座頭市 Zatoichi

2003年 日本映画 4ツ星 チャンバラ 時代劇 障害

常人には到達できない「やりたい放題」の境地

旧作のイメージに囚われない新解釈……といえば聞こえがいいが、ここまでお約束をぶち壊せることも、それでいて娯楽として成立していることもすごい。北野監督の力量に驚かされる。
座頭市の動きをよく見ているとわかる。なんの信念もない。生きたいように生き、斬りたいときに斬るだけ。理由なんてどうでもいい。ふつう、ここまで身勝手な主人公は描けないし、演じられないよ。

おもしろい演出は多いが、とりわけ日本刀の扱いがいいね。
抜刀するときに味方を斬っちゃったり、天井から落ちて背中に刺さったりと、意図せぬ被害が多い。また、立ち回りのシーンでもスローモーションといった演出はなく、いきなり斬りつける速さ、唐突さに驚かされる。
本作における日本刀はまさしく「凶器」なのだ。そんな凶器を盲目の男が振り回すのだから、カッコイイというより、危なっかしく見える。この感覚が、物語の緊張感を高めるとともに、座頭市という男の異常さを際だたせている。

とにもかくにも圧倒される映画だった。

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