【ゆっくり文庫】アンブローズ・ビアス「アウル・クリーク橋の出来事」 An Occurrence at Owl Creek Bridge (1890) by Ambrose Bierce
2014年 ゆっくり文庫 アメリカ文学 ファンタジー013 真剣に生きる──
南北戦争時のアメリカ。北軍が農園主のファーカーを絞首刑に処した。ところがロープが切れ、ファーカーは一命を取り留めた。
原作について
アンブローズ・ビアス
(1842-1914?)
高校のころは怖い本をたくさん読んだ。ポー、小泉八雲、ビアス、ラブクラフト......。『ビアス怪談集』は表紙とタイトルに惹かれて買ったんだけど、期待したほど楽しめなかった。読みにくいからだ。シーンごとの情景は思い浮かべられるのに、つながりがわからない。ファンタジー要素もあるため、常識で類推することもできず、途方に暮れるばかりだった。
『アウル・クリーク橋の出来事』もこのとき読んだけど、意味がわからなかった。当時はビアスという人物も、南北戦争もわかっていなかったから、ちょっと敷居が高かった。その後、クトゥルフ神話に興味をもったので、ふたたびビアスを読むことになり、ようやっと理解できた。
理解できるとおもしろい。『ジェイコブス・ラダー』(1990)や『シックス・センス』(1999)も本作の影響を受けているんだろうか? いろいろ興味深い。
だがしかし、それにつけても、読みにくい。
もうちょい整理できないだろうか? というわけで【ゆっくり文庫】にしてみた。
一人称でつづるべき物語だが、地の文が嘘をつくという特異性を残すことにした。南北戦争の最中であることを強調した。ファーカーが絞首刑にされる理由を簡潔にしたが、一方でファーカーが南軍の活動に協力的だった部分は割愛した。逃走時に起こるイベントも並べ替えた。森の中で見つけた街道のシーンもカット。文章で読むときは「なにかおかしい」と気づくところなんだけど、映像ではもっと早く勘付くだろうから、テンポを優先した。
ラストで「なにが起こったか」を説明すべきかどうか迷った。「この奇妙な逃避行は、すべてファーカーの脳内に生じた火花だった」と言っちゃえばわかりやすいが、わからない人はわからないし、わかる人には野暮になると考え、見合わせた。
また、おまけとしてビアスの人生や芥川龍之介に与えた影響などを紹介しようと思っていたが、切れ味が鈍るのでやめた。興味がある人は各自で調べてほしい。
タイトルだが、ビアス怪談集、Wikipediaでは『アウル・クリーク橋の一事件』と訳されていたが、より新しい訳本は『アウル・クリーク橋の出来事』となっていたので、こちらを採用した。
映像化
『アウル・クリーク橋の出来事』は3回映画化されている。フランスで製作された『ふくろうの河』(1961)はオリジナルに忠実で、のちに『トワイライト・ゾーン』の第5シーズン142話に「アウル・クリーク橋の一事件」として放映されている。しかもYouTubeで全編試聴できた。いいのか?
状況説明が乏しいため、あらかじめストーリーを知らないと意味がわからないかもしれない。
動画制作について
長らく後回しにしていた脚本の1つ。アクションシーンをどう表現するか悩んだが、実際は間の取り方に苦しめられた。緊迫した状況だからといって、早口を連続させると空虚になる。緩急つけないとダメなんだ。さじ加減が難しい。
ゆっくりキャラは首だけなので、首吊り表現も難しかった。まず首にロープをかけてみたが、やめた。しかし横のロープはそのまま残した。なにを残し、なにを省略するか、毎度考えさせられる。
※ゆっくりの首吊り、どちらが緊張感があるか?
ラストは橋と死体を映したかったが、もちろん、そんなフリー写真はない。ゆっくりキャラをブラブラさせると、ただのギャグだった。なのでIllustratorで作画した。と言ってもall-silhouettes.comの素材を組み合わせただけ。雰囲気が出てるだろうか。
ここまで作ったら死体を左右に揺らしたくなるが、そこはやめた。作りたいのはアニメじゃない。
※Illustratorで作ったラストシーン
アクションの多い物語だった。落ちる、潜る、紐を切る、あえぐ、撃つ、泳ぐ、流される、走る、さまよう、駆け寄る、首吊り......。正直、うまくできたとは思えないが、これ以上がんばっても意味がなさそうなので公開する。これはこれとして、先に進もう。
さて次回は、菊池寛の「恩讐の彼方に」をお送りする予定。