デス・ウィッシュ Death Wish

2018年 外国映画 3ツ星 ヒーロー 犯罪 社会人 @B.ウィリス

オリジナルと異なるジャンルに

 私的報復は賛否両論に描くものだが、ブルース・ウィリス主演の時点で「正しい」ことが確定した。『ダイ・ハード』でばんばん殺してきた男が、いまさら悪党の処刑を躊躇する理由がない。またフードをかぶせたことで、『アンブレイカブル』のヒーロー性まで帯びちゃってる。

 ブルース・ウィリスだから、緊張感がない。どんなピンチになっても切り抜けるだろう。うっかり殺されたり、逮捕される可能性が見えない。すごい安心感。しかし映画の主題は私的報復の肯定じゃないだろうから、この配役はよくなかったと思う。もっと冴えない中年男なら、命がけの復讐、命がけの問いかけになっただろうに。

 それはそうと、なんでもネットで学べることに驚く。銃の撃ち方からハードディスクの完全破壊まで。殺人現場を撮影しても、通報よりアップロードが先とはね。ブルース・ウィリスが銃を入手したのはラッキーだったけど、最後の仕掛けは合法的な備えだった。
 こういうケースがあると思うと、強盗は慎重になるだろう。この映画が与えた抑止効果は大きいと思う。

医大で習った。
心配を停止させるリスクなく人に与えられる最大の苦痛は、この坐骨神経への攻撃だ。

 余談。
 ゲーム「PAYDAY2」の高難易度はDeath Wish(自殺願望)。最高難易度はDeath Sentence(死刑宣告)と呼ぶが、原作タイトルにちなんでいたのか。

オリジナルと比べてみると...

 『狼よさらば』(1974)を鑑賞した。枠組みは同じだが、まるで別物。オリジナル『狼よさらば』はサイコホラーで、リメイク『デス・ウィッシュ』は復讐アクションだった。
 リメイクは目的がはっきりしてるから、わかりやすい。ポールも理性を失ってない。最後の逆転はじつに痛快。だからリメイクが駄目ってことはない。これはこれでよくできてる。オリジナルと比べることで、リメイクも工夫が見えて、より楽しめた。

狼よさらば:比較
- 狼よさらば (1974) デス・ウィッシュ (2018)
主演 チャールズ・ブロンソン (53) ブルース・ウィリス (63)
主人公 成功した建築家。犯罪に無関心。 一介の外科医。犯罪者でも生命を救う。
犯人 暴漢たちによる衝動的な犯行。 計画的な強盗(ゆえに追跡可能)。
被害 妻は死亡。娘は重度の精神障害。 妻は死亡。娘は意識不明の重体。
身内 娘婿。嘆くだけでなにもできない文明人。 弟。正論を述べる。目立つが、とくに活躍しない。
契機 アリゾナで西部時代の物語に感銘を受ける。 テキサスで現実な行動を見る。
戦闘技術 朝鮮戦争の良心的兵役拒否者。銃の名手。 ド素人。
行動 自警→狩り。 復讐。
別名 「まぼろしの狩人」 「シカゴの死神」
社会的影響 犯罪件数が半減するが、世間は知らない。市民だけでなく警官まで犯人の味方をする。警察は逮捕できなくなる。 SNSで有名になる。影響が議論される。模倣犯が出てくる。
変化 男らしくなる。
自分のニュースに関心を示さない。
考えがわからなくなる。
殺傷を躊躇しなくなる。
自分のニュースをチェックしている。
最後まで理性的。
ライバル オチョア警部。愚鈍そうに見えたが切れもの。主人公と話すのは最後だけ。理解者だが共存できない。 レインズ刑事&ジャクソン刑事。典型的な警察官。最初から親身に接してくれる。
クライマックス 危険な状況なのに、いつもの狩りへ。
西部劇のようなセリフが混じる。
一騎打ち。
敵を家で迎え撃つ。(西部劇のように)
報酬 なし。シカゴへ転居。 娘が覚醒する。
エンドイメージ
またやる。

もうしない(だれかがやる)。
印象 サイコホラー 復讐アクション
工夫 後半は気持ちが見えなくなる。 だれでもハンターになれる。
医者だから悩むわけじゃない。
皮肉が効いた反撃。

 なんだかんだで観客は、「悪漢をぶっ殺して、スカッとしたい」のだ。

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