地獄 JIGOKU

1960年 日本映画 3ツ星 和風

教訓のない童話

あらすじ

大学生の清水四郎は、悪友・田村が運転する車がヤクザをひき殺したことから、悲劇の連鎖に巻き込まれる。自首しようとした矢先、タクシーの事故で婚約者を失う。ヤクザの情婦に殺されそうになるが、もみ合う中で彼女だけ墜落死。しかしヤクザの母親が盛った毒と食中毒、および田村の乱心によって、四郎をはじめとする親族全員が死に絶えて、みな地獄に落ちた。

二部構成で、前半は悲劇の連鎖を、後半は地獄をさまよう姿を描いている。悪いことをした人間が地獄に落ちて苦しむのではない。四郎に咎はなく、それでも罪を償おうとしていた。行く先々で起こる悲劇も、彼の責任とは言いがたい。なのに、地獄に落ちてしまうとは。因果応報でないところが本作最大の疑問であり、かつまた名作たらしめる所以だろう。

それはそうと天知茂が若い。学生服はぜんぜん似合ってないし、キスも堂々としたものだ。そのアンバランスさがおもしろい。特撮はいろいろチープだが、時代劇のケレン味が吹き飛ばしてくれる。学生服がふつうに似合う好青年だったら、八大地獄で我が子を求めさまようなんて無理だろう。

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