創作  2013年03月03日(日)に書いた 妄想リメイク

[妄想] 遊星からの物体X ファースト・コンタクト

[妄想] 遊星からの物体X ファースト・コンタクト

物体Xと魔女の戦い──

まえがき

 『遊星からの物体X ファースト・コンタクト』(2011)は、カーペンターの『遊星からの物体X』(1982)の前日譚だが、内容はほぼリメイクだった。映像は高精細で、迫力があったけど、「だれがXなのか?」というサスペンス色が薄れ、モンスターホラーに傾いてしまったのは残念だった。主人公を女性にしたことや、言葉が通じない極地という設定はおもしろい。てなわけで、勝手にリメイクしてみることにした。

The Thing ALTERNATIVE
遊星からの物体X ファースト・コンタクト

1982年、南極

 ノルウェー南極調査隊の雪上車が、氷原に埋もれた宇宙船を発見する。
 カーターは未知への期待感に目を輝かせた。

The Thing ALTERNATIVE
南極の奥地で宇宙船が発見された。

3週間後、コロンビア大学

 古生物学者ケイトの研究室に、サンダー博士とカーターがやってきた。
「サンダー博士。お久しぶりです」
「ケイト。南極できみにやってもらいたい仕事がある。すぐ出発したいから、用意してくれ」
「南極で? 今すぐですか?」
「学長の許可は取った。これがチケット。詳しいことはカーターに聞くといい」
 傲慢な物言いに、カーターが割って入る。
「ちょっと待ってくださいよ、博士。ちゃんと説明しましょう」
「わかりました」とケイト。
「え?」とまどうカーター。
「やるべき仕事があるんですね?」
「そうだ。きみにたのみたい」
「では準備します」
「そうしてくれ」
 立ち去るサンダー博士。カーターは頭をかいて、自己紹介する。
「ぼくはカーター。ノルウェー南極調査隊に参加している。地質学者だ」
「よろしく」
「南極のクレバスで発見したものを発掘したい。きみが適任者だと、博士が推薦した。彼はまぁ、ああいう人物だけど、彼のネームバリューが必要なんだ」
「いいの。慣れてるから」
「きみたちは、知り合いなのか?」
「彼の研究室で助手をしていたの。私が研究室をもてたのも、彼の口添えがあったからよ」
「それにしても、あの口調はよくないな。王様じゃないんだから」
「それより私の仕事はなんなの? なにを見つけたの?」
「宇宙船だ。それと、地球外生命体の遺体だ」

The Thing ALTERNATIVE
発掘のため、専門家のケイトが呼び出される。

DAY1 南極上空 ヘリコプター機内

 ヘリコプター機内での会話。操縦席にデレク、グリグズ。客席にケイト、サンダー博士、カーターがいる。サンダー博士は本を読んでいるが、ちらちらケイトを見ている。カーターがケイトに南極基地の状況をレクチャーする。

「いいかい、ケイト。南極はただ寒いだけの雪国じゃない。ふだんの常識が通じない異世界といっていい。訓練する時間がなかったから、ぼくがサポートする。なにかしたいときは、ぼくに言ってくれ」
「トイレも?」
「そのへんは説明したろ」
「ごめんなさい。わかっているわ」
 からかわれても嬉しそうなカーター。
「ケイト。きみにはすまないと思ってる。いま、ノルウェー基地には10名の隊員がいて、ぼくらの到着で15名になる。全員、男。うち英語をしゃべれるのは、ぼくとサンダー博士、それから基地にいるエドヴァルド、ジョシュア、ベーダー、コリンで6名だ。極地で、言葉もわからず、男ばっかりで居心地悪いだろうけど、きみの協力が必要なんだ」
「私は仕事をするだけ」
 デレクがノルウェー語でなにか言った。からかわれたカーターが言い返す。怪訝な顔をするケイトに通訳する。
「基地が見えてきたってさ」
 窓をのぞくと、ノルウェー基地の全貌が見えた。

