嫁のシャンプーを選ぶ

2012年 生活 男と女
嫁のシャンプーを選ぶ

「じゃあ、ダンナさんが選んでよ」

 面倒なことになってしまった。島忠で嫁がシャンプーを買うときに、つい、
「いつも同じものじゃなくて、あれこれ試してみたら?」
 と口を挟んでしまった。
 なんでも試したがる夫と、面倒はきらいな嫁──。結果、私が選ぶことになった。

 シャンプーは……思いのほか種類が多かった。CMで有名なレノアハピネスにしようと思ったが、あれは柔軟剤だった。順々に見ていくと、いつの間にかコンディショナーとかリンスになっていた。ふだん石鹸しか使わない私には、難易度が高すぎた。

 商品ごとに小さなボトルがぶら下がっている。シャンプーの香りを確認できるようだ。1つずつフタをあけ、嗅いでみる。

 ふむ。ふむふむ。ふむむ。ふむ? ふむ~。

 脳裡に、これまで会った女性のイメージが浮かぶ。
(これは……あの子の香り。このシャンプーを使っていたのか)
(あの子の香りは……ん、シャンプーじゃなくて香水か)

 神経を集中して嗅ぎ比べていると……はっと戦慄した。
 背後で待っている嫁をふりかえる。

「これって、なんかの罠じゃないよね?」