソフィア:どうして止めたの? 助けられたのに!
私は、ジョセフィンを守るため、家督を継いだのに!
チャールズ:助けても苦しむだけだ。
レオニデス家の財力があれば無実を勝ち取れるかもしれないが、世間は許さない。
怪物になる。
いや、すでに怪物だった。
イーディスも苦悩して決めたんだろう。
ソフィア:どういうこと?
チャールズ:死期を悟った大叔母が家人を道連れにしたんだ。
この遺書でみんな納得する。
ソフィア:なんのために? 国のため? 株主のため? 従業員のため? 一家のため? 私のため?
チャールズ:きみのためだ。
ソフィア:あなたになにがわかるの!
チャールズ:警察を呼んでくる。きみはなにも言わなくていい。事件が片付いたら、きみの前から消える。
ソフィア:駄目! 
チャールズ:・・・。
ソフィア:そばにいて。私も怪物にならないように。

ってのはどうかな?

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