月の裏側

2004年 哲学 mixi
月の裏側

地球から、月の裏側を見ることはできない。
月が地球を1周(公転)するあいだに、月自身も1回転(自転)するためだ。
地球から見上げる月は、いつも同じ顔になる。

人間には、複数の顔がある。
たとえば、多くの人は「プライベート」と「会社」で顔を使い分けている。
多くの人は、両者が混ざり合うことを望まない。
しかし現実は、そう易々とは切り分けできない。

プライベートと決めていたmixiに会社関係の人が流入してくる。
これは大きな脅威となる(らしい)。
気軽に書いていた日記を制限したり、削除したり、書き直したり……。
知られたくないマイミクやコミュニティを整理したり……。
ひどい場合は、mixi上での活動を断念することになる。

複数の顔があるのは、悪いことじゃない。
「どこでも同じ顔をしろ」とか、
「おれが素顔なんだから、キミも素顔を見せろ」という方がムチャなのだ。

ところで私には、使い分ける「顔」がない。
職場でも、自宅でも、実家でも、同窓会でも、ネット上でも、ほとんど同じ顔だ。
これは、顔を使い分ける処理能力が不足しているためだ。
度胸や誠実さとは関係ない。

社長であり、顔を使い分けられない私は、脅威になる。
私は、警戒される側にいる。
私はそれを自覚しているが、コントロールはできない。

どうすれば、きみと親しくなれるだろう?
私が mixi に入れば、きみは去っていく。
追いかければ、ふたたび同じことになるだろう。
互いが仮面であるときは、いろいろ話せたのにね。

──地球から見上げる月は、いつも同じ顔。
  その裏側を見ることはできない。