トランセンデンス Transcendence

2014年 外国映画 2ツ星 SF SF:新人類 電脳

超越できてません。

 人類は小麦の奴隷、という考え方がある。人類はもともと気ままに狩猟生活を送っていたが、小麦を得て、これを栽培するため定住せざるを得なくなった。小麦のカロリーによって人口が増えると、ますます小麦が必要になる。小麦の耕作地を増やし、環境を保全するため、人類は多くの血を流した。戦争(土地の奪い合い)も起こった。
 人類は小麦を育てるため右往左往している。しかし小麦を捨て、狩猟生活に戻ることはできなかった。

 人工知能が賢くなっても、人類を支配したがるとは思えない。再生医療やエネルギー技術の一端を供与するだけで、大多数の人類は共存を選ぶだろう。少なくとも、技術的恩恵を永遠に消し去るとは決められない。小麦を捨てられない人類なのだから。
 支配する必要があれば、そうと気づかせないようにする。アイザック・アシモフも『厄災のとき』で同様の予見を示している。

 もちろん過激な反対派はいる。彼らが1万5千年前の地球にタイムスリップすれば、「小麦は人類を支配するから栽培するな」と、最初の畑を焼いただろう。しかし小麦がなければ「人間らしい暮らし」は成り立たない。そのとき反対派はいかなる正義を掲げるのか?

さて、映画『トランセンデンス』の話

 ウィルも人類に技術的恩恵を与えて時間を稼ぐと思っていたが、ちがった。ナノマシン治療を受けると(明らかな)下僕になってしまう。地上の太陽光発電はダミーで、じつは未知の発電システムがある・・・なんてこともなかった。エブリンのホルモン分泌まで把握していながら、機嫌を損ねてしまう。PINNと同じ受け答えをして、FBIに猜疑心を向けらられる。

 トランセンデンス(Transcendence)は哲学用語で「超越」を意味する言葉だが、ウィルは人間の反応を予見できてない。自分の目的を伝えることにも失敗した。最後は「すべては彼女への愛だった」と矮小される。ぜんぜん超越じゃない。

 映画は反対派(RIFT)の勝利で幕を閉じる。しかし大停電でどれほどの被害があったのか、反対派の意見がコンセンサスを得られたのか、さっぱり言及されない。それでいてナノマシンを駆逐できていないのだから馬鹿らしい。むしろ管理者不在でナノハザードの危険だけ残った。

テロリストの女戦士(ブリー)を主人公にすれば、もっと整理できたんじゃないか?

 ブリーにとってテクノロジーは脅威であり、ウィルは怪物。エブリンも共犯者。すべて排除すべき、それが正義と考えている。なんやかんやあってウィルを破壊できたが、地球規模の大災害となった。多くの人命が失われ、傷を癒やしたり、環境を再生する技術も消えた。これでよかったのか? そこをテーマにしてほしかった。

 とどのつまり、『トランセンデンス』が描いた人工知能の反乱は、古くて安っぽいものだった。
 生まれて初めて視覚を得て、すぐ歓喜する。写真を見ただけで350キロあると見抜く。FBIとテロ組織が共同攻撃する。どこでも水を飲めることが楽園の証。どれも発想が貧困だ。マックス博士の「学校を出てから手描きしたことなくて」という言い訳はリアルだった。

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