[ドラマ] 日曜劇場 JIN -仁- / こんなドラマを見たかった

2009年 娯楽 ドラマ 考察
[ドラマ] 日曜劇場 JIN -仁- / こんなドラマを見たかった

日曜劇場 JIN -仁- (全11回)がおもしろかった。

連載中の原作漫画を読んでいたので、ドラマ化決定のニュースを見たときは戸惑ったが、ふたを開けてみれば驚くほどのハイ・クオリティ。漫画をそのまま実写化するのではなく、要素を整理して、エピソードごとにメリハリをつけている。感動は原作を越えたよ。
感想をメモしておく。

緒方洪庵(武田鉄矢)「より良き未来をお創りください」

高名な身でありながら、はるかに年下の仁に教えを請う姿がかっこいい。同じ年齢になったとき、私に同じことができるだろうか。
仁の正体を胸に秘めるシーン(第7話)は、ぼろぼろ泣けてしまった。洪庵は仁の技術だけでなく、その内面にも心を砕いていたのだ。そして労咳が、未来においては治せる病であることを知って、喜ぶような眼差しを見せる。「なにか手立てはないか」とか、「未来に生まれていれば」といった恨み言もない。
洪庵のように生き、洪庵のように死にたいね。

坂本龍馬(内野聖陽)「夜ぉが、明けたぜよ」

内野聖陽が演じる龍馬は、なかなか魅力的だった。国を思う志だけでなく、虚栄心や嫉妬、憧れ、下心さえ隠さない。うそ偽りがないから暑苦しいが、信頼も篤くなる。ネガティブ思考の仁とは、いいコンビだった。
ほぼ史実どおりに行動する原作に比べ、ドラマ版は「もし龍馬がペニシリンに出会っていたら」というIF展開があって興味深い(第10話)。
最終回で不可解な不在期間があり、その後は雰囲気が変わっている。なにかを隠しているように見えるのだが……気になるなぁ。

橘恭太郎(小出恵介)「男子たるもの人前で涙は見せぬもの、だが今日だけは……」

仁や龍馬がめざましい活躍をする中で、自身の器の小ささを恥じる恭太郎。一時は女に逃げるが、「身を切る」ことでペニシリンを守り通す。それでも劣等感は消えず、女々しい内心を吐露してしまう。それでも認められ、うれし涙をこぼす(第8話)。
仁や龍馬といったヒーローに比べれば、恭太郎の活躍はあまりに小さいが、それでも精いっぱいがんばる姿に胸を打たれる。彼のような人物をていねいに描くことで、ドラマの奥行きがぐっと広がった。
男3人が泣くシーンを笑いたければ笑え。私は、もらい泣きしてしまった。

未来の"考え方"

江戸大火の被災者を治療するときに、仁はトリアージを使う(第9話)。トリアージは現代においても拒否反応を示す人がいるほど新しい考え方である。原作ではさらっと流されたけど、ドラマは現場の葛藤を描くことで、その意義を強調している。
これって、すごいことじゃない?
トリアージは医療と人情を切り離している。トリアージの理念が社会に浸透すれば、さまざまな変革が起こるだろう。この130年で進歩したのは、技術や薬だけじゃないのだ。

最終回はチグハグな印象だった。土壇場でシナリオが変えられたんだろうか。第2期や劇場版がありそうな予感。ぶっちゃけ、タイムスリップの謎には興味ないので、それで引っ張られるのは困る。それより明治維新のIF展開を見たい。大河ドラマ『龍馬伝』で正史を、『JIN -仁-』で仮想史を描けるといいのだが、難しいかな。

ともあれ、おもしろかった。余は満足じゃ。

※画像は初期イメージ。左端に藤田まことがいる。

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