創作  2013年02月02日(土)に書いた 妄想リメイク

[妄想] ALAN WAKE

[妄想] ALAN WAKE

本編も整理してみた──

『ALAN WAKE』のストーリーを整理してみた。

Episode 1: Nightmare

湖畔で目覚めた男

Re: ALAN WAKE
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 目覚めると、おれは硬いアスファルトの道路に倒れていた。
 頭上には満天の星空。ぐるりと山の稜線が見える。
 ちゃぷちゃぷ水の音がするのは、すぐそこに湖があるから。
 湖から足あとがつづいている。おれはずぶ濡れだった。
 たった今、湖からあがってきたようだ。

(頭が痛い。アリスは? アリスはどこだ?)

 手に紙片をもっていた。これは濡れてない。
 『ディパーチャー』という小説で、著者はアラン・ウェイクとある。

「アラン・ウェイク?
 おれだ。おれの名前だ!」

 名前がわかって、頭がまわりはじめた。
 『ディパーチャー』は次回作に使おうと思っていたタイトルだ。
 するとこれは、おれが書いたのか?
 いや、そんなはずはない。おれはスランプで、一文字も書けなくなっていた。
 だからアリスは......。

 小説を読んでみる。
 湖畔で目覚めた男が、闇をまとった怪人に襲われるシーンだった。
 まさかと思って振り向くと、今まさに森から怪人が出てくるところだった。
(どうする? どうすればいい?)
 戦い方は小説に書かれていた。影は光に弱い。灯りのあるところは安全地帯だ。そこから移動するときは、懐中電灯や発煙筒でやつらを退ける。光で影のバリアーを吹き飛ばして、銃などで攻撃する。あいつらは影。闇に取り込まれてしまった人間のなれの果てだ。

 おれは、書かれているとおりに影を追い払い、逃げた。
 わけがわからない。
 これから起こることが書かれた小説なのか、小説に書かれたことが起こっているのか?

現実を映すテレビドラマ

 おれはガソリンスタンドに逃げ込んだ。発電機を回して、灯りをつける。窓から外を見るが、あいつらは見えない。去ったのか、闇に潜んでいるのか。

 傷の手当てをしていると、テレビが勝手に点いた。『Night Springs』という深夜番組がはじまる。あぁ、おれが駆け出しのころに参加した連続テレビドラマだ。しかしブラウン管に映ったのはおれたちだった。この町にやってきたときの情景だ。おれたちは盗撮されていたのか?

Re: ALAN WAKE
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Night Springs #1

 アラン・ウェイクはベストセラー作家。しかしスランプのため、この2年は新作を書けなくなっていた。心配した妻・アリスは、ブライトフォールズへの休暇旅行を計画してくれた。
 ブライトフォールズは風光明媚な観光地だった。アランは町の人たちに有名人として注目され、少なからず気分を害したが、コールドロンレイクの静謐な水面や、峨々たる山並みの美しさに心を洗われた。アリスが選んだ宿は、コールドロンレイクに浮かぶ小さな島に立つ、古いキャビンだった。トーマス・ゼインという表札が残っていた。あまりの古さにアリスは恐縮するが、アランは気に入った。不思議と落ち着く空間だった。

 夜、アランとアリスは喧嘩してしまう。アリスが仕事用のタイプライターを持ち込んだからだ。
「ここなら書けるんじゃないかって思って」
「冗談じゃないぞ、アリス!」
 アランはキャビンを飛び出すが、すぐ反省した。アリスは暗所恐怖症で、アランを追いかけてくることはできない。キャビンに帰ろうとすると、アリスの悲鳴が聞こえた。
「アリス?」
 キャビンに戻ると、テラスが破壊され、室内は水浸しになっていた。アリスの姿は見えない。湖からのびた触手が彼女を連れ去ったように見えたのは、錯覚か?
 アランは湖に飛び込んだ。

(つづく)