The Thing ALTERNATIVE
ヘリコプターで基地に到着

DAY1 11:00 - ノルウェー基地→発掘ポイント

 雪上車に乗り換え、発掘ポイントへ。ずっと無表情だったケイトも、宇宙船を見ると衝撃を受けた。
「さすがに驚いたようだね」と博士。
「は、はい。こんな光景を目にするとは思っていませんでした」
「だろうな。これは世紀の大発見だ。世界中が注目することになるだろう」
 博士は得意げに話す。うしろでカーターがジョナスに愚痴る。
「なに言ってんだ。発見したのはおれたちだろ」
「まぁ、仕方ないね」

The Thing ALTERNATIVE
発見に興奮する隊員たち

DAY1 13:00 - 発掘ポイント

 調査隊は氷を爆破し、宇宙船の写真を撮る。そして氷漬けの宇宙人を掘り出した。
「身体に欠損はない。素晴らしい。おそらく船内から脱出しようとして、息絶えたのだろう」
「この個体だけ特別だったのでは?」
「なんだって?」
「この規模の宇宙船で、一体だけ外にいるのは不自然ではないかと」
「根拠はあるのかね?」
「い、いえ」
「ケイト。きみの仕事は発掘だ。解析は私がやる。わかっているか?」
「はい。もちろんです」
「では、きみの仕事をしたまえ」
 不穏な空気に、カーターが割り込む。
「待ってくださいよ。博士は彼女のインスピレーションに期待したから招聘したのでしょう?」
 博士はなにか言おうとして、言葉を飲み込んだ。
「まず調査だ。解析はそのあとだ」

The Thing ALTERNATIVE
氷漬けの宇宙人の遺体を掘り出した。

DAY1 17:00 - 発掘ポイント/もうすぐ日が暮れる

 氷漬けの遺体を積み込み、基地に戻ろうとするが、雪上車が一台故障した。
「どうです?」
 ケイトの質問に、カーターが答える。
「故障箇所はわかってるけど、いま修理するのは難しい。ここでビバークして、明日の朝に出発だな。エンジンは動くし、燃料もあるから、一泊くらい問題ない」
「それなら、私も残るわ」
「雪上車に泊まるのはきついぜ。きみは基地に帰った方がいい」
「もう少し宇宙船を調査したいの。ここまで往復するのは大変だから」
 背後から博士が割り込む。
「いいだろう。そうしたまえ。我々は帰投する」
 ケイト、カーター、ジョシュア、ヘンリクの4名が現地に残ることになった。

 去り際、博士がカーターに声をかけてきた。
「ケイトをよろしくな。気丈に振る舞っているが、あんがい脆いところがある。わかるな?」
「え? あぁ、はい、大丈夫ですよ。ジョシュアとヘンリクもいますから」
「そうだな」

DAY1 20:00 - 雪上車の中

 4人は食事を終えた。カーターがケイトに話しかける。
「きみと博士の関係は、なんだか、よくわからないな」
「博士は、私の最初の男よ」
「えぇ?」
「私、子どものころから頭がよかったから、なんでも知性で解決できると思っていたの。でも、ちがった。学会に論文を発表するにことさえ、政治力が求められる。馬鹿馬鹿しいけど、これが社会の仕組みってやつね。だから私は、もっとも効率的な方法を選んだの」
「それじゃ、そのために? きみは、博士と、その、寝たのか?」
「私って、それなりに美人でしょ? だから使えるモノを使ったの。私は博士の秘蔵っ子になり、博士を支え、私自身もアピールした。でもいつしか博士は私を疎ましく思うようになって、別れた。それだけ」
「ちょ、ちょっと待ってくれ」
「うそよ」
「え?」
「そんなストーリーが好きそうだったから、即興で考えたの」
「うそ? ほんとうに?」
「うそよ」
「ど、どっちだよ」
 ジョシュアが笑い、ヘンリクがノルウェー語で説明してくれと言う。
 雪上車の上は満天の星空だった。

