【ゆっくり文庫】日本の民話「猫岳の猫」 Cats on Mount Nekodake from Old Tales of Japan
2020年 ゆっくり文庫 ファンタジー 日本の民話 日本文学
097 猫には猫の世界がある──
熊本県の民話。阿蘇のふもとで道に迷った若者が、大きな屋敷で一夜の宿を借りる。そこは猫の棟梁が住まう猫屋敷だった。
原拠について

「榊原家の化け猫」
与謝蕪村画『蕪村妖怪絵巻』より
(1754年頃)
熊本県にある根子岳は、阿蘇五岳のひとつ。頂の形からその名がついた。名がつくと、それにまつわる伝承が生じる。
(参考)ヤマネコ山遊記:猫と縁のある山
猫岳の猫伝説
- 猫岳には猫の棟梁(王様)が住んでいる(ゆえに猫岳と名付けられた)。
- 猫の棟梁が猫屋敷をかまえている。
- 除夜、あるいは節分の夜に猫が集まって、会議を開く。
- 肥後の猫たちは必ずここで修業をする。これを「猫岳参り」と称する。
- 修行した猫は出世して化けるようになったり、障子を開け閉めできるようになる。里に戻ると猫の棟梁になる。修行の印として耳が裂けることがある。
- 猫屋敷に迷い込んだ旅人は、下働きの猫に変えられる。
飼い猫が数日から数ヶ月いなくなって、戻ってくると、「こいつ、猫岳参りしてきたな」と言われるらしい。猫が超常の力を手に入れても追い出さないところがいいね。近ごろの猫は密閉された室内で飼われているから、修行に行くのも大変だろう
まんが日本昔ばなし
二度制作されている。内容は同じ。
助けてくれるのが飼い猫でないこと、旅人が無傷で帰れなかったところがおもしろい。猫が人間を猫にしたがるのは、人間が猫を人間にしたがることの裏返しにも思える。
No.0179 猫岳の猫(1977年)
No.1319 ねこ岳の怪(1992年)
No.0867 猫山の話(1986年)
類話。いなくなった飼い猫を探して、猫山にやってきた女。そこは猫屋敷で、自分を食べようとしていることがわかる。飼い猫が逃げるように案内し、お守りをくれる。猫たちが行く手を阻んだが、お守りをかざすと散っていった。家に帰ってお守りを開くと、小判をくわえた犬の絵が描かれていた。その小判が実体になったことで、女は年季奉公を終えて、故郷に帰った。
きっかけ
7月に筋之助さんと日本民話について話したとき、「作るのが難しそうなエピソード」として『猫岳の猫』の名前が挙がった。その後、ゲームウォッチ風画面を思いつき、勢いで完成させた。8月5日だった。
単品で投稿するのは物足りない。『茂吉の猫』とセットにしようと思ったが、共通するメッセージが弱かった。
筋之助さんが猫山の伝承を調べ、文庫サーバのメンバーに猫の伝承や思い出を聞いて回ってくれた。調査や雑談はおもしろかったが、動画にするような内容じゃない。『猫岳の猫』からも離れてしまった。
妙案が出なかったので、単品投稿することにした。一発ネタみたいな作風だから、これはこれでいっか。
コメンタリー
人間の若者を橙、猫女中を八雲藍、という組み合わせがまず思い浮かんだ。女将たちは貫禄重視で五大老とする。このくらいなら東方を知らなくても楽しめるだろう。
動画が完成してから、キャラ素材をいじりはじめた。今回はタイムラインを組むより、キャラ素材の加工に時間がかかった。
序盤
一番むずかしい「水かけシーン」から作りはじめ、追跡シーン、女中さんとの会話シーンと広げていった。なので序盤は最後に作った。
猫はMinecraftから拝借。若者に風呂敷を背負わせる。それっぽい。
※猫に囲まれてびびる橙
初号はいつもの藍で作成。ふと、結末の変化を示すため、橙から帽子と耳と尻尾を取り除いた人間態を作ろうと思い立つ。ちくちく調整して、パーツ分解する。髪の毛を荒立て、少年っぽさを強調する。尻尾が大変だった。耳のない帽子は八雲紫のZUN帽をカスタマイズした。口や目の位置も調整した。ふー。
※ちぇん
猫屋敷
『まんが日本昔ばなし』のように、こわい絵柄は使えない。なので間とか、登退場とか、色合いで「こわさ」を演出する。暗がりは図形と単色化を使っている。怪談やホラー映画「あるある」の演出ばかりだけど、ゆっくりでやると新鮮だ。
※きしむ床はあとでまた出てくる。
※飛んで火に入る夏の虫、と気づいていない。あと尻尾がないことを見せておく。
※本作でいちばん怖い、なにもしない永琳。
女中さんの警告