「そうだ。アリスだ! アリスを探さないと!」
 キャビンのあったDiver's Isleに戻らなければ。しかしここは湖のどのあたりだろう?
 壁の地図があった。発電所跡地、ハートマンロッジ、エルダーウッド国立公園、アンダーソン農場と蒸留所、ラバーズ峠。地図のどこにもDiver's Isleは載っていなかった。
 引き出しに原稿が入っていた。読むと、主人公が電話を見つけ、保安官事務所に救援を要請していた。訝りながらも、そのとおりに行動した。

失われた一週間

 ほどなく保安官がやってきた。小説とちがって若い男だ。ほっと安心するが、男はスタンドの持ち主で、保安官は小説に書かれたとおり、若い女性だった。
「サラ・ブレーカーです。あなたはアラン・ウェイク?」
 名前も小説に書いてあるとおりだった。おれは目まいを起こした。
「大丈夫ですか? なにがあったんです?」
「妻が、アリスが、Diver's Isleで行方不明に」
「どこですって?」
「湖の島です。そこのキャビンに泊まっていたのですが」
「湖に島はありません。1971年に湖底火山の噴火で、なくなりましたよ」
「そんな馬鹿な。いいからキャビンに行ってください」

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 現地に行ってみると、たしかになにもなかった。
 おれは混乱した。
「あなた、小説家のアラン・ウェイクですか?
 この一週間、どこでなにをしていたんです?」
「一週間?」
「あなたがブライトフォールズに来たのは先週の土曜日。それ以来、連絡がとれなくなったとエージェントが探していたんです」
「なんだって......」
 おれは崩れ落ちた。

Episode 2: Taken

Night Springs #2

 2年前、ニューヨーク──。
 暗所恐怖症のアリスに、アランはクリッカーを贈った。幸せな日々がつづいてた。
 ある日、アランが書いた小説そっくりの殺人事件が発生する。犯人は小説に書いてあるとおりに殺害し、逮捕され、供述したが、アランの小説を読んでいなかった。
 アランが犯罪に関与した疑いはなく、世間も追及することはなかったが、本人が受けたダメージは深刻だった。
 以来、アランは一文字も書けなくなってしまった。ありえないとわかっても、書いた小説が現実になることを恐れていた。

(つづく)

誘拐犯の脅迫

 ブライトフォールズ保安官事務所。保安官にあれこれ質問されたが、なにも話さなかった。
 書いた覚えのない小説が現実になって、影に襲われたなんて、言えるはずもない。

「アラン・ウェイクさん? お電話です」
 そのとき、おれ宛の電話がかかってきた。携帯電話をなくしてしまった。おれがここにいると、だれが知っているのか? 受話器を取ると、聞き覚えのない男の声がした。
「アラン・ウェイクだな?」
「そうだが、あんたは?」
「奥さんを誘拐した。返してほしくば『ディパーチャー』の原稿をもってこい。警察には言うな」
「なんだって?」
「アラン、助けて」電話の向こうからアリスの声が聞こえた。
「アリス!」
「いいか、原稿をもってくるんだ」
「原稿は17枚しかない。あと何枚あるかも知らないんだ」
「全部そろえておけ。足りないと困ったことになるぞ」
「待て。時間をくれ。一週間あれば」
「駄目だ。明日の正午、ラバーズ峠の展望台に来い。独りでだ」
 電話が切れた。おれは真っ青になった。
「どうしました? どなたからの電話でした?」
 保安官が心配してくれる。警察にいるのに、相談できないなんて。くそっ!

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 そこへ壮年の男がやってきた。
「私はハートマン。精神科医です。アラン・ウェイクですね? 私は奥様に依頼され、あなたを診察する予定でした」
「ふざけるな!」
 かっとなったおれは、ついハートマンを殴ってしまった。トラブルになりかけたとき、エージェントのバリーがやってきて、場を収めてくれた。

休息

 バリーはおれのエージェント。新人時代から支えてくれた親友でもある。一週間前から連絡がつかなくなったため、ブライトフォールズに駆けつけてくれたのだ。
 おれたちはエルダーウッド国立公園の山荘に泊まることにした。