DAY2 10:00 - 発掘ポイント

 翌朝、宇宙船の破損部分を調査していたケイトは、あやまって船内にすべり落ちる。球体に触れるとスパークして、ケイトは失神した。カーター、ジョシュアが追いかけてくる。

The Thing ALTERNATIVE
ケイトは宇宙船に残されたメッセージに触れた。

 目覚めると、ケイトはおかしなことを言い出した。
「異物よ」
「え? なに? 大丈夫か?」
「異物が、宇宙船に、入った。それは、同化する」
「それ?」
「だから閉じ込めた。自分たちごと。外に出さない、ために。故郷に持ち帰らない、ために。故郷を、守らなければ!」
「なに言ってる?」「頭を打ったか?」
 カーターとジョシュアは英語で、ヘンリクはノルウェー語で心配する。
「異物。危険な異物。閉じ込めなければ」
「ケイト!」
 我に返ったケイトは、頭痛に苛まれる。球体は砕けてしまい、触れてもなにも起こらない。
「これは宇宙人の記録媒体?」
「大丈夫か?」
「イメージが、頭に飛び込んできたの。断片的で、つかみどころがない。言葉にすると、イメージが消えちゃって」
 ケイトは立ち上がって、船内に目をやる。
「ここに、とても危険なものがいた。遺体だわ。あれは危険よ!」
「落ち着け。きみは夢を見たんだよ。夢でなかったとしても、証拠がない。ぼくたちが信じても、ほかの人は無理だ。わかるだろ?」
「そ、そうね。おかしなことを言ってることは自覚してる」
「船内を探索するか?」
「いえ、基地にもどりましょう。心配だわ」

DAY2 16:00 - ノルウェー基地

 基地に帰ると、隊員たちが宴会の準備をしていた。
「やぁ、ケイト。待ちわびちゃったよ」
 すでに飲みはじめたコリンが声をかけると、ケイトが詰め寄った。
「遺体はどこ?」
「え? 車庫にあるよ。」
「どっち?」
「通路の奥」
 ケイトは走っていった。何事かとほかの隊員が集まってきた。カーターが肩をすくめる。
「カーター! みんな! 来て!」
 車庫からケイトの声がした。見に行くと、氷に穴が開いていた。
「なんだこりゃ?」
「あれは、まだ死んでなかったのよ!」
「そんなバカな。ありえない」
「それより、逃げたものを探さないと」
「探すって、どこを?」
「熱でよみがえったなら、外には出ないはず」
「それじゃ基地の中に?」
「凶暴かもしれない。みんな武装して!」
 ケイトはてきぱき指示して、隊員たちは捜索をはじめた。
 出る幕のない博士はやや不機嫌だ。

The Thing ALTERNATIVE
宇宙人は死んでいなかった。

DAY2 17:00 - 厩舎

 隊員たちが捜索していると、厩舎から吠え声が聞こえてきた。カーターが見に行こうとすると、グリグズが止める。以下、ノルウェー語のやりとり。
「さっき、ヘンリクが見に行ったはずだ」
「それで?」
「帰ってこない」
「おかしいな」

 鳴き声がやんだ。カーターとグリグズが厩舎に入ると、暗がりからヘンリクの声がした。うっすら後頭部が見えるが、暗い。
「ヘンリク? そこにいるのか?」
「あぁ、ここは問題ない」
「なぜ灯りをつけない?」
「いま、ちょっと、取り込んで、るんだ」
 顔を見合わせる。様子がおかしい。
「ふざけるのはよせ。こっちに来い!」
「待ってくれ。あと少しなんだ」
 カーターが灯りを向けると、そこにいたのは怪物だった。ヘンリクの頭はちぎれ、触手の先にぶら下がっている。
「なんだぁ?」
 グリグズは状況を理解できず、立ち尽くしてしまった。触手が伸びてきて、グリグズの足に巻き付く。強烈な締め上げで、足の肉が裂けた。
「いでー!」
 カーターは発砲するが、効いているかどうかわからない。
「火だ! 火炎放射器をもってこい!」

 ほかの隊員たちが駆けつけた。ケイトをはじめ、全員が見た。
 ヘンリクの首がしゃべっている。
「待ってくれ。あと少しなんだ。あと少し」

「ヘンリク! おまえ、なのか?」
「ありえない。生きてるはずがない」
「助けてくれ!」
 ラーシュが火炎放射器をかまえると、博士が止めた。
「やめろ! 価値がわかっているのか!」
 しかしケイトが命令した。
「焼いて!」
 ラーシュが火炎を浴びせると、触手の怪物は絶叫を上げた。
 グリグズが医務室に運ばれていった。