初号はいつもの藍で作成。ふと、化け猫はてぬぐいをかぶっていることを思い出し、八雲藍の人間態を作りはじめる。帽子と尻尾を消すのが大変でフルスクラッチしたが、これはこれで違和感があって没になった。
きつねゆっくりを調整して、帽子なし、尻尾なしを作って、カスタマイズの幅を広げた。えらい手間がかかった。
※文庫式らん:フルスクラッチ版は没に。
作業してると、筋之助さんが「らん:後ろ姿」を作りはじめた。形状や位置に注文を出して、できあがった。『猫岳の猫』に出番はないので、『饅頭より餡をこめて』の解説パートに使った。
合わせて「眉」、「顔」も調整した。
※らん:髪型を整え、パーツを分解・追加する。
※らん:後ろ姿のラフ
※らん:眉を太く、短くした。
※らん:眉が隠れないよう、マスクした顔色を作成する。
※姉さんかぶり。
初号を筋之助さんに見てもらったところ、女中さん(八雲藍)=三毛猫(Minecraft素材)がわかりにくい、と言われた。なのでMinecraft猫にZUN帽をかぶせようとしたが、うまくいかない。逆に、女中さんの目を金目銀目にすることを思いつく。これでいいじゃん。
こうなると藍をツリ目にしたくなった。ちくちく作成。ひととおり作ったが、文庫劇団になじむかどうかわからない。たぶん、また調整するだろう。
※初期の三毛猫らん
※金目銀目がおそろいになる。
※らん:ツリ目(試作)
追撃
逃げる若者、追いかける猫女将たち。このへんも映像演出を凝らす。初号はシンプルだったが、空いた時間にちょっとずつブラッシュアップした。
※牡丹燈籠の焼き直しだけど、こういう構図は好き。
※まー、こわいよな。
※2枚の画像を動かしている。モーションブラーではない。
※崖の上から見下ろす背景はなかったが、ま、想像できるでしょう。
水ぶっかけ
ゆっくりでどうやって柄杓で水をぶっかけるか? 思いついたのはゲームウォッチ風画面だった。ゲームウォッチがどういうものか、ここでは説明しないが、私にとっては思い出のアイテムだ。ドット再現しようと思ったが、やめた。再現することが目的じゃない。
素材が揃ったら、タイムラインに置いて「ちょうどいい動き」「長さ」を探る。
※パラシュート (ゲーム&ウオッチ PR-21)
※キャラを操作してる感覚になってくれれば成功だ。
※Illustratorで作成した。
生還
若者は逃げ延びるが、水を浴びた首の付根と脛に猫の毛が生えてしまう。映像化する必要はないが、ゆっくりに粗野なイメージがついてしまうので、最初から猫の橙を配役した。橙なら耳や尻尾が生えても大丈夫。悲劇性も緩和される。
※猫になっちゃった!
雑感
並行して、いろんなことを話した。死期を悟って姿を消す猫、それを見て子どもが学ぶこと、猫会議は意外に高度、猫は死を理解しているか? 日本民話における異類の位置づけ、人間と動物の距離感・・・などなど。
雑談動画を作る予定はないが、こうした会話が動画づくりに生かされていくだろう。たぶん。
『猫岳の猫』はおもしろいけど、なにがどうおもしろいか、うまく説明できない。なにか感じ取っていただければさいわいだ。
投稿後
『猫山の話』は怖すぎないよう演出したが、「猫になりたい」というコメントがちらほらあって戸惑った。猫になる=人間をやめる=人の世から消える=死ぬことへの抵抗感がないんだねぇ。まぁ、本気で死にたいと思ってる人は、ニコニコ動画にコメントしてないだろうけど。
そのあたりを掘り下げるツイートをした。
かるーい怪談。解説パートをつけるつもりだったけど、うまく語れなかった。なんとなく好きな民話。編集後記も書いたけど、大したことは書いてない。
— ゆっくり文庫 (@trynext) December 5, 2020
【ゆっくり文庫】日本の民話「猫岳の猫」 https://t.co/gagINdAIXD #sm37917102 #ゆっくり文庫
みきとさんにファンアートを描いていただいた。
ゆっくり文庫の最新作である『猫岳の猫』に出てくる
— みきと(mkt_mith) (@mkt_mith) December 6, 2020
三毛猫藍様がかわいかったので楽屋裏を妄想して描いてしまいました。
怖い話なんですけどね・・・
いやぁ、土日の謎仕事の疲れが取れました~#ゆっくり文庫#ゆっくり文庫祭り pic.twitter.com/r2j3aQFGSy
対抗してみた。