 おれはバリーに事情を話したが、さすがに信じてもらえなかった。
「アリスが誘拐されたんだ!」
「いつ? どこで?」
「一週間前、存在しない島で」
「おいおい......」
「おかしな話をしてることはわかってる!
 だが、アリスの身になにかあったのは確かなんだ!
 現に誘拐犯から電話があった!」
「わかった。わかったよ。でも今は休め。なにか手伝えることはあるか?」
 たしかにおれは疲れていた。明日の正午がリミットなら、いま休んでおいた方がいい。
「あの島、Diver's Isleについて調べてほしい。過去、なにがあったのかを」
「OK、まかせろ。日が暮れる前に帰ってくる。今は休め」
 おれはベッドで眠りに就いた。バリーは調査に出かけた。

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 目覚めると、どっぷり日が暮れていた。バリーはまだ帰っていない。
 腹が減ったので管理人事務所に向かうが、だれもいない。スナック菓子を買おうとしたら、勝手にテレビが点いた。Night Springsがはじまった。

Night Springs #3

 アランは湖に飛び込んでアリスを捜したが、見つけられなかった。30分が経過し、生存は絶望的になると、暗闇の中でアランは泣きはじめた。アリスがいない茫漠たる時間に打ちのめされていた。
 そこへ、喪服の老婆があらわれた。
「アラン。あなたなら結末を変えることができるわ」
「あなたは?」
「バーバラ・ゼイン。ここの管理人よ」
「どうすればいい?」
「物語を書くの。ついていらっしゃい」
 アランはバーバラに誘われ、キャビンの書斎にもどった。タイプライターの前に座り、一心不乱にキーを打ちはじめた。
 アリスを助かる物語を書く。それがアランに残された希望だった。

(つづく)

 公園の管理人が帰ってきた。
「おい、このテレビ!」
「あぁ、すみません。故障中なんです」
「故障中?」
 見るとコンセントが抜けていた。そんな馬鹿な。
「すみません。小説家のアラン・ウェイクさんですよね?」
「はぁ」
「ファンなんです。サイン、いただけませんか?」
 おれはうんざりしながら、サインした。
「ありがとう。ブライトフォールズの住民は、みんな、あなたのファンなんですよ」
「それはどうも」
 おれはふらふら山荘に戻った。

バーバラの来訪

 部屋に戻ると、暗がりに喪服の老婆がいた。
「あんた......何者だ!」
「アラン。物語はまだ終わっていない。早く書斎に戻りなさい」
「アリスを誘拐した一味か?」
「結末を書くの。それが奥さんを助ける唯一の道」
「近づくな!」
「仕方ない。半分くらい闇に沈めましょう。首だけ残っていればいいわ」
 足元がじわりと沈んだ。闇に呑まれる!
「わぁぁぁぁ!」
 そのとき、バリーが帰ってきて、証明をつけてくれた。
「おいっ、アラン!」
 バーバラは黒い煙になって消えてしまった。おれは腰まで闇に沈んでいたが、バリーに引っ張りだしてもらった。懐中電灯で確認すると、沈むような穴はなかった。
「なんなんだよ、今のは!」
 バリーも超常現象を見て、腰を抜かしてしまった。
 おれは怯えていた。闇に囚われたら、死ぬより恐ろしい運命が待っている。絶対に負けるわけにはいかない。

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40年前のできごと

 バリーが買ってきてくれた食事を食べながら、おれは調査結果を聞いた。
 わずかな時間だが、バリーの調査は的確だった。

 ブライトフォールズは奇妙な土地だった。昔から失踪や変死が多いのに、まるで注目されないのだ。ほかの都市から引っ越してくる人も多いのに、ずっと人口が変わらない。怪奇現象に慣れてしまっているようだ。
 コールドロンレイクにあった島の持ち主は、トーマス・ゼイン。1970年に島もろとも沈んでしまった。ゼインは有名な小説家らしいが、著作がまったく見つからない。近影も経歴もわからない。「有名な小説家がいた」という記録だけ残っている。
 関係あるかどうかわからないが、島が沈む2週間前、ゼインの妻バーバラが湖で溺死している。しかしその後もバーバラを目撃した人がいて、ちょっとした騒ぎになったようだ。容量を得ない記事で、意味がわからない。記事を書いたシンシア・ウィーバーに聞けば、詳しいことがわかるかもしれない。シンシアは、町では「ランプおばさん」と呼ばれ、ブライトフォールズのいたるところに灯りを点してまわっているとか。発電所の跡地を買い取って住んでいるらしい。

