ペット・セメタリー Pet Sematary

1989年 外国映画 5ツ星 モンスター:ゾンビ 家族 幽霊 死体蘇生 @S.キング

子どもに「死」を教えるために

子どもに死の話をすることは、セックスと同じくらいタブーである。両親は「まだ知らなくていい」とごまかし、先送りにしようとするが、それは時として災いを招く。

ここでいう「子ども」は父ルイスと母レイチェルのこと。ふたりは都合の悪いことから目を逸らし、エリーの疑問に応えられない。だれもが「エリーのため」というが、そうじゃない。

予想外のことが起こるから悲劇ではない。予想されたことをやってしまうから悲劇なのだ。

状況

ルイス一家

シカゴから田舎に引っ越してきた。
都会になじめなかった(問題から逃げた)と推測される。レイチェルの両親はシカゴ在住だから、レイチェルの両親から距離を取りたかったのかもしれない。

ペット礼園

引越した家の裏手に「ペット礼園」があった。「ペット礼園」も買った土地に含まれているが、ルイスは知らなかった。
往来でペットがよく死ぬため、子どもたちが墓地を作った、と説明されるが、古くからあるようだ。つづりがまちがっている。
×:Pet Sematary (ペット礼園)
○:Pet Cemetary
大人たち(住民)はペット礼園を黙認している。厄介払いとして土地を売り出し、たまたまルイスが購入した。前に住んでいた人物は不明。

ジャド:いいこともある。この場所は墓場にしか使えない。

ペット礼園の奥は藪で塞がれている。子どもが作ったものではない。住民は奥になにがあるか知っている。


※向こうの土地は、腐ってる。

ミクマク族の遺跡「小さな神の沼」「死者の沼」

ペット礼園の奥にはインディアン・ミクマク族の遺跡があった。遺跡には死者を復活させる力がある。これは忌まわしい力であり、ミクマク族は土地を捨てた。原作は精霊ウェンディンゴが介在するところ。

遺跡とペット礼園は同じ形状をしている。子どもたちが遺跡をまねたとは思えないから、霊的な干渉によって子どもたちが作ったと思われる(エリーの霊感)。埋めて復活した怪物は、殺してペット礼園に埋めると鎮まる。遺跡とペット礼園は対をなしている。

遺跡とペット・セメタリー
※ミクマク族の遺跡とペット礼園は対を成している。

登場人物

ペット・セメタリー:登場人物
名前 説明
ルイス父親。優柔不断。娘に死を教えることができない。
レイチェルルイスの妻。姉ゼルダの死にトラウマがあるため、死の話を避ける。両親がルイスと不仲。
エリールイスの娘。死を理解しようとしている。
ゲイジルイスの息子。幼児。
チャーチエリーの飼い猫。
ジャド隣人。ルイスを「死者の沼」を使うよう導く。
パスコウ事故死した若者。ルイスにつきまとう。見た目は不気味だが、親切。なんでも知っているようで、そうじゃない。
ミッシールイス家の家政婦。うつ症状で、首吊り自殺。

疑問と(自分なりの)答え

父ルイスは大人?

ルイスは問題から目をそらす、先送りする、事実を捻じ曲げる傾向がある。そんなルイスの職業を医者に設定したのは見事。医者だから死生観がしっかりしている、科学的に考えられる、と思いこんでしまった。

(去勢手術について)なにかあったら、きみから説明してくれよ。
(パスコウの警告に)ぼくが殺したんじゃない! 目を覚ましたい!
(チャーチの復活)生き埋めにしたのかも? 獣医じゃないし、暗かったし...
(妻のトラウマ)ご両親を嫌う理由が増えた。
(ゲイジの死)あの事故はまちがいだ。
(ゲイジが怪物になったら)すぐに眠らせるから。
(遺跡に向かう途中に見えた幻覚に)目の迷いだ。
(レイチェルの復活)今度はうまくいく!

『狂気とは、同じことを繰り返しながら違う結果を望むこと。』
──アインシュタイン

娘エリーは子ども? 霊能力者?

エリーは死を理解しようとしている。レイチェルのように拒絶していない。ふつうの子どもで、両親が過剰に気遣っているだけ。

エリー
※エリーは死を学びつつあったが、両親がうまく教えられなかった。

エリーは不幸を予感する。パスコウの声を聞いているのかもしれない。「引越し前から勘が鋭かった」という言及はないから、おそらく遺跡の影響。

妻レイチェルのわがまま

レイチェルの姉ゼルダは障害に苦しんで死んだ。レイチェルはトラウマになり、死の話に癇癪を起こすようになった。
またルイスはレイチェルの両親と不仲。レイチェルの問題は両親のせいとみなしている。
優柔不断なルイスと潔癖なレイチェルの組み合わせが、問題解決を難しくしている。

レイチェル:道路で死んだペットのお墓なんて! 子どもを泣かせるだけでしょう!
ジャド:死とはどういうことか、教えておかんとな。
レイチェル:なぜ?
ジャドとルイス:(無言で顔を見合わせる。男同士の共感。)

パスコウは何者?