The Thing ALTERNATIVE
逃げ出した宇宙人を焼き殺した。

DAY3 07:00 - 医務室

 翌朝、眠っていたケイトをベーダーが起こす。
「ケイト、これを見てくれ」
 顕微鏡をのぞく。エイリアンの細胞がヘンリクの細胞を侵食し、同化していた。
「きみの言うとおりだ。エイリアンは生物に侵食し、同化する。発見されたエイリアンも、同化された犠牲者かもしれない」
 ベーダーは目頭を押さえる。疲れているようだ。
「早いですね。完全同化するのに、どのくらいかかりますか?」
「わからない。1時間か、2時間か? 同化するまで動けないのか、同化しながら動けるのか? 相手の体格や体質によって変化するのか? 感染経路は?  空気感染か、それとも寄生虫のようなものが入るのか? 感染した初期状態は意識を保っているのか? ヘンリクはどの時点で死んだのか? 治療は可能なのか?
 わからない。なにもわからない」
 ベーダーはトレイにある金属を見せた。
「ヘンリクの躯幹からこれが見つかった」
「これは?」
「固定ボルトだ。ヘンリクは足を骨折して、金属を埋め込んでいた。それがなぜか、腹部に移動していた。一部は体外に飛び出していた」
「どういうことです?」
「たぶん、無機質は同化できないのだろう」

 コリンが入ってきた。
「先生。きのうの騒ぎで怪我してたみたいでさ。血止めをくれよ」
「診せてみろ」
 席を立つケイトに、ベーダーが言う。
「資料を揃えておく。これはノルウェーだけの問題じゃない。早く世界に伝えなければ」
「おねがいします」

The Thing ALTERNATIVE
それは生物に侵食し、同化する。

DAY3 07:10 - シャワー室

 ケイトがシャワー室に入ると、そこは血まみれになっていた。
 歯の詰め物が落ちている。
「無機物......」
 外からヘリコプターの音が聞こえた。ケイトは走りだす。

DAY3 07:11 - ヘリポート

「あのヘリは! 誰が乗ってるの?」
「グリグズを運ぶんだ。デレクとオラフが乗ってる」
「止めて! あのヘリを飛ばしちゃダメ!」
「なんだって?」
「無線を貸して!」
 操縦しているデレクは英語がわからないので、カーターが呼びかける。

 以下、ノルウェー語。
「デレク。いったん戻ってくれ。ケイトがなにか確認したいようだ」
「確認? なにを?」
「よくわからない」
「わかったよ。おい、オラフ。グリグズ。お嬢さんが呼んでるってさ」
「おい、グリグズ! おまえ!」
「どうした? やめろ!」

 上空でヘリが回転して、山あいに落ちてしまった。一部始終を見ていたカーターが青ざめる。
「グリグズが化け物って、どういう意味だ?」
「グリグズは、エイリアンに同化されていたのよ」
「待ってくれ。ヘリに乗る前、ぼくはグリグズと話したぞ。いつものあいつだった」
「ヘンリクを思い出して。身体だけじゃなく、記憶も同化されるのよ」
「そんなバカな」
「みんなを集めて!」

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それは人間に化け、ヘリコプターで外へ出ようとしていた。

DAY3 08:00 - 食堂

 ヘンリク、グリグズ、オラフ、デレクが死んで、残り9名。ケイト、カーター、サンダー博士、エドヴァルド、ヨナス、アダム、ラーシュ、コリン、ベーダー。
 ケイトは全員に状況を伝えた。英語がわからない隊員のため、カーターが通訳する。

  • エイリアンは細胞単位で生きていて、ほかの生物に同化できる。
  • 記憶も奪われるため、見分けがつかない。
  • この生き物が外の世界に出たら、人類は滅亡する。
  • シャワー室で歯の詰め物を見つけたけど、さっき見たら消えていた。
  • つまり、グリグズのほか、最低でもあと1人、同化された人間がいる。
  • シャワー室を使ったのはだれ?