「バーバラの名前は覚えている。あの老婆だ」
「あの婆さんが? しかしバーバラは25歳で死んでるぞ」
「もちろん、あれは人間のバーバラじゃない。小説風に表現するなら『闇の存在』だ」
「闇の存在が、アランになんの用があるんだ?」
「わからない。物語の結末を書けと言っていた」
「この小説がアランの著作なら、おれも言いたいよ。結末を読ませろと」

Episode 3: Ransom

ラバーズ峠の取引

 おれは新たに小説を書こうとしたが、一文字も書けなかった。すでにある原稿を書き写すこともできない。原稿がないまま、誘拐犯と交渉するしかない。
 おれはLover's Peakに向かった。道中、山小屋のテレビで『Night Springs』が放送されていた。いや、これは放送じゃない。だれかが、おれに、なにかを伝えようとしているんだ。

Night Springs #4

 アランは一心不乱に小説を書いたが、ふいにタイプライターを打つ指が止まった。
「アイデアが足りない」
 アランは書斎の本棚にあった本を読んだ。トーマス・ゼインの書いた詩集だ。湖に眠る力がアーティストの想像力に感応して奇跡を起こす。アランはこのアイデアを物語に取り込むことにした。
 物語はホラーの様相を呈してきた。アランは自分の正気を燃料にして、小説を書きつづけた。結末は近い。

(つづく)

 ラバーズ峠の展望台には、片腕の男が待っていた。
 男は銃を突きつけ、奇妙な要求をしてきた。
「このタイプライターで物語を書け」
「なんだって?」
「この腕を元にもどしたい。そういう物語を書くんだ。この原稿のつづきとして。そうだな。Episode3に付け足すんだ」
「ま、待ってくれ。意味がわからない」
「わかる必要はない。あんたは黙って、おれの言うとおりに書けばいい。
 おれの名はモット。彫刻家だ。そら、書くんだ!」
 銃で頭をこづかれる。タイプライターに向かうが、指がうごかない。書けないことを悟られてはならない。
「アリスは無事なのか? どうなんだ!」
「うるせえ! 早く書くんだ」
「ただ、腕がなおった書けばいいのか?」
「バカいうな。物語が必要だろう。おれの腕が元に戻る物語を考えろ」
「そんな無茶な」
 そのとき、にわかに空が曇って、雨がふりだした。周囲が急に暗くなる。男は狼狽し、照明をつけた。窓の外は夜のように暗い。暗すぎる。おかしい。

Re: ALAN WAKE
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 電線が切れて、展望台の照明が切れた。あわてて懐中電灯を探すが、おれが先に見つけた。
「それをよこせ! やつらが来る!」
「やつらって、あの闇をまとった連中か? あれはなんだ?」
「湖に眠る力に魂を奪われた連中だ。肉体が死んでも、魂はまだ囚われている。
 闇の尖兵になって、おまえを取り戻そうとしているんだ」
「おれを? なんのために?」
「結末を書かせるためだ。闇は、物語の道をつたって顕現する」
「アリスは?」
「ふ、ふふ。アリスなんて知らないよ。おれは監視役だ。
 欲が出て、物語に踏み込んでしまっただけだ」
「おまえがアリスを誘拐したんじゃないのか?」
「誘拐なんかできるわけないだろ! おまえは!」
 ドアが吹き飛んで、突風が吹き込んできた。いや、それは闇の奔流だった。モットと名乗っていた片腕の男は、闇に吸い込まれてしまった。
 闇はおれも襲う。懐中電灯くらいの光じゃどうにもならない。万事休すと思ったが、そのとき展望台の照明が復帰した。

