エンジェル ウォーズ Sucker Punch

2011年 外国映画 4ツ星 囚人 狂気 病院 記憶操作

むしろストーリーに注目

日本刀と重火器で武装したセーラー服の美少女が、サムライやドラゴン、ロボットと戦う映画と聞いていたが、まさにそんな映画だった。オタク趣味全開。中二病フルスロットル。監督が好きなものを次から次へと投げ込んで、一気に煮詰めたような映画だった。
私はお気に入りだが、世間一般の評価はおしなべて低い。まぁ、好みの問題はあるだろう。セーラー服といっても学生の象徴じゃないし、美少女といっても紅毛碧眼のアメリカンだ。日本人が期待する清純さはどこにもない。だが、それは宣伝によるもので、映画に罪ないだろう。

荒唐無稽なストーリーも、荒唐無稽なアクションに合っている。肉体は精神病院に囚われ、精神は売春宿をさまよい、魂は妄想世界で暴れまわるという多重構造もおもしろい。妄想世界にダイブするとき、ベイビードールはどのように見られているのか? すごく気になるところが明かされない演出もたまらない。
妄想世界では無敵でも、現実世界では無力。シビアな結末が、まさに現実に引き戻してくれる。この結末がなかったら、ただの妄想映画でつまらなかったと思う。ベイビードールは負けた。なすすべもなく破壊されてしまった。希望が残されたように見えるが、それさえも妄想だった可能性がある。どこからどこまでが現実だったのか? 現実と妄想を区別することに、どんな意味があるのか? あれこれ考えるのも楽しい。

私は試写会で見たのだが、上映後のトークショーでは「ジャパニメーションの影響」が主題となっていた。そのほかの宣伝やレビューを見ても、ジャパニメーションの類似点が指摘される。だが、そんなところに注目しても意味がないだろう。
たぶん、『エンジェルウォーズ』は宣伝の仕方が悪かったと思う。邦題もかっこ悪い。へんな先入観を与えず、クチコミで評価が高まっていれば、もっと愛されたのではないだろうか。

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