 荒唐無稽な話を、博士が一笑に付す。わざとノルウェー語でしゃべって、みんなの笑いを取る。博士たちは食堂を出て行った。カーターが追いかける。
「待っててくれ。説得してくる」

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隊員たちに伝えるが、緊迫感がない。

DAY3 08:10 - 物置

 食堂に残されたケイトに、ジョシュアが話しかける。
「さっき、コリンがシャワー室から出るのを見たよ。様子がおかしかった」
「コリンはどこ?」
「物置に入っていった。雪上車の鍵をとるつもりかも」
「どこ?」
「こっち」
 物置の奥に入っていくケイト。その背後でジョシュアが変身する。触手に噛み付かれ、ケイトは腕を怪我した。逃げ場はないと思われたが、たまたまベーダーが扉を開けたため、ケイトは逃げ延びた。しかしベーダーはジョシュアに襲われ、同化がはじまった。ケイトが大声をあげる。ラーシュが火炎放射器をもってきて、焼いた。

 カーターがケイトを起こす。
「なにがあった?」
「ジョシュアが同化された。私をだまして、襲ってきた。襲われるまで、ジョシュアじゃないって、わからなかった」
「ジョシュアがいつ? どこで変わったんだ?」
「みんな信じて! エイリアンは人間に同化する! まだ安全とはかぎらない! ジョシュアとグリグズと一緒にいた人はだれ?」
「まだエイリアンがいるって言うのか?」
「可能性はある」
 カーターがノルウェー語に通訳すると、みな、騒然となった。
「コリンだ。グリグズの手当をして、ジョシュアと無線室にいた」
「コリンはどこだ?」
「コリンの姿が見えないって」
 探しに行こうとする隊員たちに、ケイトが警告する。
「気をつけて。1人では行動しないで!」

The Thing ALTERNATIVE
それはケイトを襲った。人間の会話を理解している。

DAY3 09:00 - コリンの部屋

 怖い顔した隊員たちが押し入ってきて、コリンは震え上がった。しかしコリンがエイリアンだという確証はないため、コリンは怒った。ノルウェー語の応酬のため、ケイトはわからない。

「グリグズの手当はしたけど、すぐ血が止まったから、それ以上は知らないよ。そのあと博士が傷を見たはずだろ! 夜、ジョシュアが気象情報を確認に来たけど、それだけだ。あのとき、ジョシュアはジョシュアじゃなかったのか? おれのあと、ジョシュアはエドヴァルドと話していたぞ」
「そうなのか? エドヴァルド?」
「待ってくれ。立ち話しただけでエイリアンになるのか?」
「そういや、今朝の食事は誰が作ったんだ?」
「ジョシュアだ」
「食べ物は安全だったのか?」
「とにかく怪しいやつは隔離すべきだ」
「それなら全員だ」

「待て待て!」とサンダー博士。
「私たちは極地にいるんだ。この人数で隔離なんて意味がない。エイリアンも怖いが、疑心暗鬼になって破滅したら馬鹿だ」
 ケイトに向かって、英語で、
「ケイト! みなを煽るのはよせ!」
「煽っていません」
「口答えするな! エイリアンが残っている可能性もあるが、もういない可能性もある。みんな、落ち着こう。しばらく単独行動は控えてくれ。なるべく、いっしょにいよう」
「それでは不足です。エイリアンの有無は、いますぐ確認しなければなりません」
「どうやって? エイリアンが侵入した穴でも探すか? 海に沈めて浮かんだらエイリアン、沈んだら人間か? 中世の魔女狩りじゃないんだぞ!」
「血液を比較します。 採血して、医務室のデータと照合すればわかるはず」
「だれが採血する? だれが比較する? ベーダーは死んだ。だれがやるにしても、そいつが人間でなかったら危険だ」
「私がやります」
「きみがエイリアンじゃない保証があるのか? 腕を噛まれたじゃないか」
「ただの怪我です。意識はハッキリしています」
「エイリアンの同化は、自覚症状がないかもしれない。きみは人間のつもりでも、じつはエイリアンに支配されていて、彼らに利する行動を取るかもしれない。その可能性を否定できるか?」
 しかしケイトは折れなかった。
「公平な検査ができる装置を作りましょう」
「私が作ろう」とエドヴァルド。
「ベーダーほどじゃないが、医療の知識もある」
「独りじゃダメよ」とケイト。
「なら、ぼくも手伝おう」とカーター。