「アラン! 助けに来たぞ」
 頭を強打して、意識を失う寸前、ハートマン医師の顔が見えた。
 畜生。こいつは、最初から見ていたんだ。

Episode 4: The Truth

療養所にて

 おれは、ハートマン医師のロッジ(療養所)にいた。
 ハートマンはアーティスト専門の精神科医。ロッジには多くの元アーティストが収容されていた。ブライトフォールズの繁華街で会ったアンダーソン兄弟もいた。彼らはミュージシャンだった。
 おれを脅していた片腕の男・モットも、ここの患者だった。彫刻家だったが心を病んで、自分で自分の腕を切り落としてしまったらしい。

 ハートマンが録音テープを再生した。アリスがアランの診察を依頼する内容だった。ブライトフォールズへの休暇旅行は、アランを療養所に連れてくる方便だった。
「あなたは奥さんの死にショックを受け、妄想を見ていたんです」
 ハートマンはもっともらしいことを言うが、信用できない。
 ふと気づく。誘拐犯が聞かせたアリスの声は、このテープを編集したものだ。やはりハートマンはなにか知っている。ここを脱出しなければ。いや、その前に手がかりを見つけるんだ。

「ここは照明が多いんですね。異常ではありませんか?」と尋ねると、
「闇は患者を刺激しますからね。ふつうの施設より多いかもしれませんが、理由があってのことです」
 もっともらしい説明だ。しかし本当は、ハートマンも闇を恐れているのだろう。

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マッド・ティーパーティー

 ハートマンが席を外すと、アンダーソン兄弟の口調が変わった。認知症のふりをしていたのか? 彼らはハートマンこそ異常者だと言う。
「これを持っていけ」
 原稿を渡された。やっぱり原稿はあったんだ。おれは、ハートマンの話がウソだと確信した。

「トム。おまえの書く物語は現実になる。《湖の力》に感応しているからだ。おかしなこと言っていると思うだろうが、おかしなことが起こっているんだから仕方ない。わかるな?」
「《湖の力》ってのはなんです?」
「わからねぇ。わからねぇけど、いることはわかる。
 感受性や想像力の高い人間、つまりアーティストに影響をおよぼしてくる。
 夢の中とか、夢の外とかな。
 ブライトフォールズにおかしな人間が多いのは、そのせいなんだろう。
 でも悪いことばかりじゃねぇ。
 湖の力は、インスピレーションを与えてくれる。
 おかげでおれたちのアルバムは大ヒットした。
 くそっ、酒はねぇのか」
「ハートマンはどういう人間なんです?」
「ハートマンはおまえに物語を書かせようとしている。
 物語を通じて、世界を支配するつもりだ。
 あんた、モットに襲われたんだって? 片腕の男だよ。
 モットはハートマンの指示で、あんたを監視していたんだ。
 気をつけろ。おまえが書く物語は現実になるんだ」
「でも、もう書いてしまった、らしいのです」
「最後まで?」
「いえ、結末はまだ」
「大事なのは結末だ。それですべてが決まる」
「はぁ」
「もう、バーバラのときみたいな失敗はできねぇ。
 シンシアに会ったか? 彼女が保険を預かっているはずだ」
「保険? なんです?」
「知らんよ。まだ物語に書かれてないからな」
「トム、機会があったら農場に寄ってくれ。思い出の品があるんだ」
 なぜか兄弟は、おれをトーマス・ゼインと呼ぶ。
 おれはゼインに似ているのか? 兄弟がボケているのか?

