殺人の追憶 Memories of Murder / 살인의 추억

2003年 外国映画 3ツ星 刑事・警察 実話に基づく 殺人鬼 社会派

刑事が無能だった。

 1980年代後半、韓国で実際に起こった連続殺人事件をモチーフにした映画。史実と異なる点もある。映画公開の15年後(2019年)、事件の犯人が逮捕された。

 犯人は最後まで顔を見せず、刑事たちの奮闘のみを描いたのはおもしろい。リアルな映像表現にも引き込まれる。
 しかし肝心の刑事たちにさっぱり共感できない。彼らは暴力をふるい、証拠を捏造し、拷問を躊躇しない。オカルトや噂話に振り回される。犯人は「ふつうの顔」なのに、刑事たちは精神異常者、変態、イケメンと、彼らがムカつく人間ばかり痛めつけた。それでいて犯人逮捕にかける情熱はない。
 つまるところ無能な刑事たちが職権濫用して、失敗に失敗を重ねただけ。むなしい。

 現代(2003年)、パク刑事はセールスマンに転職していた。家庭でも職場でも刑事の横暴さは残っている。ふとしたことから犯人が生きていることを知ったが、刑事に復帰することはないだろう。
 日本の刑事なら、出世を諦め、定年になっても犯人を追っていたと思う。仕事に生涯を捧げるなら、無茶や失敗も許容される。
 韓国映画は日本の情景と重なるところが多いから、文化的な差が浮かび上がる。

 チョ刑事は片脚を切断されたが、あとの顛末は描かれない。これは天罰なのか? 眉をひそめるシーンは、眉をひそめてもらうよう演出しただろうが、意図がわからない。

 でもまぁ、映像の雰囲気はすごかった。ぐいぐい引き込まれた。時間を忘れたのだから、映画として及第点に達している。物語としてはおもしろくなかった。

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