月の裏側
2004年 哲学 mixi地球から、月の裏側を見ることはできない。
月が地球を1周(公転)するあいだに、月自身も1回転(自転)するためだ。
地球から見上げる月は、いつも同じ顔になる。
◎
人間には、複数の顔がある。
たとえば、多くの人は「プライベート」と「会社」で顔を使い分けている。
多くの人は、両者が混ざり合うことを望まない。
しかし現実は、そう易々とは切り分けできない。
プライベートと決めていたmixiに会社関係の人が流入してくる。
これは大きな脅威となる(らしい)。
気軽に書いていた日記を制限したり、削除したり、書き直したり……。
知られたくないマイミクやコミュニティを整理したり……。
ひどい場合は、mixi上での活動を断念することになる。
複数の顔があるのは、悪いことじゃない。
「どこでも同じ顔をしろ」とか、
「おれが素顔なんだから、キミも素顔を見せろ」という方がムチャなのだ。
◎
ところで私には、使い分ける「顔」がない。
職場でも、自宅でも、実家でも、同窓会でも、ネット上でも、ほとんど同じ顔だ。
これは、顔を使い分ける処理能力が不足しているためだ。
度胸や誠実さとは関係ない。
社長であり、顔を使い分けられない私は、脅威になる。
私は、警戒される側にいる。
私はそれを自覚しているが、コントロールはできない。
◎
どうすれば、きみと親しくなれるだろう?
私が mixi に入れば、きみは去っていく。
追いかければ、ふたたび同じことになるだろう。
互いが仮面であるときは、いろいろ話せたのにね。
──地球から見上げる月は、いつも同じ顔。
その裏側を見ることはできない。