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疑心暗鬼が広がる。

DAY3 13:00 - 食堂

 隊員たちは食堂に集まったが、少しずつ距離を置いている。コリンが席を立つと緊張が走る。
「無線機の調子をみたいんだが、だれか来てくれないか?」
 だれも返事をしない。
「独りで行動して、あらぬ誤解を招きたくない。それともなにか、まだおれを疑っているのか? おれが怖いのか!」
「いま、やらなくてもいいだろう」とラーシュ。
「犬が全滅して、やることがないのか?」とコリン。
 怒ったラーシュが立ち上がるが、アダムが止める。険悪な空気が漂う。博士もイライラしている。
「くそっ、こんなことで発掘作業が滞ってしまうなんて」
 窓の外を見ていたヨナスが声を上げた。
「デレクとオラフだ!」

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だれがXなのか?

DAY3 17:00 - 倉庫

 武装した隊員たちが、デレクとオラフを取り囲む。ふたりは墜落したヘリから生き延びたというが、だれも信じない。エドヴァルドが撃とうとするが、ケイトが止めた。
「待って。人間の可能性もある。倉庫に閉じ込めておきましょう」
 オラフは怯え、デレクは怒った。

 振り返ると、研究棟から煙が上がっていた。
 みなで消火するが、検査装置は使えなくなった。デレクとオラフに気を取られ、だれが火をつけたかわからない。デレクとオラフの陽動だという人もいるが、説得力はない。それより確かなことは、この中にエイリアンが混じっていることだ。

DAY3 19:00 - 食堂

 食堂でもめる隊員たちに、ケイトが呼びかける。
「エイリアンを識別するアイデアがあります」
「どうするんだ?」
「エイリアンは無機物と同化できません。だから、歯の詰め物が残っていれば人間です」
「そんな、あやふやな!」とエドヴァルド。
 ケイトは火炎放射器を持っているラーシュに口を開けろとジェスチャーする。ラーシュの口の中を確認すると、ケイトは自分の口の中をラーシュに見せた。言葉は通じないが、ジェスチャーで確認する。

 選り分けの結果、ケイト、ラーシュ、ヨナス、アダムは人間。
 カーター、コリンは歯に詰め物がなく、サンダーとエドヴァルドは拒否した。

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歯の詰め物があれば人間だ。

「それで、私たちをどうするつもりかね?」と博士。
「べつの識別法が見つかるまで、倉庫に入ってもらいます」とケイト。
「どうやって実行する? 英語をしゃべれる人間はいないぞ」
 英語で話しかけると、ラーシュは首をふった。わからないようだ。博士がノルウェー語で話しかけたので、ケイトが遮った。
「やめてください。博士!」
「博士。おとなしく倉庫にいましょう」とカーター。
「ダメだ。それが混じっていたら、全員が感染して、全員始末される。倉庫に行くのは、ガス室送りと同じだ!」
「しかし」
 博士はノルウェー語に切り替え、カーターを説得する。理解できないケイトは苛立つ。

DAY3 19:00 - デレクとオラフの乱入

 そのとき、倉庫から物音がした。緊張が走る。ラーシュとアダムが様子を見に行くが、帰ってこない。やむなく全員で駆けつけると、デレクとオラフだった。ラーシュの火炎放射器をもっている。
 以下、ノルウェー語のやりとり。
「おまえら、逃げてきたのか?」とエドヴァルド。
「当たり前だ。おれたちは人間だ。死にたくない」とデレク。
「雪上車の鍵をくれ。ここを出て行けば問題無いだろう」とオラフ。
「ラーシュを殺したのか?」
「気絶してるだけだ。とにかく鍵をくれ」
「駄目だ。危険を外に漏らすことになる」
 火炎放射器をもったアダムがやってきた。エドヴァルドがけしかける。
「アダム、焼け!」
「やめろ。人間だ!」
「焼け!」
「よせっ!」
 アダムが引き金をひく前に、デレクが発砲。アダムが倒れた。
 ヨナスが反撃して、デレクも射殺される。オラフは両手をあげた。