ただの幽霊。遺跡に影響された子どもだったかもしれない。不気味だが、ルイスを助けようと奔走する。しかし知らないこと、できないことが多く、結果として被害を増やしてしまった。
パスコウがいなかったら、本作は単純すぎて楽しめなかったかもしれない。

パスコウ:男の心は、まるで石と同じに固く、厳しい。

パスコウ
※パスコウはスパイス。シンプルなストーリーの味わいを高める。

ミッシーさんの自殺は必要?

ルイスはミッシーを復活させようとしなかった。ジャドもその可能性を考慮しなかった。ゲイジの死と差がある。
→ルイスは「死者の沼」の効果に、学術的興味はない。
→死者の復活には生者の願いが必要。ミッシーは愛されてなかった。
→エリーは死を理解しつつあった。

スティーブン・キング
※スティーブン・キング神父

なぜジャドは、ルイスに遺跡を使わせた?

ジャドは、ゲイジを救うシーンで登場する。いい人っぽく見える。ルイスと男同士の連帯を築き、信頼を得る。
ジャドはルイスに遺跡を使うよう誘導した。復活したペットが凶暴化して、ふたたび殺さなければならなくなることを伏せた。

(遺跡に向かう道で)下を見るな。止まっちゃいかん。
(遺跡で)この仕事はひとりでやる。飼い主だからな。
(口止め)今夜の儀式はな、秘密だ。女だって秘密は守れるが、どんな理解力のある女でも、男の心はのぞけない。男の心は固いもんだ。石のように。冷たく固いもんだ。あの墓場のように。
(スポットの話)生き返ってきたんだが、死ぬ前とは違う犬になっとった。
それで二度目に死んだときは、きちんとあそこのペットの墓地に埋めた。
人は理屈に合わんことをするもんだ。
(チャーチについて)今はあんたの(猫)だ。

ジャドは、ルイスに自分と同じ失敗をさせたかったのではないか? 同じ苦しみ、悲しみを経験することで、自分の罪を軽減し、男同士の連帯を強められると考えたのかもしれない。

なぜジャドは、ルイスを止めなかった?

ティミー・ベータマンという若者が復員時に死んだ。悲しんだ父親ビルは息子を遺跡に埋めて、復活させた。しかし帰ってきたティミーは凶暴化。住民にたのまれたジャドたちが家ごと焼き払った。このとき父親ビルも死んだ。

死んどるほうがよかったな。
生き返ってきたが、ちがう人間になっとった。
つまり、あの墓から戻るともう人間ではなくて、怪物になる。

ルイスに「人間を埋めたことはあるのかな?」と訊かれたとき、ジャドは激しく動揺した。
ティミーを埋めたのは父親ではなく、ジャドではないか?
ティミーが父親を殺したから、その死体を隠すため家ごと焼き払った。そう考えるほうが納得できる。

レイチェルから電話を受けて、ジャドはルイスの思惑に気づく。レイチェルに「来ちゃいかん!」と言うが、なにもしなかった。行き先はわかっているから止めることはできたが、庭先でビールと飲みながら寝てしまう。

とうとうやってしまったのか。もう取り返しがつかん。

なぜ止めなかったのか?
ジャドはルイスに、同じ失敗をさせたかったのだろう。

男の心は石のように硬い。
手に入れたものすべてに責任を負う。
所有したものは必ず自分のもとへ戻ってくる。

ジャド
※老人の独り暮らしがリアル。

なぜゲイジは先にジャドを殺した?

ゲイジは家に戻ると、ルイスのメスを手にジャドの家に向かった。寝ているルイスは放置。なぜか?
ゲイジの言動、能力は、幼児らしくない。おそらく中身は悪霊。

悪霊はジャドに焼き殺されたことを覚えていて、復讐を優先したのだろう。ジャドは自分に関係ないと思っていたが、そうじゃなかった。ジャドは、自分がやったことの代償を払った。

男の人生は厳しいもの。
すべては自分に戻ってくる。

なぜジャドの家が変質した?

レイチェルはゼルダの声を聞いて、ジャドの家に足を踏み入れ、ゼルダの幻覚を見る。レイチェルはシカゴの実家でも幻覚を見ていた。悪霊の影響だろう。
ゲイジは「かわいい格好」に着替え、レイチェルを油断させて殺害した。

翌朝、ルイスは電話でゲイジに呼び出される。家の中は不気味に変質していた。幻覚ではあるが、土地が腐る兆候かもしれない。

土地が腐る
※死者が復活すると、周辺が腐るのかも。

ゲイジ
※悪霊はルイスをちょろい相手と思っていたが、毒殺された。

ずるい。

ルイスは、ジャドとゲイジの死体を家ごと燃やす。かつてジャドがティミーと父親を家ごと燃やしたのと同じ。

お気に入りポイント

ストーリーは単純。あっと驚くことは起こらない。なるべくしてなっただけ。結末を踏まえてみると、もろもろ納得できる。
さまざまな要素が目くらましになっている。ルイスは医者。夫婦仲は円満。ジャドは親切。パスコウは不気味。すっかり幻惑された。

チャーチ
※生きてるのか死んでるのか、ほんとにわからない。

それからチャーチの不気味さがよい。ゲイジもそうだが、死んで生き返ったものは別物になる。見た目は同じなのに、中身が違う。その雰囲気がたまらなく怖かった。

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