静かな夜

 夜、アランの部屋にあったテレビが点いた。例によって『Night Springs』である。見ようとすると、係員に注意された。
「スノーノイズを見てどうするんだ? 早く寝ろ」
 おれ以外の人間には見えないようだ。そもそもテレビにはなにも映っておらず、おのれ無意識が記憶を呼び覚ましているだけかもしれない。

Night Springs #5

 アランはようやくバーバラの正体に気づいた。彼女こそ闇の存在だった。アランの物語は、闇を復活させる通路になる。物語が完結したとき、すべてが終わってしまう。
「結末を書いてはならない」
 アランは、バーバラの目を盗んで脱出シーンを書き加えた。しかし独力では無理だ。そこで、かつてこの書斎にいた男──トーマス・ゼインにアクセスした。ゼインが光をもたらし、アランは水面へと脱出できた。
 なんとか岸まで泳いだが、そこで気力も体力も尽きてしまった。

(つづく)

ハートマンとの対決

 ふいにロッジが停電した。自家発電に切り替わるが、調子が悪く、明滅を繰り返す。
 あとで知ったことだが、発電機を破壊したのはバリーだった。そこにアンダーソン兄弟が便乗し、ロッジは大騒ぎになった。
 おれは部屋を抜け出し、ハートマンのオフィスを物色した。なにか手がかりを見つけるんだ。
 そこへハートマンがあらわれた。おれは銃をかまえた。

「待ちたまえ、アラン。誤解しないでくれ。私はきみの力になりたい」
「あんたはなにを知ってるんだ? 説明しろ!」
「なにから話せばいいのか」
「最初からだ」
「40年前、この町にトーマス・ゼインという小説家がいた。
 ゼインは、《湖の力》に感応できる人間だった。
 彼はあろうことか、溺死した妻を復活させてしまった。
 しかし湖から帰って来たバーバラは、もう人間じゃなかった。
 闇の存在の化身だった」
「あんたとゼインの関係は?」
「バーバラは私の姉だ。ゼインは義理の兄に当たる」
「それで?」
「私たちはバーバラの異変に気づき、封じることにした。
 あの夜、ゼインは自分の存在もろとも物語を消してしまった。
 だが、完全じゃなかった。
 闇の存在はいまもブライトフォールズに影響している。
 そしてゼインもまた、光となって戦っている」

「均衡が崩れたのは、アラン・ウェイク、きみが見つかったからだ。
 闇の存在は、きみに、新たな物語を書かせようとしている。
 巧妙に、きみをここへおびき出した。
 私自身、きみを見るまで気づかなかった。
 このままだと、きみは闇を呼び覚ましてしまうだろう。
 だからコントロールしなければならない。
 私なら、その方法を教えられる。
 きみと私が手を組めば、最高の芸術を生み出せる。君の才能と私の......」

 演説するハートマンを、おれは遮った。

「アリスはどこだ? おまえたちが誘拐したのか?」
「アリス? きみはまだ......。
 いや、なんでもない。
 アリスは死んだ。それは受け入れなければならない。
 死者に固執するな。ゼインの二の舞になるぞ」
「......おまえは信用できない」
「どこへ行く? 待て。コントロールできないなら、きみは危険だ」
「おれは支配されない。闇にも、おまえにも!」

 そのとき部屋に闇があふれ、ハートマンが飲み込まれた。
 混乱の中、おれとバリーはロッジを脱出した。

「どこへ行くんだ?」
「発電所跡地へ。シンシアに会おう」

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Episode 5: The Clicker

ランプおばさん

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 発電所跡地で、おれはシンシア・ウィーバーに会った。

「あぁ、やっと! 長いあいだ、あなたを待っていたのよ。
 闇を追い払うものは『照らされた部屋』にあるわ。
 ダムの中に部屋を作ったの!」

 シンシアはゼインにたのまれ、40年もゼインの「保険」を守ってきた。
 その箱に入っていたものは、クリッカーだった。
 アリスにプレゼントしたはずのクリッカーが、いま、ここにある。
 40年前からここにあったはずがない。
 クリッカーが2つあったのか、私の思い違いだったのか。
 そんな問いは、もう意味をなさない。
 現実が書き換えられたのだ。

Re: ALAN WAKE
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「いま、ここにクリッカーがある。
 クリッカーなら、闇を完全に打ち払える!
 ありがとう。シンシア。これでアリスを救える!」