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ついに戦闘に。

 アダムのタンクが爆発。オラフは破片が刺さって死亡。ショックでエドヴァルドが倒れる。ヨナスが助けようとするが、エドヴァルドが変身し、からみついてきた。顔がひっついた。ヨナスが助けを求める。
「コリン! 取ってくれ! こいつを取ってくれ!」
「い、痛いか? 苦しいか?」
「こ、こ、殺してくれ! 早く!」
 ぐりんとエドヴァルドの首が前に出てきて、しゃべった。
「やめろ、コリン。おれたちは大丈夫だ。だだ大丈夫だだ」
 身をよじらせ、ヨナスの首が前に来て、しゃべった。
「痛くない。恐れることはない」
 恐怖に凍りつくコリンに触手が伸びて、腹に刺さった。
「ひいいいいい」
 駆けつけたケイトが、エドヴァルドとヨナスを焼き払う。
「コリン! 怪我はない?」
「やられた。血が! おれの中に! 入った?」
「しっかりして!」
「ひぃ、やぁああああああああ」
 コリンが逃げ出した。

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同化される。

DAY3 20:00 - 無線室

 コリンは無線室に閉じこもった。ケイトがドアを叩いても出てこない。
「コリン! 出てきて! 傷を診せて!」
「いやだ。おれを焼くつもりなんだろう!」
「侵食されたとはかぎらない」
「あんたも噛まれてる。おしまいだ。おれたちはおしまいだ。氷から出すべきじゃなかったんだ! おれは、おれは、おれのまま死にたい!」
 銃声が響く。ドアを蹴破ると、コリンは死んでいた。

DAY3 21:00 - 食堂

 食堂にもどると、カーターがアダムとデレクの口を開けて検分していた。
「アダム、デレク。オラフも人間だった。人間なのに殺し合った!」
「あとにして!」
「ケイト。もう、ぼくたちしかいない。これ以上殺すな」
「博士はどこ?」
 そのとき、窓の外に雪上車のヘッドライトが見えた。博士が雪上車でどこかに出て行った。ケイトとカーターは追跡する。

The Thing ALTERNATIVE
基地は全焼した。

DAY3 23:00 - 夜の氷原

「どこへ行くつもりかしら?」
「この方角は、アメリカ基地だな」
「逃がさないで!」
「追いついてどうする? 殺すのか? 逃げるのが人間かエイリアンか、どうやって見抜く?」
「わからない。だけど、わからないものを外に出すわけにはいかない」

 博士の雪上車が停まっていた。ケイトたちが追いつくと、博士が出てきた。火炎放射器をかまえたケイトを、博士が制止する。
「そこで止まれ。私の話を聞け! 私を警戒すると言うことは、きみたちは人間だな」
「どういう意味です?」
「この状況で逃げ出すのは、人間かエイリアンか区別できない。しかし逃げるものを追いかけるのは、人間だ。エイリアンなら放っておくだろうから」
 顔を見合わせるケイトとカーター。
「ケイト、私を信じなくてもいい。論理が正しいと思うなら、こっちにきてくれ。口の中を見せる」
 火炎放射器を下げ、ケイトが歩み寄る。
「大丈夫?」
 ヘッドライトで博士の口の中を確認するケイト。
「博士」
「ケイト」
 見つめ合うふたりに、カーターが声をかける。

「もう基地にもどりましょう」
「そうだな」
 ヘッドライトに照らされたカーターを見て、ケイトの顔色が変わる。
「カーター。ピアスはどうしたの?」
「え?」カーターは右耳に手を当てる。
「逆よ」
 カーターが青ざめる。ケイトが火炎放射器をかまえた。
「待ってくれ。どこかで落としたんだ。こんなことで決めつけるなんて、まちがっている!」
 ケイトはカーターを焼き払った。カーターは火だるまになって、のた打ち回る。しかし変身しなかった。ケイトは念入りに燃やす。

The Thing ALTERNATIVE
Xを外へ出すわけにはいかない。

「もう十分だ」
 博士に止められると同時に、ガスが切れた。
「人間だったの? 私、人を殺したの?」
「いいんだ。もう、いいんだ」
 震えるケイトを博士が抱きしめた。
「こんなことになるなんて、思わなかった。きみに、大発見の栄誉を与えたかった。つらく当たってきたが、きみを愛している」
「博士」

 銃声が響いた。ケイトが博士を撃った。
「ケイト? ど、どうして?」
 血を吹きながら、博士が問いかける。
「こうするしか、ないんです」
「そんな」
 どうと博士が倒れた。

