優れたサポート係の「性格」は共有財産になる

2015年 科技 人工知能 新聞
優れたサポート係の「性格」は共有財産になる

 産経新聞が派手な記事を書いている。

「故人を"再生"できる...「性格」ダウンロード技術、グーグルが特許」
産経新聞 4月11日(土)22時30分配信
https://www.sankei.com/premium/news/150411/prm1504110019-n1.html

 人格データをクラウドからダウンロードしてロボットに吹き込むことによって、亡くなった親族や有名人の「性格」を持つロボットが身近な存在になる-。米IT大手グーグルが、ロボットに特定の性格などを植え付けられるシステムの米国特許を取得したことが4日、分かった。グーグルはさまざまな活用法を想定し、「実社会に多大な恩恵をもたらす画期的システム」と自賛しているが、一部のメディアは、人間の能力を超える人工知能(AI)を備えたロボット(コンピューター)の出現が人類に災禍を及ぼすとする「2045年問題」への第一歩だと警鐘を鳴らしている。

 なにやらSFのような話だが、調べてみるとロボットのパーソナリティ・データをクラウド上に置いて共用する技術のことだった。パーソナリティ・データは「故人の性格」ではなく、「個人向けの各種設定」である。たとえば家庭と会社に同じ規格のロボットがあれば、どちらも自分がカスタマイズしたインターフェイスで利用できる。まぁ、それだけの話。
 産経新聞は人工知能の脅威を訴えているが、それ以前の記者の知能が心配だぞ。

 なので、人間の「性格」をデータ化できるのか、そのデータの著作権、肖像権、あるいは人権はあるのかといった議論は空しいわけだが、考えることは楽しい。

優れたサポート係

 数年前、ある製品にわからないことがあって、サポートに電話した。けっこう苛立っており、文句を言ってやるつもりだった。

 ところが電話に出た女性の声や話し方に気勢をそがれてしまう。しかも話すうち自分の勘違いだったことに気づいたため、赤面してお詫びした。窓口の女性は、(見えないが)いやな顔せず、「解決して本当によかった」といい、終了した。
 なんというか、惚れちゃいそうなほど素敵な対応だった。

 会話内容を思い返すが、特別なことは言ってない。まず自分の気持ちを伝え(あなたの問題を解決したい)、相手の気持ちに寄り添い(お困りでしたね)、いっしょに問題と向き合っただけ。たとえるなら、敵だと思っていたモンスターが、自分の仲間になった感じ。
 もう一回電話して、「あの子を出せ」と言いたくなる。

 優れたサポート係は情報の処理能力より、相手の心にするりと入り込むような「性格」のよさが重要なんだな。

あの「性格」をデータ化できたら

 亡くなった親族や有名人の「性格」データに興味はないが、あの子のような「性格」でロボットを利用できたら、そりゃあ、気持ちがいいだろうな!

 2015年現在は、Siriの、「あらかじめ登録されたユーモア」に驚く程度だが、あと10年──いや5年もすれば、口頭による受け答えはもっとスムースになり、情報の処理能力より「性格」のよさ──声質や口調、話す順序、表現など──が重要になるだろう。

 2015年現在は、生身の女性の「声」をサンプリングしたヴォーカロイドが人気だが、やがて生身の女性の「性格」をサンプリングした秘書インターフェイスがパッケージ化され、流通するんだろうな。

 長生きしたいねぇ。