Episode 6: Departure

バリーの気付き

 バリーが振り返ると、発電所跡地は廃墟になっていた。灯りが消えただけじゃない。そこかしこ崩れ、何十年も前から廃墟だったように見える。
 考えてみれば、ただの老婆が発電所跡地に住んで、内部を改造できるはずがない。ありえないことばかり起こっている。

「シンシア・ウィーバーなんて存在しない。
 いや、今、存在しなくなった。
 役目を果たしたから」

 バリーは言葉の意味に戦慄した。
 バリーはアランに伝えなかった。アランが振り返ったら、明るい発電所に戻るかもしれないから。

アンダーソン兄弟の農場

 コールドロンレイクに向かう途中、アンダーソン兄弟の農場に立ち寄った。
 ロックスターとして財産を築いた兄弟は、農場を拡大し、醸造所も造ったようだ。
 しかし今はだれもいない廃墟になっている。
 農場を探索していると、テレビが勝手について、番組がはじまった。

Night Springs #6

 アランは現実に帰還したが、一週間分の記憶を失っていた。
 ゼインはアランの行く先々に原稿を置いていった。
 シンシアもアランのため、武器や弾薬、治療薬などを配置した。
 すべてはアランを導くためだった。
 すべては「正しい結末」を書いてもらうためだった。
 40年前、ゼインは闇の存在を駆逐できなかった。
 しかし今、アランが決着を付けてくれる。

(おわり)

 古い写真を見つけた。
 在りし日のゼインとバーバラ、ハートマン、シンシアが写っている。アンダーソン兄弟もいた。彼らは知り合いだったようだ。
 しかしどの写真もゼインの顔が見えない。フレームからはみ出したり、逆光になっていたり。まれに顔が映っている写真も、ハサミで切り取られていた。
「おい、見ろよ」
 バーバラと思われる女性は、アリスそっくりだった。

「あの婆さん、アリスの血縁者か?
 アリスが歳をとったら、あの老婆みたいになるのかね」
「アリスは孤児だ。仮に母親だとしても、こんなに似るのはおかしい。この仕草なんて、アリスそのものだ。これじゃまるで......まるで、同一人物だ」
「おいおい」
「待てよ。バリー、アリスとはどこで知り合ったんだ?」
「アリスはおれの知り合いじゃないぞ」
「なに言ってるんだ。ジェイクのパーティで紹介してくれただろ」
「おれじゃない。おれは参加していない」

 ふたりの記憶に食い違いがあった。
 気がつくと、アリスはそこにいた。当たり前のように恋人となって、結婚した。
 アリスはインスピレーションを与えてくれた。アリスは女神だった。
 すべての前提が揺らぎはじめた。

Re: ALAN WAKE
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 バリーが疑問を口にした。
「アリスは実在したのか?」
「なんだって?」
「アリスはおまえが生み出した理想の女性なんじゃないか? つまり物語の登場人物なんだ」
「なにを馬鹿な」
「アリスだけじゃなく、ブライトフォールズも、おれも、おまえも、物語の登場人物なんだ」
「落ち着け、バリー。馬鹿なことは考えるな」
「ゼインの顔はなぜ見えない? この顔、だれの顔だろうな?」
「バリー!」
 思わずバリーを殴ってしまった。あやまると、バリーは気にするなと笑う。

「アラン、これから、どうなるんだ?」
「なにが?」
「記憶がもどったなら、書いた分の物語は思い出せるだろう? これから物語はどうなるんだ?」
「あれは......現実じゃない」
「いいから教えてくれ」
「主人公は、ロッジに戻って......最後の選択をする。
 闇の存在を封印すれば、妻とは会えなくなる。
 なぜなら妻は......アリスは、闇の存在の一部だから。
 アリスは、闇の存在を呼び覚ますアーティストを探すためにばら撒かれた分身の1つなんだ。
 アリスには自覚はない。おれにとっても、アリスはアリスだ。
 アリスが戻るなら、世界がどうなってもかまわない。
 おれは、主人公は、キャビンにもどって、そこから先は書いてない」
「おまえは、どう思ってるんだ?」
「同じだ」
「わかった。行こうぜ」
「どこへ?」
「決着をつけにさ。おれはおまえのエージェント。
 おまえのために道を作るのが、おれの仕事だ。
 それに、だ。おれはおまえの最初の読者だ。アリスは2番目。
 いつだっておれが先に読む。これまでも、これからも!」
「バリー」