The Thing ALTERNATIVE
可能性をつぶす。

 ケイトはふらふら雪上車に行き、手榴弾で2台とも爆破した。すべての作業は右手だけで行われた。ケイトはつぶやく。
「私には南極の知識がほとんどない。これで私は帰れない」

 吹雪が強くなる中、ケイトは吠えた。その左手が変異していた。

The Thing ALTERNATIVE
ケイトもXだった。

DAY4 08:00 - エンディング

 翌朝、マクマード基地で灯油を補充しマティアスのヘリが帰ってきた。着陸して、大声で呼びかけると、いきなり発泡された。物陰からラーシュが出てきた。マティアスに銃を突きつけ、歯を見せろと言う。
 マティアスが人間とわかったとき、基地から犬が飛び出した。一気に走り去る。ラーシュはマティアスのヘリで犬を追跡する。やがてアメリカの基地が見えてきた。

The Thing ALTERNATIVE
犬がアメリカ基地へ!

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おわり

あとがき

 感染後も自我が残る場合があると設定してみた。エドヴァルドやカーターは、自覚なくXに協力していたことになる。
 ケイトは例外的に長く自我が残ったが、いずれ侵食されると気づいた。そして、人間がいるかぎりXを撲滅できないと悟って、自決した。この結末は、ポスターのイメージをなぞっている。「あれはケイトだったのか」と思っていただければさいわいだ。
 ケイトと博士の関係はあいまいにした。博士にとっては、ケイトもまた「未知の存在」であり、強く惹かれていた。ケイト自身が博士をどう思っていたかはわからない。大人の関係は複雑だ。

登場人物

  • オリジナルを再構築したものです。
  • (*)は英語をしゃべれる人。南極観測隊で英語がわからない人はそう多くないと思うけど。
名前 役割 末期
ケイト* アメリカ人の古生物学者。ノルウェー語がわからない。 ジョシュアの触手から感染。発症前に自殺。
サンダー博士 * デンマーク人。エイリアン調査隊隊長。傲慢な碩学。 ケイトに殺害される。
カーター * アメリカ人の地質学者。ケイトをサポートする。 エドヴァルドから感染。ケイトに殺害される。
デレク ノルウェー人。ヘリコプター輸送チームの操縦士。 人間のまま、ヨナスに撃たれる。
グリグズ ノルウェー人。ヘリコプター輸送チームの副操縦士。 ヘンリクから感染。ヘリ墜落で死亡。
エドヴァルド * ノルウェー人。南極基地の隊長。サンダー博士の友人。 ジョシュアから感染。ヨナスと融合し、ケイトに燃やされる。
ジョシュア * フランス人の地質学者。気さくな優男。 グリグズから感染。ラーシュに燃やされる。
ベーダー * ノルウェー人の医師。 ジョシュアに襲われて、同化前に燃やされる。
ヘンリク ノルウェー人の機械技師。 エイリアンから感染。ラーシュに燃やされる。
アダム ノルウェー人の地質学者。 デレクに火炎放射器を向け、先に撃たれる。
ヨナス ノルウェー人の極氷研究者。 エドヴァルドに融合され、ケイトに燃やされる。
オラフ ノルウェー人の雪上車運転手。 ボンベの爆発で死亡。
コリン * 英国人の無線通信技師。変わり者。 絶望して自殺。
ラーシュ ノルウェー人。犬飼育係。 気絶していたが、のちに目覚める。アメリカ基地へ。
マティアス ヘリ操縦士。補給のためマクマード基地にいて不在。 ラーシュとともにアメリカ基地へ。

感染順序

 下記のように感染した。ヘンリクが変身したとき、エイリアンとヘンリクの遺体に気を取られ、グリグズに注意を払わなかったことが致命的だった。

  • エイリアン(宇宙で)
    • ヘンリク(厩舎で)
      • グリグズ(厩舎で)
        • ジョシュア(医務室で)
          • ケイト(物置で)
          • エドヴァルド(夜の廊下で)
            • カーター(研究室で)
            • ヨナス(食堂で)

 こんな物語を見てみたかったと思うんだけど、どうだろう?

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[妄想] 遊星からの物体X ファースト・コンタクト