Re: ALAN WAKE
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Diver's Isle

 おれたちはコールドロンレイクに戻ってきた。
 バリーが闇人を抑えているあいだに、おれは境界を越えなければならない。

 Diver's Isleは見えないが、ここにあるはず。
 おれは口に出して唱えた。
「おれは橋を渡る。Diver's Isleへの橋だ」
 すると橋があらわれた。
「キャビンはもう、目の前だ」
 キャビンがあらわれた。

 キャビンの中を歩く。おれは言う。
「恐れるものはない。おれは、アリスと再会した」
「アラン。助けに来てくれたの!」
 抱きつくアリスを制止して、おれは言った。
「あぁ、でもきみじゃない。きみは、アリスじゃない」
 悲しげな表情を浮かべたあと、アリスはにやりと笑った。
「私とアリスは、コインの裏と表よ」バーバラの声だった。
「おまえは、アリスでもバーバラでもない。闇だ」
「そうよ、トム。
 あなたが物語を書いてくれたから、私はいのちを得た。
 私は女神になった。これでもう、あなたに殺されなくて済む」
「なんだって?」

 背後でテレビが点いた。
 テレビにアランとアリスが映っているが、それは40年前の光景だった。

Night Springs #7

 自分が書いた小説そっくりの殺人事件が起こって、ゼインは心の均衡を失った。人々もゼインを責め立てた。殺人鬼より、ゼインを恐れたのである。
 それでもバーバラはゼインに尽くした。いつかきっとゼインが立ち直ると信じて。しかしバーバラを待ち受けていたのは、絶望だった。狂気に冒されたゼインは、バーバラを地下室に閉じ込め、自分の妻を殺す小説を書いた。
 小説を発表したあと、バーバラの溺死体が発見された。ゼインが殺したという証拠はなかったが、彼が犯人であることを疑う者はいなかった。

「うそだ。おれは、そんなことをしていない!」

 もう1つテレビが点いた。

Night Springs #8

 ハートマンとシンシアの働きかけによって、束の間、ゼインに理性がもどった。ゼインは妻のために泣き、禁断の知識を紐解いた。《湖の力》を使って、妻を呼び戻したのである。
 しかし狂った人間が起こせる奇跡は、やはり狂っていた。還ってきたのはバーバラではなく、闇の存在だった。

 ゼインは、自分の存在もろとも物語を消し去った。だがゼインは妻をあきらめきれなかった。
「やりなおしたい」
 ゼインは空っぽの箱を用意して、そこに希望を込めた。

「すべて、あなたの望み通りよ。さぁ、やりなおしましょう」

 近づくアリスを、おれは拒否できなかった。
 アリスが暗所恐怖症になったのは、おれの、ゼインのせいだった。
 おれを呼び寄せたのは闇の存在ではなく、ゼインだった。

「アラン。クリッカーを返して」
 だがおれは、クリッカーを押した。
 光が爆発し、アリスは消え去った。

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 だれもいなくなった書斎で、おれはタイプライターを叩いた。

「正しい結末を書くんだ。今度こそ」

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水面へ

 水底からアリスが浮かび上がってきた。
 湖畔まで泳ぐ。コールドロンレイクには、島もキャビンもなかった。

「アラン。あなたはなんてことを。
 ありがとう。本当にありがとう。
 私はもう闇を恐れない。
 あなたが、新しい命を与えてくれたから」

 アリスは腹部に手を当てる。

「いっしょに生きていきましょう」

おわり

 投げっぱなしの謎に、すべて道筋をつけてみた。
 ゲームの展開を遮らないように工夫したけど、ここまで変えるなら、オリジナルに固執する意味もないか。
 自分ではうまくつなげたつもりだけど、映像化、ゲーム化したら、やっぱり抜けが多いのかもしれない。

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